レッドブル・ホンダF1 分析:メルセデスの“冷え性”と“戦略ミス”/ F1モナコGP 決勝
レッドブル・ホンダF1は、F1モナコGPの決勝でマックス・フェルスタッペンが、ポールポジションから圧勝、セルジオ・ペレスが4位入賞を果たしたのに対し、メルセデスは、ルイス・ハミルトンが7位、バルテリ・ボッタスがリタイアし、両方のチャンピンシップで逆転を果たした。

“決勝の結果は予選で9割が決まる”というほど、抜きにくいサーキットで有名なモンテカルロ市街地コース。

ちょうどホンダF1のモナコでの最後の勝利となった1992年はアイルトン・セナ(マクラーレン・ホンダ)が圧倒的に速いナイジェル・マンセル(ウィリアムズ・ルノー)を抑え込んで優勝。当時のフジテレビの実況を担当していた三宅アナの『ここはモナコモンテカルロ、絶対に抜けない』という名セリフを生んだ。

したがって、ポールポジションのシャルル・ルクレール(フェラーリ)がドライブシャフトのトラブルによって出場を断念し、先頭スタートとなったマックス・フェルスタッペンがオープニングラップで2番手のバルテリ・ボッタスを抑えた時点で仕事は5割方終わった。

今週末、メルセデスはセットアップを間違った方向に進めた。ルイス・ハミルトンは「やり直し」「空振り」「チームと厳しく話し合う必要がある」と語気を強めるほど、土曜日のマシンはしっくりこなかった。一方、レッドブル・ホンダは、木曜日にマックス・フェルスタッペンが「遅すぎる」と嘆いたマシンを土曜日に見事に好転させていた。

今回のF1モナコGPで改めて浮き彫りとなったのが、タイヤに熱を入れにくいメルセデスの“冷え性”体質だ。タイヤに優しい反面、熱入れに難を抱えており、F1ポルトガルGPでもその症状は露呈。ハードタイヤに交換したバルテリ・ボッタスにピット出口で前に出られたマックス・フェルスタッペンが、オーバーテイクに成功している。

今回のF1モナコGPでは、レッドブル・ホンダとメルセデスが第2スティントで使用したハードタイヤはC3と他のグランプリではソフトとしても使われるコンパウンドだが、メルセデスは熱入れに苦戦した。しかし、不可解にも7位で身動きが取れなかったルイス・ハミルトンは、上位勢では最も速い30周目にピットインして“アンダーカット”を仕掛ける。

だが、正解の戦略は“オーバーカット”だった。翌周にピットインしたピエール・ガスリー(アルファタウリ)がルイス・ハミルトンの前の6位をキープし、その1周後にピットインしたセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)は2台の前に出ることに成功している(7位→5位)。

ルイス・ハミルトンは『何でまだ彼の後ろにいるんだ。どういうことだ』『意味が分からない。長く走るためにタイヤをセーブしていた。何でみんなより先にストップさせたんだ』を無線で声を荒げた。

さらに順位的には8位だったセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)が36周まで引っ張って、その3台をオーバーカットして4位まで浮上した。

セルジオ・ペレスは「僕らはタイヤをセーブして、必要なときに使ったことがカギだった」と語っている。

ルイス・ハミルトンは熱入れが下手なわけではない。だが、上記に登場したドライバーが2~3周でハードに熱を入れられて1分16秒台に乗せていたのに対し、ハミルトンはそこに到達するまで5周ほどかかった。

レッドブルの“ハイレーキ”がダウンフォース面で損失が少なく、メルセデスの“ローレーキ”により大きな影響が出たと考えられる部分はそこにあるかもしれない。今年、レッドブル・ホンダがメルセデスよりも良いスタートを決められるのも、この影響があるはずだ。

だが、今回に関しては同じ“ローレーキ”のアストンマーティンのセバスチャン・ベッテルがオーバーカットに成功していることを考えれば、そもそも戦略的にメルセデスのミスなのは明らかだった。

今回のモナコはマシンパフォーマンスがそれほど関係ない特殊なサーキットではあるが、この先のレースで気温や路面などの条件ではメルセデスの“冷え性”が勝敗を分ける要因になってくることが増えそうだ。

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カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1 / F1モナコGP