レッドブルF1特集:ミナルディがトロロッソに生まれ変わった日
ミナルディの晩年のオーナーであるポール・ストッダートが、現在アルファタウリ・ホンダとして存続しているチームのレッドブルへの売却について語った。

レッドブルは、2005年にジャガーを買収してレッドブル・レーシングとしてF1に参戦することを決定したが、チームが十分ではなかっため、レッドブルのオーナーであるディートリッヒ・マテシッツは、ミナルディを買収して姉妹チームにすることを決断した。

何年にもわたってF1には多くの小規模チームが存在してきたが、ミナルディのように一部のファンが今でも愛しているチームは多くない。2005年まで20年の歴史のなかでミナルディは345戦に出場したが、合計ポイントは35ポイントであり、勝利や表彰台を獲得したことはなかった。

それでも、ミナルディで走ったドライバーには多くの有名人がいる。ジャンカルロ・フィジケラ、マーク・ウェバー、フェルナンド・アロンソ、ヤルノ・トゥルーリを始め、ヨス・フェルスタッペン、ロバート・ドーンボスといったレッドブルF1にゆかりのあるドライバーも走っていた。

2001年に深刻な経営難に陥っていたチームを買収したポール・ストッダートが、トロロッソにチームが変わる前の最小限の予算でファンの心を掴んできたチームの晩年について語った。

なぜミナルディという名前が15年経った今でも知られているのかと質問されたポール・ストッダートは「我々は弱者だったからだろう。誰もが弱者を愛している」と語った。

「私の時代にミナルディの予算がどれくらいだったかはあまり知られていなかった。我々の予算は、ビッグチームに比べて非常に小さかった」

「たとえば、2002年には年間2800万ドル(約29億円)の予算で仕事していたが、トヨタには自由に使える11億ドル(約1140億円)があった。それでも、その年は彼らを打ち負かした」

「2002年のオーストラリアでのクレイジーなレースでウェバーが2ポイントを獲得したおかげだった。それは私の人生で最高の日だった」

ミナルディにはシャンパンがなく、他チームがミナルディにシャンパンを譲った

「我々は自分たちでシャンパンを持っていなかった。完全な箱を用意する必要はなかった」とその後の数年間でチームを存続させるのに最も苦労したポール・ストッダートは笑う。

ポール・ストッダートにとって幸運だったのは、チームに何度か救いの手を差し伸べてくれたバーニー・エクレストンがいたことだ。

だが、請求書は積み重なっていき、ポール・ストッダートはバーニー・エクレストンから必要な金額を尋ねる電話を受けた。ストダートが金額を伝えたとき、バーニー・エクレストンは次のように語ったという。

「私はあなたのチームの半分を買うつもりだ。私はあなたにそれのためにお金を与え、それから自分の人生を続けていく」とバーニー・エクレストンは語ったとし、ポール・ストッダートはエクレストンは真の紳士であり、これまでF1に参加したなかで最も素晴らしい人物だと翌。

しばらくの間、ミナルディは生き延びることができたが、大企業(自動車会社)がますますF1に取り組むようになると、ポール・ストッダートはチームを売却しなければならないことを悟った。

ポール・ストッダートによると、51の“時間の無駄”と言えるオファーがあったという。そこに現れたのが2つ目のチームを構想していたディートリッヒ・マテシッツだった。

「契約は2005年のトルコで成立した」とポール・ストッダートは続ける。

「バーニーが私を彼のモーターホームに呼び、ディートリッヒもそこにいた。バーニーは彼に『2つのチームを持つことはあなたに多くの利益を与えるので、あなたはミナルディを買うべきだ』と言った」

「1か月後のスパですべてが成立した。その後、マテシッツ氏はシャンパンを飲まず、契約を祝うためにレッドブルしか飲まないだろう言われた。そのとき自分が言ったことを覚えている。『このエナジードリンクはエイリアンの小便のような味がする』とね。『ポール、あなたが得たお金のために私は飲んでいるんだ』と言われて、私も飲んだがね」

ポール・ストッダートは、チームの売却でどれだけの手に入れたかを明らかにしなかったが、売却後、チームは多くの才能を生み出した。過去10年にわたってセバスチャン・ベッテル、マックス・フェルスタッペン、ダニエル・リカルド、カルロス・サインツ、ピエール・ガスリーといった多くのドライバーがイタリアのチームで走った。

2008年のセバスチャン・ベッテル、そして、今年9月のピエール・ガスリーの勝利は、アルファタウリをまだミナルディと呼ぶポール・ストッダートに笑顔をもたらした。

「チームが勝利や表彰台を達成したとき、チームはまだ私の一部、私のDNAの一部のように感じた。十分なお金を持っていたか? ノーだ。それを使い果してしまったか? そうだね。だが、我々はそのために懸命に戦わなければならなかった」

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カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / トロロッソ / スクーデリア・アルファタウリ