F1特集:レッドブル・レーシングとアルファタウリ・ホンダの関係の変化
エネジードリンクメーカーであるレッドブルが所有する2つのF1チームの今後の共存方法に変化がみられている。

レッドブルF1のチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、レッドブル・レーシングにとってアルファタウリ・ホンダF1は「ジュニアチームというよりも、むしろ姉妹チーム」と語っている。これは興味深い単語の選択と言える。

レッドブル・レーシングとアルファタウリ・ホンダのこれまでの運営方法
レッドブルの総帥ディートリッヒ・マテシッツは、2006年シーズン前にミナルディを買収してトロ・ロッソへと改名。レッドブル・ジュニアチームの有望なドライバーが、シニアチームで走るのに必要な資質を持っていることを証明するための学校を作った。

この戦略は、大成功を収めた。ジュニアチームから昇格したセバスチャン・ベッテルは、レッドブルに4年連続でドライバーズとコンストラクターズの両チャンピオンシップをもたらした。ダニエル・リチャルドとマックス・フェルスタッペンもベッテルに続き、二人合わせてレッドブルに16回の優勝をもたらした。そして、今ではアルファタウリ・ホンダF1のピエール・ガスリーもレースウィナーとなった。

当初、レッドブルとトロ・ロッソは非常に近い関係だった。トロ・ロッソは基本的に前年のレッドブルを使用していたが、2010年にそれが認められなくなったことで、コンストラクターになった。しかし、近年は、パフォーマンスとコスト節約を理由に再び関係性を深めている。

何が変わりつつあるのか?
レッドブルの実験台として、トロ・ロッソがホンダF1をエンジンサプライヤーとして採用したことが、チームのダイナミクスを変えようとする計画の最初の兆候だった。

トロ・ロッソとホンダはすぐに良い関係を築き、翌年からレッドブルがホンダを採用したことでファエンツァのチームが割を食うことはなかった。レッドブルと同じ契約をホンダF1と結んだトロ・ロッソは、ギアボックスおよび関連する油圧計と電子機器を含むマシンのリアエンドは、前年のレッドブルのものを流用した。フロントサスペンションも昨年のレッドブルRB15のものを使用して密接な関係は継続し、レッドブル・アドバンスト・テクノロジーズとの提携は、燃料システム、ブレーキ・システム、ステアリングに及んだ。

だが、今シーズン、アルファタウリへの改名は、若々しい意味合いがあったトロ・ロッソとの決別だった。

クリスチャン・ホーナーは「もちろんアルファタウリは、今年改名されたチームだ。彼らの野心はトロ・ロッソの野心を超えている」と語る。

新型コロナウイルスのパンデミックによって引き起こされた試練、特に非常に困難なな財政状況を考えれば、効率化のために、可能であればリソースを共有することが重要となる。

アルファタウリ・ホンダF1のチーム代表を務めるフランツ・トストは「チームは過去数年間で成長し、パフォーマンスが向上し、マシンの信頼性は高くなっている。レッドブル・テクノロジーとの協力関係は非常にポジティブであり、すべて規約の範囲内だが、相乗効果(シナジー)プロセスが大きなアドバンテージをもたらしている」と語った。

次のステップは?
アルファタウリ・ホンダF1は来シーズンから、イギリスのベッドフォードにあるレッドブルの風洞を使えるようになる。これは、2021年の“空力テスト制限”の導入によって可能になる。風洞使用時間が引き下げられることでベッドフォードの風洞の容量が余るため、現在、イギリスのビスターにある違う風洞を使っているアルファタウリ・ホンダが活用できるようになる。

現在、アルファタウリ・ホンダF1は、50%風洞モデルを使用している唯一のチーム(他のチームは60%モデルを使用)であり、これは大きな意味がある。この風洞が使えるようになることで、アルファタウリ・ホンダF1の開発から得られるデータの品質はかなり信頼性が高まるはずである。

フランツ・トストは「(60%風洞を利用することで)明らかに我々はアドバンテージを得る。なぜなら、かなり有効な計測ができるし、コストを削減し、パフォーマンスを向上させるための相乗効果プロセスは、ここ数年で成功している。レッドブル・テクノロジーは、技術基準からも見て非常に高いレベルにある」と語る。

レーシング・ポイントのブレーキダクトによって生じた厄介な状況に照らし、コラボレーションに関しては何が認められ、何が認められないか、チームの間で合意が結ばれた。

アルファタウリ・ホンダF1の新しい方向性にとってこの明確化はタイムリーなものとなる。2022年はリセットされ、外観が根本的なF1マシンが登場する。

クリスチャン・ホーナーは「ごく最近、何が認められ、何が認められないかについて規約が明確になったが、大きな意味がある風洞の共同使用を始めたという事実を除いて、アルファタウリとの仕事は基本的に何も変わらない」と述べた。

「つまり、アルファタウリは、我々がモデル内で使用しているツールやモデルサイズに関して同じ機器、同じ風洞を利用できるようになるので、これが彼らの開発の役に立つことを願っている。特に2022年のマシンは大幅に規約が変更になる」

「規約が明確になり、何が認められて何が認められないかについて、グレーゾーンがなくなったので、アルファタウリは間違いなくそこから恩恵を受けるだろう」

アルファタウリ・ホンダF1はレッドブル・レーシングのクローンになるのか?
クローンにはならないだろう。内部の部品の多くはレッドブルに由来するが、ハースもフェラーリから同じように部品を調達しているので、外から見ればアルファタウリはレッドブルとは異なって見えるはずである。

空力面は、チームが独自に設計・開発されなければならないので、ほぼ間違いなく違って見えるだろう。重要なことに、チームがコストを削減し、予算を設計と開発に振り向け、新しい風洞から得られるデータの品質向上から恩恵を受けることで、外観はさらに洗練されて見えるはずである。

フランツ・トストは、長年コンストラクターズ選手権で5位を獲得するという野心を抱き続けている。今の方向に進み続け、優勝を手にしたモンツァなどのチャンスを活用すれば、その野心は意外に早く実現するかもしれない。

ドライバーに関する理念は?
現在、アルファタウリ・ホンダF1は、ピエール・ガスリーとダニール・クビアトというチームにとって最も経験豊富なラインアップを擁しているが、必ずしも若手ドライバーの育成をやめたわけではない。

ジュニアチームから姉妹チームに変わっても、彼らの焦点は、レッドブルが若手ドライバーを起用するためにフランツ・トストが指導するテストグランドを提供し続けることにある。

アルファタウリ・ホンダF1が、11月までに最終的なドライバーラインナップを決定する可能性は低い、そして、下位カテゴリーの誰かが、F1昇格に必要なスーパーライセンスを取得できるほど強くなるのかどうかも不明である。

レッドブルは、ホンダF1が支援するドライバーで、現在F2で6位の角田裕毅を評価している。彼はシーズン末のアブダビテストでアルファタウリ・ホンダF1をドライブする予定となっている。

しかし、角田裕毅がF1に参戦するために必要なスーパーライセンス・ポイントを獲得するにはF2をトップ4で終える必要がある。そのため、現状では2021年も今と同じラインアップを継続することが、最も可能性の高い選択肢となっている。

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / レッドブル / ホンダF1 / アルファタウリ