レッドブルF1のセルジオ・ペレス 「厳しい過去を経験して今は心からF1を楽しんでいる」
レッドブルF1のセルジオ・ペレスにとって、2022年シーズンはF1デビュー12年目にしてキャリアベストの成績を収める1年になった

2020年のF1サキールGP 、F1現役生活を終えるまであと2戦と思われていたセルジオ・ペレスは1周目でコースアウトを喫して最後尾まで順位を落とし、困難なレースに直面していた。失うものは何もないと悟ったペレスはレースを続行し、全力を尽くして成り行きを見守ることにした。

結局、セルジオ・ペレスは混乱のレースとなったサキールGPを最後尾から追い上げて優勝した。これは彼にとってデビュー190戦目で記録したF1初優勝であると同時に50年ぶりのメキシコ人ドライバーのF1優勝となった。

それから12日後、“チェコ” の愛称で親しまれるペレスが2021年シーズンにレッドブル・レーシングでマックス・フェルスタッペンのチームメイトを務めることが発表された。そしてキャリアの命運が尽きたと思われていた2020シーズンから2年を経た今、ペレスは過去最高の状態にある。

セルジオ・ペレスは2勝・ポールポジション1回・ファステストラップ3回・計305ポイントを記録し、キャリアベストの成績を収めて2022年シーズンを終えた。ドライバーズ選手権でも、最終戦アブダビGPを3位で終えて惜しくも選手権2位は逃したものの、キャリアベストの3位を記録した。

32歳を迎えたドライバーが12シーズン目にキャリアベストの成績を収めるのは珍しい。しかし、2022年シーズンはセルジオ・ペレスが歩んできた極めてユニークなキャリアの順当な進化だ。

2022年シーズンのモナコとシンガポールでの優勝の前に記録された昨シーズンのアゼルバイジャンGP優勝は、市街地サーキット最強ドライバーという評価と、少し前の彼なら想像さえできなった "翌シーズンのシート" を確実にした。

多くのドライバーがスピードを失っていく年齢にあってもベストリザルト更新を続けていける理由についてセルジオ・ペレスに尋ねると、自身のパフォーマンスはひとつの要因による結果ではないとして次のように語る。

「全体的に2022年は良いシーズンだった」とセルジオ・ペレスは切り出し、自信とモチベーションがさらに向上し、これまで以上に仕事を楽しむようになったことがキャリアベストの成績に導く要因になったと語る。

「タイトル争いに絡んでいければよかったけれど、僕は少し安定感に欠けていた。とはいえ、全体的に見てチームにとって強力なシーズンになった」

セルジオ・ペレスはF1シート喪失の瀬戸際まで追い込まれた経験が彼の大局観を変えたことを認めており、大きな結果に繋がる小さな勝利に価値を見出せるようになったとしている。

「一度シートを失うところまで追い込まれると、チャンスを得ることの難しさを思い知ると同時に、キャリアには必ず終わりがあることを痛感する」とセルジオ・ペレスは語る。

「以前にも増してこの事実を痛感するようになったかもしれない。過去の厳しい経験が身に沁みていれば、今がもっと楽しめるようになる。今は心から仕事を楽しんでいるよ」

2022年シーズン、セルジオ・ペレスとフェルスタッペンのドライバーコンビは、2013シーズン以来となるレッドブル・レーシングのコンストラクターズタイトル獲得の原動力になった。この布陣は極めて強力だったため、7月に発表されたチェコの2024シーズン末までの契約延長はチームとドライバー双方にとって実に簡単な決断だった。

2011年シーズン開幕戦オーストラリアGPでザウバーからF1デビューを飾り、その後マクラーレンやフォースインディア / レーシングポイントを経て現在レッドブル・レーシングに在籍するセルジオ・ペレスは、実に豊富な経験を重ねてきた。F1の73年の歴史の中で、ペレスより出走回数が多いドライバーは11人しかいない。

つまり、セルジオ・ペレスは過去に在籍したチームとレッドブル・レーシングの違いについてコメントできる立場にある。

「レッドブル・レーシングは非常に強力で、とても良くまとまったチームだ」とセルジオ・ペレスは語る。

「素晴らしいメンバーが集まっていて、全員が同じゴールに向かって努力している。勝利だけを目指すメンタリティが備わっていて、次の課題や目標に向かって常に努力しているんだ。大いに影響を受けているよ」

ここ数年でセルジオ・ペレスに起きた変化のひとつが人気の急上昇だ。10月に開催されたメキシコGPではありとあらゆる看板やTV広告にチェコの顔が使用された。395,000人以上ものファンがメキシコGPを3日間の祝祭へ変えてしまった理由も大いに納得できる。

セルジオ・ペレスに起きたもうひとつの変化は、レッドブル・レーシング加入後に手に入れた様々なニックネームだ。

特筆すべきは、2021年シーズンのタイトル決定戦となったアブダビGPでメルセデスのルイス・ハミルトンを相手に一歩も引かないバトルを展開してフェルスタッペンのタイトル獲得を決定的にしたことから得た “防衛大臣(Minister of Defense)” だ。

「“攻撃大臣” の方が好みだけどね」とセルジオ・ペレスは笑いながら語る。

「自分はフェアなドライバーだと思っている。とてもアグレッシブだけど、常に適切なスペースを残している。安心してレースできる相手、とても楽しくバトルできる相手だと思う。ホイール・トゥ・ホイールの接戦ができるドライバーは決して多くない」

成績向上に伴いさらに大きくなってきた母国メキシコからの応援について尋ねると、セルジオ・ペレスはその意味の重大さは言葉では言い表せないとして次のように語る。

「メキシコからの応援は現実とは思えないほどだ」

「僕の母国メキシコは驚異的だ。素晴らしいサポートのおかげで、僕を心からハッピーにしてくれる」

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カテゴリー: F1 / セルジオ・ペレス / レッドブル・レーシング