タイヤ交換が鍵となった雨のF1イタリアGP
セバスチャン・ベッテルが歴史的な初優勝を遂げた2008年のF1イタリアGP。
アクセル全開率が約76%の屈指の高速サーキットと知られるモンツァ・サーキット。毎年、各チームは低ドラックの特別マシンを持ちこみギリギリまでダウンフォースを削る。そんなサーキットに降り注いだ雨が、多くのドラマを演出した。
セーフティカー先導のもと、全車エクストリームウェットタイヤでのスタートとなったイタリアGP。レースの鍵となったのは、レース中盤に訪れたスタンダードウェットタイヤへ変更するタイミングだった。
最も恩恵を受けたのは、BMWのロバート・クビサ。1ストップ戦略での35周目でのピットインは、スタンダードウェットに変更するまさにベストなタイミングだったと言える。これによりクビサは11番スタートから3位表彰台という見事な結果を手にした。同様の戦略をとったチームメイトのニック・ハイドフェルドも10番手から5位フィニッシュという結果をおさめた。
ルノーのフェルナンド・アロンソも、1ストップ戦略がうまくハマったドライバーだ。アロンソは戦略のみならず、非力で重いマシンを巧みに操り、後続のマシンを抑えるドライビングテクニックをみせ、貴重な5ポイントを獲得。この結果でコンストラクターズでトヨタと並ぶ41ポイントまでルノーを押し上げた。ネルソン・ピケJr.は逆に第1スティントが長すぎた。それでも17番手から10番手というジャンプアップを果たした。
優勝のセバスチャン・ベッテル(トロ・ロッソ)と2位のヘイキ・コバライネン(マクラーレン)は、短めの第1スティントが幸いした。セーフティカースタートの恩恵でクリアの視界を確保したベッテルは、2位のコバライネンを引き離し大きなマージンを築いたことにより、2位のコバライネンがスタンダードに変更したのを見計らって余裕のピットストップを実施。トロ・ロッソのピット作業も実にスムーズだった。セバスチャン・ブルデーは不運以外のなにものでもない。ギアが入らずストールしたボーデは、いきなりの周回遅れとなった。2番目となるファステストラップを記録したことを考えると、3位表彰台も夢ではなかったかもしれない。
同じ1ストップでも、シークエンスの違いでそれが裏目に出たのがトヨタだ。25周目でピットインしたティモ・グロックは、10周後に訪れた路面の変化に対応することは困難だった。ヤルノ・トゥルーリもほぼ同じ時期のピットイン。結局、スタンダードに変更する余分なピットインを余儀なくされ、ポイントフィニッシュを逃した。2名のドライバーを同じ戦略においたことが、結果としてチームからポイントを奪った。
マクラーレンは、ルイス・ハミルトンとコバライネンの戦略を分けたことが不運となった。ハミルトンは、Q2で脱落したことにより、1ストップ戦略を敢行。しかし、トヨタ同様1度目のストップがタイミングが若干早く、スタンダードへの変更が必要になってしまった。第1スティントで15位から2位まで追い上げをみせたハミルトンの走りがあれば、仮にエクストリームのままのコンディションが続けば優勝も見えていたかもしれない。
フェラーリは、中途半端だった。一般的な2ストップを選択したフェラーリは、燃料を多く残して2度目のピットインを行うことになった。しかし、マッサとライコネンは第1スティントでのグリップに苦しんだ。路面がドライになってからファステストを出したライコネンだが時すでに遅し。第2スティントで持ち直したのを見ると、スタート時の内圧管理にミスがあったと思われる。ハミルトンとのバトルでのトラクションの低さは顕著だった。結果として、ライコネンはチャンピオンシップ争いから事実上脱落した。
レッドブルは不運だった。序盤はベッテルとコバライネンを追いかけたマーク・ウェバーだったが、第2スティントでトラフィックに捕まり、タイヤを殺してしまった。デビッド・クルサードはブレーキトラブルが発生し、困難なレースとなった。
ウィリアムズは、再びピリッとしないレースとなった。5番手からスタートしたロズベルグだが、序盤にタイヤを痛めてしまい、しかもピットストップで給油リグな抜けないという失敗があった。それにより1秒以上失ったロズベルグは、ポイント圏外にはじき出された。ピットスタートを選んだ中嶋一貴は、結果として12位まで順位をあげたが、クルサードとの接触以外は目立たないレース展開だった。
下位争いのホンダとフォース・インディアは、バリチェロとスーティルがドライタイヤに履き替えるというギャンブルに出たが、順位に影響をあたえるインパクトはなかった。序盤、ハミルトンとマッサを抑え込んだフィジケラの走りが唯一印象的だった。
トロ・ロッソの活躍は歴史的だった。フェラーリ以外のイタリアチームがイタリアGPで勝ったのは史上初めてのことだ。レッドブルという巨大な資本があるにせよ、160人という小規模チームがグランプリを制したのも感慨深い。この勝利は、決してまぐれではなく、週末を通して雨の中でのチームパフォーマンスが為した業だ。雨という特別なコンディションではあったが、それをものにできるチーム力がトロ・ロッソにはあった。
今シーズンのはじめまで、日本にも同じような実力を持ったチームがあった。レッドブルのようにホンダがその活躍を許せば、今回のような面白いレースが見られたかもしれない。佐藤琢磨がトロ・ロッソのテストを受けることが楽しみでならない。
セバスチャン・ベッテルの将来にも期待したい。初ポール&初優勝でフェルナンド・アロンソを抜いたのだから。将来のF1を担うドライバーであることは間違いないだろう。(F1-Gate.com)
イタリアGP決勝結果
カテゴリー: F1 / F1関連
アクセル全開率が約76%の屈指の高速サーキットと知られるモンツァ・サーキット。毎年、各チームは低ドラックの特別マシンを持ちこみギリギリまでダウンフォースを削る。そんなサーキットに降り注いだ雨が、多くのドラマを演出した。
セーフティカー先導のもと、全車エクストリームウェットタイヤでのスタートとなったイタリアGP。レースの鍵となったのは、レース中盤に訪れたスタンダードウェットタイヤへ変更するタイミングだった。
最も恩恵を受けたのは、BMWのロバート・クビサ。1ストップ戦略での35周目でのピットインは、スタンダードウェットに変更するまさにベストなタイミングだったと言える。これによりクビサは11番スタートから3位表彰台という見事な結果を手にした。同様の戦略をとったチームメイトのニック・ハイドフェルドも10番手から5位フィニッシュという結果をおさめた。
ルノーのフェルナンド・アロンソも、1ストップ戦略がうまくハマったドライバーだ。アロンソは戦略のみならず、非力で重いマシンを巧みに操り、後続のマシンを抑えるドライビングテクニックをみせ、貴重な5ポイントを獲得。この結果でコンストラクターズでトヨタと並ぶ41ポイントまでルノーを押し上げた。ネルソン・ピケJr.は逆に第1スティントが長すぎた。それでも17番手から10番手というジャンプアップを果たした。
優勝のセバスチャン・ベッテル(トロ・ロッソ)と2位のヘイキ・コバライネン(マクラーレン)は、短めの第1スティントが幸いした。セーフティカースタートの恩恵でクリアの視界を確保したベッテルは、2位のコバライネンを引き離し大きなマージンを築いたことにより、2位のコバライネンがスタンダードに変更したのを見計らって余裕のピットストップを実施。トロ・ロッソのピット作業も実にスムーズだった。セバスチャン・ブルデーは不運以外のなにものでもない。ギアが入らずストールしたボーデは、いきなりの周回遅れとなった。2番目となるファステストラップを記録したことを考えると、3位表彰台も夢ではなかったかもしれない。
同じ1ストップでも、シークエンスの違いでそれが裏目に出たのがトヨタだ。25周目でピットインしたティモ・グロックは、10周後に訪れた路面の変化に対応することは困難だった。ヤルノ・トゥルーリもほぼ同じ時期のピットイン。結局、スタンダードに変更する余分なピットインを余儀なくされ、ポイントフィニッシュを逃した。2名のドライバーを同じ戦略においたことが、結果としてチームからポイントを奪った。
マクラーレンは、ルイス・ハミルトンとコバライネンの戦略を分けたことが不運となった。ハミルトンは、Q2で脱落したことにより、1ストップ戦略を敢行。しかし、トヨタ同様1度目のストップがタイミングが若干早く、スタンダードへの変更が必要になってしまった。第1スティントで15位から2位まで追い上げをみせたハミルトンの走りがあれば、仮にエクストリームのままのコンディションが続けば優勝も見えていたかもしれない。
フェラーリは、中途半端だった。一般的な2ストップを選択したフェラーリは、燃料を多く残して2度目のピットインを行うことになった。しかし、マッサとライコネンは第1スティントでのグリップに苦しんだ。路面がドライになってからファステストを出したライコネンだが時すでに遅し。第2スティントで持ち直したのを見ると、スタート時の内圧管理にミスがあったと思われる。ハミルトンとのバトルでのトラクションの低さは顕著だった。結果として、ライコネンはチャンピオンシップ争いから事実上脱落した。
レッドブルは不運だった。序盤はベッテルとコバライネンを追いかけたマーク・ウェバーだったが、第2スティントでトラフィックに捕まり、タイヤを殺してしまった。デビッド・クルサードはブレーキトラブルが発生し、困難なレースとなった。
ウィリアムズは、再びピリッとしないレースとなった。5番手からスタートしたロズベルグだが、序盤にタイヤを痛めてしまい、しかもピットストップで給油リグな抜けないという失敗があった。それにより1秒以上失ったロズベルグは、ポイント圏外にはじき出された。ピットスタートを選んだ中嶋一貴は、結果として12位まで順位をあげたが、クルサードとの接触以外は目立たないレース展開だった。
下位争いのホンダとフォース・インディアは、バリチェロとスーティルがドライタイヤに履き替えるというギャンブルに出たが、順位に影響をあたえるインパクトはなかった。序盤、ハミルトンとマッサを抑え込んだフィジケラの走りが唯一印象的だった。
トロ・ロッソの活躍は歴史的だった。フェラーリ以外のイタリアチームがイタリアGPで勝ったのは史上初めてのことだ。レッドブルという巨大な資本があるにせよ、160人という小規模チームがグランプリを制したのも感慨深い。この勝利は、決してまぐれではなく、週末を通して雨の中でのチームパフォーマンスが為した業だ。雨という特別なコンディションではあったが、それをものにできるチーム力がトロ・ロッソにはあった。
今シーズンのはじめまで、日本にも同じような実力を持ったチームがあった。レッドブルのようにホンダがその活躍を許せば、今回のような面白いレースが見られたかもしれない。佐藤琢磨がトロ・ロッソのテストを受けることが楽しみでならない。
セバスチャン・ベッテルの将来にも期待したい。初ポール&初優勝でフェルナンド・アロンソを抜いたのだから。将来のF1を担うドライバーであることは間違いないだろう。(F1-Gate.com)
イタリアGP決勝結果
カテゴリー: F1 / F1関連