MotoGP:ヤマハ 2021年 第11戦 オーストリアGP 決勝レポート
2021年 MotoGP 第11戦オーストリアGPはドラマティックなエンディングとなった。Monster Energy Yamaha MotoGPのファビオ・クアルタラロは順調に表彰台へと向かっていたが、最後の3ラップで雨が降り出し、ピットに戻りレイン用マシンに乗り換え14位でコースに復帰し、懸命の追い上げで7位まで挽回。貴重な9ポイントを獲得し、チャンピオンシップのリードをさらに7ポイント拡大した。

PETRONAS Yamaha Sepang Raing Teamのバレンティーノ・ロッシは、雨が降り出した終盤もスリック・タイヤで走行を続け、一時3位まで浮上したあと、今季自己ベストとなる8位でチェッカーを受けた。チームメイトのカル・クラッチローは17位となっている。

降雨による波乱のレースで、クアルタラロが7位
グリッドにマシンを並べた時点で、わずかに雨粒が落ち始める緊張状態のなかで決勝がスタート。クアルタラロは2番グリッドから絶好のスタートを切ったが、第1コーナーでマシンが激しく振られて大回りを余儀なくされる。そしてその間にも、マシン交換の許可を示すホワイト・フラッグが提示された。このような状況のなか、1ラップ目を5番手で終えたクアルタラロはJ・ミラー(ドゥカティ)に抜かれて6番手に。しかし3ラップ目には1分24秒471のファステストラップを記録して抜き返し、さらに5ラップ目にはJ・ザルコ(ドゥカティ)も抜き去りトップ3を追っていった。

その後、YZR-M1に信頼をおくクアルタラロは果敢なオーバーテイクを仕掛けていく。そして8ラップ目にはついにトップに浮上。このときもコースのいたるところでレイン・フラッグが降られていたが、トップ争いは継続された。11ラップ目にレイン・フラッグが取り下げられるとトップ争いはさらに激化。F・バニャイア(ドゥカティ)がペースを上げたが、クアルタラロもすぐに反応して再度、1分24秒451のファステストラップを記録してトップを奪い返した。しかしこの頃、その他のライバルたちも着実に背後に迫っていた。

残り9ラップとなった19ラップ目にはM・マルケス(ホンダ)との2位争いのなかで、追撃を抑えようとした第3コーナーではらむなど激しい展開が続く。しかしその3ラップ後には再びレイン・フラッグが提示され、トップグループが一気に6台まで膨らむ状況へと変化した。この混乱のなかでクアルタラロは4番手から2番手へ浮上したが、残り3ラップになると雨が激しくなったため、クアルタラロを含むトップグループが次々とピットへ飛び込みマシンを交換。数台がドライ・タイヤで走行を続けるなか、クアルタラロは14番手で復帰すると、最終的にトップから16.650秒差の7位まで上げてチェッカーを受けた。

この結果、クアルタラロは合計181ポイントに伸ばしてチャンピオンシップのリードを47ポイントに拡大。欠場のM・ビニャーレスは合計95ポイントでランキング7位へ後退した。Monster Energy Yamaha MotoGPは合計276ポイントでチーム・ランキング1位を維持。ヤマハは合計209ポイントでコンストラクターズ・ランキング2位に後退している。

スリック・タイヤで走行を続行したロッシが8位獲得
ロッシは18番グリッドからスタートしたが出遅れて20番手へ後退。2ラップ目には18番手を取り戻し、さらに18ラップまでにポイント圏内まで上がってきた。雨が降り出し、残り4ラップではほとんどのライダーがマシン交換を決断してピットに入ったが、ロッシはそのまま続行し、残り2ラップでは3番手へと浮上。しかしその後、さらに雨が激しくなるとペースダウンを余儀なくされ、8位まで後退してチェッカーとなった。

一方のクラッチローはオープニングラップで数台をパスするが、その後、スターティング・ポジションの20番手まで後退したが、前方グループについて順調に走行を続けていた。雨が降りだした時点で一時ポイント圏内まで浮上したが、25ラップ目にマシンを交換。これで17位に後退し、そのままポジションを維持してチェッカーを受けた。

Monster Energy Yamaha MotoGP
ファビオ・クアルタラロ(7位)
「ドライは非常に順調でした。バニャイア選手、マルケス選手とトップ争いを展開できたことに満足しています。このコースでは大きな前進だと思います。雨が激しくなるまで、チャンピオンシップのことは頭にありませんでした。オーバーテイクはまさに恐怖でした。マーティン選手が左側、マルケス選手が右側にいて行き場がなかったのです。"行け!いつものようにハードブレーキをかけるんだ!"と言い聞かせながら、ぎりぎりのところで、最高のオーバーテイクができたと思います。マルケス選手とマーティン選手のブレーキングの素晴らしさはよく知っています。そのなかで自分自身の行動にも感動しました。雨が強くなると何度か危ない場面もありました。マルケス選手がピットレーンに向かうのを見て、それに続きました。ほとんどが同様にピットに戻ったので、チャンピオンシップのことを考えました。私にとっては正しい選択でした。自分のミスで5位を逃してしまったのは残念ですが、最終的にリードを47ポイントに拡大できたので満足です。ここはポイントを失うコースだと考えていました。シルバーストーンでは勝利を目指します。大好きなコースのひとつなので楽しみにしています」

マッシモ・メレガリ(チーム・ディレクター)
「シュピールベルク・サーキットは、見ごたえあるレースを展開させる場所です。そして今日もその期待を裏切りませんでした。観客たちはシートの先端までせり出して展開を見守ったことでしょう。しかし私たちにとっては、終盤の雨は本当に残念でした。クアルタラロ選手はとても好調で、自信をもってトップを走り、何度も果敢なオーバーテイクを見せました。結果的にここまでのハードワークが表彰台に結びつかなかったことが残念で仕方ありません。しかし最後の3ラップをスリック・タイヤのまま走るのは危険すぎました。彼はチャンピオンシップのリーダーですから、そのことも考慮に入れなければなりません。そして不要なリスクを避け、タイヤを履き替えて本当の勝負に賭けたのです。その結果、7位でゴールし、チャンピオンシップのリードを拡大しました。もちろん、その他のいろいろなケースについても考えてみましたが、ヤマハにとって決して楽ではないこのコースで、この結果になったことは評価したいと思います。次回はMonster Energyがタイトル・スポンサーとなるイギリスGPです。全力で戦います」

PETRONAS Yamaha Sepang Racing Team
バレンティーノ・ロッシ(8位)
「レース終盤、スリック・タイヤからレイン・タイヤへの交換のポイントが非常にエキサイティングでした。私としては、残りがわずか4ラップだったので、マシン交換は望みませんでした。そしてそれは正しい判断だったと思います。しかしながら、もしも雨があと2分、遅れていたら表彰台に立てたかもしれません。私は一時、3位に上がっていて、ボードでそれを確認したときは衝撃を受けました。結局、表彰台というわけにはいきませんでしたが、8位でゴールしてポイントを獲得できたので、私にとってもチームにとってもうれしい一日になりました。また、今回は久しぶりに、コース中に大勢の観客を迎え、素晴らしい雰囲気のなかで走ることができました。イエローの服を着たたくさんのファンが声援を送ってくれたのです。とてもうれしく、チェッカー後にピットに戻るまでのファイナル・ラップもエキサイティングでした。マシンのフィーリングも上々です。次のシルバーストーンを楽しみにしています」

カル・クラッチロー(17位)
「好スタートを切り、前の集団にしばらくついていくことができました。その時点でペースは悪くなかったし、気持ちよく走れていました。しかし電子制御システムに少し問題があったので、その対処に時間がかかってしまいました。その後もペースは悪くありませんでしたが、雨が降り出した時点で最後尾にいたので、ほかのライダーたちがピットに入ったのか、続行しているのかわかりませんでした。最終コーナーにある大型スクリーンに皆がピットに入るのが映っていたので、急いでそれに続きました。レイン・タイヤに交換したあとも、コースはまるで氷のようでした。路面がまだ熱いままだったからです。本当に大変な数ラップでした! それでもこの2週間の成果には満足しています。とくに昨年の予選タイムにコンマ5秒差まで迫れたことはうれしかったです」

ラズラン・ラザリ(チーム代表)
「最後の数ラップは非常にトリッキーな展開になりました。このように難しいコンディションのなかで、一時、3位まで上がったロッシ選手のミラクルを期待しましたが、それは叶いませんでした。結果はロッシ選手が8位、クラッチロー選手が17位となりましたが、大勢のファンを楽しませ、素晴らしいショーをお見せすることができたのは良かったと思います。今日の結果に満足しています」

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カテゴリー: F1 / MotoGP