メルセデスF1代表ヴォルフ、2026年を前に自問「十分に野心的だったのか」

メルセデスは2014年のターボ・ハイブリッド導入時に圧倒的な先行を築いた実績から、2026年に向けても高い評価を受けている。
しかし今回の変更は、パワーユニットだけでなく、シャシーや空力を含めた全面的な刷新となり、当時以上に規模が大きい。
新世代パワーユニットは、電動出力が最大350kWに引き上げられ、現在の約3倍の電気エネルギーを使用する。MGU-Hは廃止され、燃料は100%合成燃料となる。これらのマシンは来月、バルセロナでの非公開テストで初走行を迎え、その後2月にバーレーンで公式プレシーズンテストが行われる予定だ。
W17プロジェクトは順調に進んでいるとされる一方で、ヴォルフは慎重な姿勢を崩さない。
「これは非常に予測が難しい。我々は設定した目標に向けて順調に進んでいるが、その目標が十分に野心的だったのか、優先順位の置き方が正しかったのかは、将来になってみなければ分からない」
彼は過去のレギュレーション変更時の経験とも重ね合わせる。
「2013年のブラジルGPでの記者会見を覚えている。私は紙切れに、コンストラクターズ選手権で2位になるために必要なポイントを計算していた。結果的に我々は3勝を挙げ、その2位は、2025年の2位よりもずっと喜びの大きいものだった。なぜなら、どこから来たのかを分かっていたからだ」
一方で、2014年を前にした状況とは明確に違うと強調する。
「2014年の冬には、すでに感覚が違っていた。完全なマシンを最初にベンチで回し、エンジンは他よりも信頼性が高かった。テスト初日から、誰も我々と同じ走行プログラムをこなしていなかったし、それは2日目も同じだった」
「だから今回は比較できない。今のグリッドは、当時よりはるかに競争力が高い」
今季序盤、ヴォルフは2026年マシンの潜在能力について「すべてのエネルギーを1本のストレートに使えば、時速400kmに達する」と発言し、パドックで大きな議論を呼んだ。FIAのニコラス・トンバジスは、実際のレースでそのような速度になることはないと説明している。
この発言の真意について、ヴォルフは次のように説明する。
「いいえ、2026年に向けて準備ができていると示す意図ではなかった。多くの人がこのエンジンを過小評価していたので、マーケティング的に少し後押しする必要があると感じた。これは本当に驚異的なエンジニアリングの結晶だからだ」
「もしFIAが、すべてを積み重ねると400km/h、あるいはそれ以上に達し得るという理論上の話を聞いて、サーキットの安全基準に急に不安を抱いたのだとしたら、それはあくまで理論だ。次のストレートにはエネルギーが残らず、十分な速さは出せない」
2026年のパワーユニットが現行と比べてどれほど強力なのかについても、期待を抑える。
「最大出力は、常にほぼ同じ水準に保つ意図だった。正確な比較はしていないが、ストレートの入り口では非常に近い」

2026年を前に見えるメルセデスF1の不確実性
ヴォルフの発言からは、2014年のような明確な手応えではなく、競争環境の読みづらさが強くにじみ出ている。技術的な準備が進んでいても、それが相対的な優位につながるかどうかは、グリッド全体の完成度次第だという認識がある。
技術面だけでなく、ヴォルフ自身の将来についても話題は及んだ。2012年に株主兼エグゼクティブディレクターとしてメルセデスに加わり、2013年にCEO兼チーム代表に就任。その後、チーム株式の33%を保有するまで影響力を高めてきた。
最近では、その33%のうち15%を、CrowdStrike創業者でCEOのジョージ・カーツに譲渡し、現在の持ち分は全体で28%となっている。
「一生この世界にいると思うか?」という問いに、ヴォルフは即答した。
「何らかの形では、そうだ。スージーと私はチームの一部を所有している。これは我々のスポーツであり、我々の世界だ。将来、エグゼクティブなのか、ノンエグゼクティブなのか、会長なのか、取締役の一員なのかは分からないが、長期的に関わることになると思う」
「原動力になるのは成功であって、利益ではない。常に新しい目標がある。たとえノンエグゼクティブになったとしても、完全に距離を置けるとは思えない。もっと良いやり方があると、いつも思ってしまうだろうから。ソファに座りながら、後講釈で『自分ならもっと良い決断をしていた』と言う、あの厄介な株主になるだろう」
2026年F1を前に、メルセデスF1とトト・ヴォルフが抱えるのは、自信と不安が交錯する極めて現実的な問いだ。新時代の答えは、コース上でしか示されない。
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