F1、有料テレビへの移行の正当性を主張 「中継の質は向上している」
F1は、有料テレビへの移行を進めてファンや視聴者がお金をかけなければレース中継を観れなくなっていることに批判が集まっているが、F1のメディア担当ディレクターを務めるイアン・ホームズは有料テレビへの移行の正当性を主張している。

2019年にF1の累計視聴者数は過去最高となる19億2200万人を記録したが、全世界の“ユニーク視聴者数”は4億9000万人だった前年比から3.9%=1920万人の減少となった。

この減少の主な要因は有料テレビへの移行だと考えられているが、イアン・ホームズは、人口統計学が有料テレビ放送への移行を決断した背景だとして、この動きを正当化した。

「FTA(無料放送)放送局の方が有料テレビチャンネルよりも多くの視聴者を稼げるのは言うまでもない」とイアン・ホームズは語った。

「とはいえ、それは少し単純化しすぎだ。まず、考慮すべき商業的要素が常にあり、それと同じくらい重要なのは、視聴者が誰であるか、人口統計がどうなっているか、つまり、どのような人たちに対して取り組んでいるかを見極めることだ」

「さらに、有料テレビはしばしばより多くの詳細な中継を提供する。SkyやCanal+のような有料放送では、F1中継の全体的な質を向上し、ファンにより多くのものを提供し続けていると言える。過去に存在した放送よりも、彼らは素晴らしい仕事をしている」

「そして、放送パートナーのさまざまなデジタルおよびソーシャルチャンネルや、F1が所有および運営する独自のプラットフォームおよびチャンネルでF1コンテンツを消費している人々がいる」

英国では、Skyが独占放映系を保持しているが、Cannel 4が全22戦のハイライトとイギリスGPのライブ中継を実施。SkyとF1グループの契約は2024年末までとなっている。

日本では、初めてF1日本GPが開催された1987年からフジテレビがF1を放送。放送開始当初は地上波での録画放送が中心だったが、1998年からはCS放送で全戦生中継に移行している。近年では、F1日本GPに関しては決勝の翌日にBSフジが録画放送で無料で提供している。

だが、ホンダF1の広報を務める鈴木悠介は、ホンダがF1に参戦していること自体まで十分に認知されていないと感じていると語る。

「F1というこのスポーツ、いまや日本では地上波で見ることができず、有料メディアに登録している方以外にとっては、なかなか縁遠い存在かもしれません。そしてホンダがF1に参戦していること自体、残念ながらまだそこまで認知してもらえていないようにも感じています。(認知度については僕たちの努力がまだまだ十分でないのかもしれません。)」と鈴木悠介は Honda Racing F1 の公式サイトでコメント。

「また、たとえ中継やサーキットでレースを見られる環境でも、多くの情報やデータを参照し、適切な知識や解説を伴いながらでないと、何が起こっているかを把握することが難しいスポーツでもあります。サッカーのように、たまたまTVをつけたらやっていて、わかりやすいルールなのでだれでも楽しめるといったタイプのエンターテインメントでないことは、現代の四輪モータースポーツにとって課題であり難しさだと思っています。一言で言って理解するのが『ムツカシイ!』。(一方でマシンやドライバーのカッコよさはどんな方でもわかりやすい部分なのではと思います。)」

「ドライバー、車体、パワーユニット(PU=エンジン)、タイヤ、チーム戦略、サーキット特性など、パフォーマンスを決定するために多くの要素が介在していることがその要因です。特に通常のスポーツと大きく異なるのはドライバーという『アスリート』に加え、マシンという『道具』の良し悪しで結果が大きく異なる部分ではないでしょうか」

「同じくレースである競馬も似た側面がありますが、馬は道具ではなく動物です(それはそれでまた面白い)。サッカーのルールはシンプルなものの、選手特性や戦術などの組み合わせが無限大で非常に奥深い、など、スポーツごとにそれぞれの特徴があります。そしてモータースポーツの特徴の一つとして、視聴環境の難しさも含めた敷居の高さがあることは事実かなとも思っています。現代のF1は『なぜこのような結果になったのか』をシンプルに説明することが難しく、その魅力を伝えるのが仕事の広報担当にとっては非常に悩ましい部分であります。もっと言えば、僕はF1チームの広報ではなくPU=エンジン、つまり部品サプライヤーの広報担当なのでさらにややこしいです」

「反面、その複雑さゆえにおもしろいという側面があることも、このスポーツの魅力です。僕自身、10代のころにTVを見ながら漠然と感じていたおもしろさとは、このスポーツが『機械の精巧さと人の情熱との共存』、つまり『冷たさと熱さのぶつかり合い』で成立していることだったように思います。当時は単純にドライバーとマシンが一体となった戦いぶりを見てそう感じましたが、実際にチームの内部に入ってみると、それはドライバーとマシン間のみでなく、エンジニア/メカニックとPUとの間でも同様であるということを目の当たりにする形となりました」

「彼らが相手にしているのは機械であり、人間や動物ではありません。どれだけ情熱を持って接しても、きちんと作られていなければPUは壊れます。徹夜で策を凝らしてデータを入力しても、少しの目論見違いがあればストレートでパワーが切れてしまうこともあります。一方で、ひょんなことから一瞬だけ見えた偶然の発見を、失敗を繰り返しながら再現、その要因を特定し、時間をかけて確実な機構として作り上げることで、飛躍的なパフォーマンス向上を遂げることもあります」

「改善のためのロジックを立て、日々失敗と学びを繰り返しながら前進する開発メンバー、レース状況を元に瞬時で判断を下し最適なエンジンモードをドライバーに提供するPUエンジニア、限られた時間とプレッシャーの中、一つの作業ミスも許されない状況下でPUを組み上げるメカニック…。そんな姿を見て、『ここにも戦いはある。そして僕はこんな姿を皆さんに伝えたいんだ』と感じました」

「F1は主役のドライバー以外の姿が見えにくいスポーツでもあるので、その裏側で、どんな人たちがどのような想いを持って働いているかという部分を見てもらいたい。そしてそこから、なぜホンダという会社がこのスポーツに参戦しているのかが、なんとなく見えてきたらいいなという想いもあります」

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カテゴリー: F1 / リバティ・メディア / テレビ放送