ランス・ストロール F1欠場劇の真相巡り憶測 「機材破壊」「怒号」報道も

アストンマーティンはストロールの欠場理由について、2023年の自転車事故に起因する手と手首の痛みが悪化したためだと説明した。しかし、予選後にチームガレージで激高するストロールの姿があったとする報道が出たことで、この公式説明に疑問が投げかけられている。
シルバーストンを拠点とする同チームは、土曜深夜になってストロールの欠場を発表。声明では、両手首骨折からの2023年の手術に関連した痛みが再発し、マイアミ、イモラ、モナコといった直近6週間のレースで不快感が続いていたと説明した。
しかし、その発表は、予選Q2でチームメイトのフェルナンド・アロンソに0.5秒差をつけられて敗退したわずか数時間後だったこともあり、タイミングに不自然さがあるとの見方も出ている。
ESPNの報道によれば、3つのライバルチームの有力関係者がアストンマーティンの説明に懐疑的な見方を示しており、「ガレージ内で混乱があった」とする証言もある。
その混乱の中で、ストロールが激昂して機材を破壊し、チームスタッフに暴言を吐くなどした結果、手を負傷した可能性もあるという。一方、アストンマーティンの広報担当はESPNに対し「ランスは怒っていた」と認めたものの、それ以上の詳細は語らなかった。

クラック代表、噂を一蹴「これはパドックのゴシップだ」
アストンマーティンのトラックサイド責任者であるマイク・クラックは、これらの噂に直接反応した。ストロールが怒りの中で手を再負傷した可能性について尋ねられると、笑いながら否定した。
「私はピットウォールにいた。そんな話は聞いていない。こういうのは典型的なパドックのゴシップだ」と語る。
さらにクラックは、ドライバーが痛みを隠してレースを続けることは珍しくないと指摘。2023年にストロールが負傷を抱えながら復帰した例を引き合いに出した。
「われわれは5分おきに『痛いか?』とは聞かない。フィジオ(理学療法士)や本人との会話の中で、多少の問題があることは分かる」
「彼らは走りたいんだ。外されたくないんだ。だから実際よりも軽く言うことはよくある。彼らにとって運転は生きがいだから」
「過去数週間、痛みについてちらほら聞くことはあったが、どれほど深刻かは分からなかった。だが今週末になって、限界を超えたのだと思う」
クラックの説明では、ストロールは痛みを軽視し続けていたが、バルセロナではついに耐えられなくなったということになる。
しかし、これまでの無線やメディア対応で痛みに関する言及がなかったことや、ガレージ内での激しい怒りの報道などが相まって、関係者の間では疑念が拭い切れないままだ。内部関係者によれば、チーム内でもストロールの状態を欠場発表まで知らなかった者が多かったという。

母国カナダGP出場も不透明に 控える手術、代役は誰か
ストロールの欠場により、アストンマーティンはスペインGPをアロンソ1台のみで戦うことになった。予選後の欠場決定だったため、チームはリザーブドライバーの起用もできなかった。
ストロールには手首の手術が予定されており、6月15日に開催される母国カナダGPへの出場も不透明な状況だ。それでもクラックは「プランAはランスが乗ること」と語り、回復に期待を寄せている。
万一に備え、アストンマーティンはリザーブのフェリペ・ドルゴヴィッチやストフェル・バンドーン、あるいはメルセデスのバルテリ・ボッタスらを代役候補として検討できる。ただし、ドルゴヴィッチはル・マン参戦を控えており、スケジュールが重なる可能性がある。
現在もパドックでは、ストロールの怒りの爆発とその後の負傷をめぐる臆測が続いており、真相ははっきりしていない。アストンマーティンはその余波への対応に追われる中で、「欠場の真の理由」が医療的なものか、それとも感情的な問題なのか、関係者の間でも注目が集まっている。カナダ人ドライバーの今後のF1キャリアにも、不透明さが漂っている。
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