ホンダF1:2018年総括 「終盤の新スペック投入がターニングポイント」
ホンダF1の副テクニカルディレクターの本橋正充が、ホンダにとって現行レギュレーションの下での4年目、トロロッソという新たなパートナーとのジョイントがスタートした2018年のF1シーズンを振り返った。
全21戦で争われた2018年シーズンの最終戦。トロロッソ・ホンダは、コンストラクターズチャンピオンシップ8位の奪還を目指し、そしてシーズンの締めくくりにふさわしい戦いにすべく、チーム、ドライバーともに強い意気込みで、アブダビでの戦いに挑んだ。
しかし、2台ともにトラブルやアクシデントにより、満足のいく結果を得ることはできなかった。ピエール・ガスリー車のパワーユニット(PU)に起きた予選でのトラブル、決勝でのオイル漏れに関しては、現在、原因の究明と分析、対策が進められている。ともあれ、全21戦という長いシーズンは、この戦いで幕を降ろした。
「今年から、我々にとって新しいチームとのパートナーシップが始まりました。これまではマクラーレンというイギリスのチーム、今回はトロロッソというイタリアのチームという違いなどもあり、最初は不安もありました」と本橋正充は Honda Racing F1 の公式サイトで振り返る。
「しかし、シーズンが進むにつれて、時間を追うごとにいいコミュニケーションが取れるようになり、トロロッソというチームは一緒に戦う上でとてもいいパートナーだと感じるようになりました。親近感があり、勝ちたいという気持ちのもとでお互いを理解し合い、リスペクトし合うかたちで接してくれるパートナーでした。そういった面で、いいコミュニケーションが取れていますし、新たなチームビルドの1年目という面ではかなりいい成果を上げられたと思っています。レースに向けてのリレーションも、とても成長しました」
「テクニカルな観点で言うと、信頼性が上がり、トラックサイドのエンジニアがトラブルシューティングではなく、パフォーマンスをどう上げるかに集中できたので、これまでとは違う、前向きでレースに必要な攻めという点で、今年はいいステップを踏めたと思っています」
本橋正充の印象に強く残るのは、シーズン序盤の流れの中で、みんなが前向きになれたことだったと言う。
「(第2戦の)バーレーンでいい結果を残したあと、いったん状況が悪くなり、成績が落ち込みました。バーレーンの結果から、マシンにもPUにもポテンシャルはあるとみんなが感じていて、これなら戦えると確認できたあとにあれだけ落ち込んだわけで、『じゃあ、どうやって回復しようか』ということで『よし、がんばるぞ』という方向に転じられたのは、ある意味よかったことでしたね」
「そのあとのアゼルバイジャンで、我々としては大きな失敗をしたのですが、今思えばその失敗が大きな成長につながったと感じています。当時は結果が出ないことで、ちょっと迷走した部分もあったのですが、その試行錯誤によって見出せたものはあったので、振り返れば、あの序盤の流れが我々にとってとてもいい経験になり、さらにいろいろ技術的にも気持ち的にも『やれるんだから、やろうぜ』みたいな前向きな感じになっていきました。そういう面で、あのころがターニングポイントだったように感じます」
全21戦の長い戦いの中で、本橋正充が一番うれしかった体験は日本グランプリだったと言う。
「個人的には、やはり鈴鹿でファンの皆さんの応援を感じたことが、一番うれしかったです。鈴鹿で、やはりファンの皆さんあっての僕らなんだということと、昨年までの鈴鹿の状況と少し変わっていて、お客さんたちが心から応援してくださっているんだということを実感できました」
そして実際の戦いの中では、シーズン終盤の新スペック投入が、本橋正充にとってもう一つのターニングポイントだった。
「技術的な観点では、終盤の数戦で新スペックを入れて、ドライバーにもパフォーマンスの向上を感じてもらえました。あと、トロロッソからも一定の評価をいただき、そして他チームもライバル視してくれる領域に入っていけたかなという実感がありました。もちろん、すべてがうまくいったわけではないですし、まだまだ上を目指さなければいけないのですが、新仕様を入れてからの終盤の数戦は、自分にとってとても楽しかったし、やりがいのあるレースでした」
シーズンが終わったとはいえ、その翌週にはテストがあり、開発の手を緩めることなく来年のテスト、シーズン開幕の準備を進めなければならない。
「週明けにテストがあり、それが終わっても来シーズンの準備に時間の余裕はなく、すでにいろいろなことが始まっています。来季の2チーム供給というのは今回のプロジェクトでは初めてのことなので、信頼性を含めた開発をきちんとやって、設定した目標を達成しないとオペレーションとしてキツくなりますし、もっと広い部分ではロジスティックとかサプライヤーさんとの協力関係とか、さまざまな部分できちんとした対応をして、その確認などをしっかりやらなければなりません。きちんとした方向性で進んでいかないと、レースの結果に響く全領域で厳しい状況になると思います。いろいろなことがすでに進んでいますが、まだこれらの部分もあるので、時間に余裕はありません」と本橋正充は語り、来年に向けての抱負を付け加えた。
「来年は、今年やってきたことを見直し、きちんと修正、反映します。同じ失敗はできないと思うんです。テクニカルサイドもオペレーションサイドも、です。そういう観点では、スタッフはとても引き締まっています。来年に向けては技術的、パフォーマンス的にもHondaとして上り坂の状況だと思っているので、開発側もプッシュしてくれていますし、それをきちんと活かせるようにトラックサイドとしてはがんばらなければいけません。とても楽しみです。開発は常日頃の積み重ねで、その成果の一端が、例えば今シーズン投入した新スペックに成果として現れてきているはずです。開発としても、正しい方向に向かっていると思っています」と力強く語った。
カテゴリー: F1 / ホンダF1
全21戦で争われた2018年シーズンの最終戦。トロロッソ・ホンダは、コンストラクターズチャンピオンシップ8位の奪還を目指し、そしてシーズンの締めくくりにふさわしい戦いにすべく、チーム、ドライバーともに強い意気込みで、アブダビでの戦いに挑んだ。
しかし、2台ともにトラブルやアクシデントにより、満足のいく結果を得ることはできなかった。ピエール・ガスリー車のパワーユニット(PU)に起きた予選でのトラブル、決勝でのオイル漏れに関しては、現在、原因の究明と分析、対策が進められている。ともあれ、全21戦という長いシーズンは、この戦いで幕を降ろした。
「今年から、我々にとって新しいチームとのパートナーシップが始まりました。これまではマクラーレンというイギリスのチーム、今回はトロロッソというイタリアのチームという違いなどもあり、最初は不安もありました」と本橋正充は Honda Racing F1 の公式サイトで振り返る。
「しかし、シーズンが進むにつれて、時間を追うごとにいいコミュニケーションが取れるようになり、トロロッソというチームは一緒に戦う上でとてもいいパートナーだと感じるようになりました。親近感があり、勝ちたいという気持ちのもとでお互いを理解し合い、リスペクトし合うかたちで接してくれるパートナーでした。そういった面で、いいコミュニケーションが取れていますし、新たなチームビルドの1年目という面ではかなりいい成果を上げられたと思っています。レースに向けてのリレーションも、とても成長しました」
「テクニカルな観点で言うと、信頼性が上がり、トラックサイドのエンジニアがトラブルシューティングではなく、パフォーマンスをどう上げるかに集中できたので、これまでとは違う、前向きでレースに必要な攻めという点で、今年はいいステップを踏めたと思っています」
本橋正充の印象に強く残るのは、シーズン序盤の流れの中で、みんなが前向きになれたことだったと言う。
「(第2戦の)バーレーンでいい結果を残したあと、いったん状況が悪くなり、成績が落ち込みました。バーレーンの結果から、マシンにもPUにもポテンシャルはあるとみんなが感じていて、これなら戦えると確認できたあとにあれだけ落ち込んだわけで、『じゃあ、どうやって回復しようか』ということで『よし、がんばるぞ』という方向に転じられたのは、ある意味よかったことでしたね」
「そのあとのアゼルバイジャンで、我々としては大きな失敗をしたのですが、今思えばその失敗が大きな成長につながったと感じています。当時は結果が出ないことで、ちょっと迷走した部分もあったのですが、その試行錯誤によって見出せたものはあったので、振り返れば、あの序盤の流れが我々にとってとてもいい経験になり、さらにいろいろ技術的にも気持ち的にも『やれるんだから、やろうぜ』みたいな前向きな感じになっていきました。そういう面で、あのころがターニングポイントだったように感じます」
全21戦の長い戦いの中で、本橋正充が一番うれしかった体験は日本グランプリだったと言う。
「個人的には、やはり鈴鹿でファンの皆さんの応援を感じたことが、一番うれしかったです。鈴鹿で、やはりファンの皆さんあっての僕らなんだということと、昨年までの鈴鹿の状況と少し変わっていて、お客さんたちが心から応援してくださっているんだということを実感できました」
そして実際の戦いの中では、シーズン終盤の新スペック投入が、本橋正充にとってもう一つのターニングポイントだった。
「技術的な観点では、終盤の数戦で新スペックを入れて、ドライバーにもパフォーマンスの向上を感じてもらえました。あと、トロロッソからも一定の評価をいただき、そして他チームもライバル視してくれる領域に入っていけたかなという実感がありました。もちろん、すべてがうまくいったわけではないですし、まだまだ上を目指さなければいけないのですが、新仕様を入れてからの終盤の数戦は、自分にとってとても楽しかったし、やりがいのあるレースでした」
シーズンが終わったとはいえ、その翌週にはテストがあり、開発の手を緩めることなく来年のテスト、シーズン開幕の準備を進めなければならない。
「週明けにテストがあり、それが終わっても来シーズンの準備に時間の余裕はなく、すでにいろいろなことが始まっています。来季の2チーム供給というのは今回のプロジェクトでは初めてのことなので、信頼性を含めた開発をきちんとやって、設定した目標を達成しないとオペレーションとしてキツくなりますし、もっと広い部分ではロジスティックとかサプライヤーさんとの協力関係とか、さまざまな部分できちんとした対応をして、その確認などをしっかりやらなければなりません。きちんとした方向性で進んでいかないと、レースの結果に響く全領域で厳しい状況になると思います。いろいろなことがすでに進んでいますが、まだこれらの部分もあるので、時間に余裕はありません」と本橋正充は語り、来年に向けての抱負を付け加えた。
「来年は、今年やってきたことを見直し、きちんと修正、反映します。同じ失敗はできないと思うんです。テクニカルサイドもオペレーションサイドも、です。そういう観点では、スタッフはとても引き締まっています。来年に向けては技術的、パフォーマンス的にもHondaとして上り坂の状況だと思っているので、開発側もプッシュしてくれていますし、それをきちんと活かせるようにトラックサイドとしてはがんばらなければいけません。とても楽しみです。開発は常日頃の積み重ねで、その成果の一端が、例えば今シーズン投入した新スペックに成果として現れてきているはずです。開発としても、正しい方向に向かっていると思っています」と力強く語った。
カテゴリー: F1 / ホンダF1