小松礼雄 子供に歌を禁じられたハースF1チーム代表の素顔
2025年シーズンが進む中、ハースF1チーム代表の小松礼雄が「Getting to Know」シリーズの質問に答えた。

少年時代に日本からイギリスへと渡った経験、登山への愛情、忘れがたい旅の思い出、さらには子供たちに歌を禁じられたエピソードまで、その素顔がで明かされている。

自分を3つの言葉で表すなら?

うーん…「まあまあ粘り強い」、「公正」、「透明性がある」でしょうか。

F1に恋したきっかけは?

正直なところ、1980年代後半にテレビで観たセナ対プロストの激闘とドラマですね。自分はもともと国際的な仕事がしたいと思っていたので、F1を見たときに「これこそ自分のやりたいことだ」と思ったんです。

初めて何かを運転したのはいつ、どこで?運転免許は何回で取得?

(笑)イギリスに来るまでは車の免許を持っていませんでした。なので初めて車を運転したのは、18歳でコヴェントリーの教習中でした。免許取得には2回かかりましたね。

小松礼雄 ハースF1チーム小松礼雄は2024年シーズン開幕前にギュンター・シュタイナーの後任としてハースF1代表に就任した

コヴェントリーといえば…コヴェントリー・シティのファンなんですよね?

以前はラグビーをやっていて、コヴェントリーの地元クラブでプレーしていたんですが、チームメイト全員がコヴェントリー・シティのサポーターだったんです。当時はサッカーに詳しくなかったので、「じゃあ自分も応援しようかな」と思って。それでどんどんハマっていきました。

最後に涙が出るほど笑ったのはいつ?

前のチーム(ルノー/ロータス)にいたときです。冗談が絶えない雰囲気で楽しかったですね。でも、その後は会社がよりプロフェッショナルでコーポレートな感じになって、そういうノリは少なくなってしまいました。ここではあまり話せない内容かもしれません(笑)。

パドック内で一番仲の良い友人は?

難しいですね。この仕事を20年やっていて、ハースにも10年、前のチームにもほぼ10年いましたから。たくさんの仲間がいて、一人だけは選べません。

小松礼雄 ハース F1小松礼雄はルノー/ロータスでキャリアを積み上げ、のちにハースへと移籍した

F1関係者でディナーパーティーに招待したい3人は?

まずはジェームス・アリソン。前のチームでテクニカルディレクターを務めていて、技術者としてだけでなく人としても素晴らしい方で、本当に尊敬しています。それからロマン・グロージャン。彼のマシンを何年も担当しましたし、彼のF1レースにはすべて一緒に出ていると思います。それぐらいよく知っています。

一番良かった休暇は?

難しいですね…山が好きなので、山で過ごす休暇はどれも素晴らしいです。でも一度、クリスマスに日本の南にある沖縄に行ったことがあって、それが特に印象に残っています。海が本当にきれいで、食べ物も美味しくて、人も温かい。クリスマスイブに海で泳いだんですよ。あれが一番かもしれません。

小松礼雄 F1 ハース小松礼雄はグロージャンのレースエンジニアとして強い信頼関係を築いた

登山への興味はどこから?

父の影響です。父は本格的な登山家で、子供の頃はよく一緒に山に登っていました。長いこと離れていましたが、コロナ禍でオーストリアのレース間に近くの山を歩いたときに、再びその情熱が戻ってきたんです。今はあまり時間が取れませんが、スコットランドや北ウェールズに子供と一緒に行ったりしています。

F1の歴史上で好きなチーム代表は?

初めてレースチームに加わったとき(ルノー)は、フラビオ・ブリアトーレが代表で、パット・シモンズがエンジニアリングディレクターでした。あのチームで自分の基礎を学んだので、今でも心に残る存在です。

F1チーム代表だけでレースをしたら、誰が勝つと思いますか?

クリスチャン(ホーナー)もトト(ヴォルフ)も元レーシングドライバーですから、そういった経験者が勝つと思います。

あなた自身は?

私は元レーシングドライバーではないんです。カートに初めて乗ったのも、ラフバラ大学で博士課程をしていたときでした。父は車すら持っていなかったし、家も裕福ではなかったので、モータースポーツはまったく縁がなかったんです。だから勝てないでしょうね(笑)。

それでも挑戦はしたい?

もちろんです!カートも大好きですし、遊びで走るのは楽しい。でもあまり速くはなくて、動きがちょっと荒いんですよ(笑)。

小松礼雄 F1 ハースF1チーム小松礼雄は機会があれば山へ出かけ、心身をリフレッシュする

F1は旅が多いですが、最悪の旅行体験は?

幸いなことにパスポートをなくしたことはありません。でも、F1とは関係ない時に、フライトの時間を完全に勘違いしていて、空港に着いたときにはもう15分前に飛行機が出てしまっていたということがありました。あれはきつかったですね。

何カ国語を話せますか?他に学びたい言語は?

今は英語と日本語を話します。現在はイタリア語を勉強中です。フェラーリと10年間一緒に仕事してきたので、本来ならもう話せていなきゃいけないんですけど…正直、ちょっと恥ずかしいです。

カラオケで歌うとしたら、どんな曲を?

いや、それは絶対にダメですね(笑)。音痴すぎて。家で口笛を吹いただけでも、子供たちから禁止されましたからね。

禁止って本当に?

はい。歌も口笛もダメ。音痴すぎるって(笑)。だからカラオケは完全にNGです。

ハースF1チーム 小松礼雄小松礼雄はマイアミでロック界のレジェンド、ジョン・ボン・ジョヴィと対面したが、歌はご法度

ファンからもらった中で、一番変わったプレゼントは?

変わったというより、日本のファンはとても丁寧なんですよ。例えばKitKatを大量に買って、包装を各チームメンバー用にカスタマイズしてくれたりします。ドライバーだけじゃなく、エンジニアやメカニック、トラックスタッフまで含めて。本当にありがたいです。

鈴鹿での応援はいつも感動的ですよね?

はい。みなさんすごく手間をかけてくれていて、本当にありがたいです。あれを見ると、みんな元気になります。

これまでで一番良かったアドバイスは?

子供の頃、「F1の仕事をしたい」と言ったら、親以外の全員から「そんなバカな夢を」と言われました。でも、親だけは「やりたいならやりなさい、全力で頑張ればいい」と言ってくれました。それが一番心に残っているアドバイスですね。

1日だけ別の職業を体験できるとしたら?

プロの登山家かクライマーになってみたいです。

(photo) 小松は日本に帰るたび、ファンの応援に感謝しているという

宇宙飛行士や戦闘機パイロットという答えもありましたが、あなたは登山?

はい。たとえばパタゴニアのセロ・トーレのような、ものすごく困難な山に登ってみたいです。

F1で一番誇らしい瞬間は?

20年この世界にいるので、たくさんあります。でも、レースや予選の後に、ガレージでみんなが本当に嬉しそうにしているのを見ると、「チームとしてうまくやれたな」と実感できて、それが何よりも誇らしい瞬間です。

5年後、どうなっていたいですか?

今のチームで成功を収めたいです。このチームには大きな可能性があると信じていますし、まだ本当の意味でのスタート地点に立ったばかりです。5年後には、常に競争力のあるチームとして確立されていたいですね。

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カテゴリー: F1 / ハースF1チーム