ガブリエル・ボルトレト 母国F1ブラジルGPは「狂気のような週末になる」
キック・ザウバーのガブリエル・ボルトレトがF1.comのアラスデア・フーパーとのインタビューに応じ、F1ルーキーイヤーで得た教訓、学んだこと、そして母国ブラジルGPを目前にした心境を語った。

1年前、キック・ザウバーはガブリエル・ボルトレトの契約を発表した。当時まだ若きブラジル人はF3チャンピオンであり、F2タイトルを争いながら2024年のサンパウロGP週末にはマクラーレンのアカデミードライバーとしてF1パドック内で活動していた。

それから12か月後、すべてが変わった。21歳の彼はF2タイトルを獲得し(F3とF2の連続タイトルはオスカー・ピアストリに並ぶ快挙)、今やF1ドライバーとして初の母国グランプリを迎えようとしている。

チーム代表のジョナサン・ウィートリーも彼を絶賛しており、「本物の逸材(the real deal)」と評している。ウィートリーはこれまでにも数多くのF1スターたちと仕事をしてきた人物だ。

シーズンを通して印象的な結果も残してきた。中でもハンガリーGPでの6位フィニッシュが際立つほか、オーストリアとモンツァでも8位を記録。3戦連続でトップ10を逃した後、直近のメキシコシティGPでは再びポイント圏に復帰した。

「F1に加入できたことは、僕のキャリアにおける大きな達成だった」とボルトレトは語る。「もうすぐサウバー加入が発表されてから1年になるなんて信じられないよ。僕がレースを始めたときからの夢だったし、今こうしてF1にいるのは本当に素晴らしい気分だね」

「今季はとても長いシーズンだった。多くのレース、多くの学び、そしてチームと過ごした時間もたくさんあった。でも本当に素晴らしいと感じているよ」

ウィートリーが語る意外な成長領域「週末への慣れ」
今季第21戦のサンパウロGPを前に、ボルトレトはF1ルーキーイヤーの終盤を迎えている。学ぶことは多かったようだ。

「F1でのメディア対応の多さは信じられないほどだね!」と彼は笑う。「週の中でやるべきこと、出席しなければならないイベント、ミーティングが本当に多い。エネルギーを維持するのが大変なんだ」

「だからよりプロフェッショナルであることが求められるし、適応しなければならない」

F1ではオフ・トラックでも適応力が試される。だがボルトレトには素晴らしいメンターたちがいる。4度のワールドチャンピオン、マックス・フェルスタッペン(シムレース仲間)と、2度の王者フェルナンド・アロンソ(マネジメント契約を結んでいる)だ。

「彼らが週末以外の時間をどう過ごすかを見ると、家でリラックスしてエネルギーを回復しているんだ。そして次の週末には準備万端で臨む。僕も彼らのそういう部分を見て学んだ」とボルトレトは語る。

「今でも改善の余地はあると感じているけど、週末の入り方はずっと慣れてきた。以前は木曜や水曜から全力を出しすぎて、プラクティス前に疲れていたけど、今は日曜でもしっかりエネルギーを保てるようになったんだ」

「すべてを証明しようと“全開で臨みたくなる”のは簡単なことだけど、時には“やりすぎないこと”も大切なんだ。努力の量よりも質と理解を重視するようになったね」

「F1が最優先」それでも私生活も大切に
ボルトレトは努力家として知られており、『Beyond The Grid』ポッドキャストではグランプリを終えた直後に自宅のシミュレーターに座ることを明かしている。

「レース直後は記憶が鮮明だからね」と笑う彼は、「僕のプライベートな楽しみは家に帰ってシムを走ること。友人と一緒にドライブしたり、いろんなクルマを試したりするのが好きなんだ」と語った。

「F1から少し離れながらも好きなことをしてエネルギーを充電できる。僕にとってこれがバランスの取り方なんだ」

「もちろんF1が最優先で、人生をかけて取り組んでいる。でも家族や恋人、友人と過ごす時間も大切。両方をしっかり両立させているよ」

「彼らは最初から僕を信じてくれた」ザウバーの信頼
キック・ザウバーは2024年に苦しいシーズンを過ごした。チーム唯一のポイントは周冠宇のカタールGP4点のみ。2025年はボルトレトとニコ・ヒュルケンベルグの新ラインナップで臨んだが、当初の期待値は低かった。

しかし今季のチームは確実に進歩している。コンストラクターズ選手権9位ながら、ポイントは昨季の4点から60点へと大幅増。6位レーシングブルズとも12点差に迫る。

「シーズン序盤は苦しかったけど、いまではポイント争いができている。チームがどれだけ努力しているかを間近で見ているから、本当にうれしい」とボルトレトは言う。

「僕の実力を信じてくれていたからこそプレッシャーは感じなかった。でも自分自身に課したプレッシャーは大きかった。チームのために結果を出したかったんだ」

ガブルエル・ボルトレト(ザウバー) F1 ブラジルグランプリ

F2・F3での経験、そして“シューマッハの道”に学ぶ
ボルトレトがF1への順応が早い理由の一つは、F3とF2で連続タイトルを獲得した経験にある。

「F2とF3でタイトルを争った2年間は、最大のプレッシャーを感じた」と彼は振り返る。「結果を出せなければ翌年のシートを失う可能性がある。だから毎戦が勝負だった。その経験が今に生きている」

今季のF1ではタイトル争いとは無縁だが、彼の視線はすでにアウディとの未来へ向いている。

「昨日またシューマッハのNetflixシリーズを観たんだ。彼がフェラーリに加入してからチームを作り上げ、タイトルを獲得するまでの過程を見ると本当に刺激を受ける」と語る。

「僕もアウディのプロジェクトの一員として、その過程を歩みたい。彼のようにチームを成長させてタイトルを獲る。それが目標だし、そのために毎日全力を尽くしている」

「サウバーは僕にとって単なるチーム以上の存在だ。サポートしてくれる仲間たちのエネルギーが本当に素晴らしくて、初年度にここにいられるのは幸運だと思う」

「狂気のような週末になる」母国ブラジルGPへ
次戦サンパウロGPは、ボルトレトにとってF1初の母国レースとなる。ブラジルは8つのF1タイトルを誇る3人のワールドチャンピオンを生み出してきたが、フェリペ・マッサが引退して以降、現役ブラジル人ドライバーは不在だった。ボルトレトの登場がその空白を終わらせた。

「きっと狂気のような週末になるよ。ブラジル人は最高だ」とボルトレトは笑う。

「母国の人たちと同じ気持ちを共有できるのが楽しみなんだ。ファンと一緒にあの雰囲気を感じたい」

メルセデスの新人アンドレア・キミ・アントネッリが初の母国GP(イモラ)で苦戦したことを踏まえ、どう臨むかを問われると、彼は冷静に答えた。

「もちろんベストを尽くすよ。ファンは僕に多くを期待するだろうし、それは当然のこと。彼らが期待してくれるというのは、僕がそれを成し遂げられると信じてくれているからだ。だから僕も全力でその期待に応える」

「セナは僕の最大のアイドル」
サンパウロ出身のボルトレトにとって、アイルトン・セナは永遠のヒーローだ。彼はセナと同じカラーリングのヘルメットを着用している。

「セナは僕の最大のアイドルだ。彼が亡くなってから何年経っても、いまだに人々を鼓舞している。僕も彼のようにF1で成功し、同時に祖国ブラジルの人々に誇りを与えられる存在になりたい」

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カテゴリー: F1 / ガブリエル・ボルトレト / F1ブラジルGP / ザウバーF1チーム