FIAが予選の“危険な電力トリック”を封じる 2026年F1の抜け穴対策を即断

この手法によるタイム上の利得はわずかでも、予選ではコンマ数秒が結果を左右する。その一方で、アタック後にマシンの速度が急激に落ち、大きな速度差を生む危険性も露呈した。
2026年F1マシンのエネルギー依存が強い特性を踏まえれば、FIAが短期間で介入したのは当然の流れだと言える。
メルセデスとレッドブルが使っていたとされる抜け穴
4月上旬の報道で明らかになったのは、複数チームが電力デプロイの使い方を極端に攻めていたという実態だった。『Auto Motor und Sport』や『La Gazzetta dello Sport』によると、メルセデスとレッドブルは2026年F1のエネルギーマネジメント規則にある抜け穴を突いていたという。
問題となったのは、電気エネルギーをラップ終盤まで最大限に使い切り、その後に突然カットオフを発生させるような運用だ。これによりマシンの挙動が不安定になり、さらにMGU-Kシステムには60秒間のロックアウトが発生するとされた。
本来は保護機能だった“緊急モード”の流用
『Auto Motor und Sport』によると、この“危険な”手法では、本来ハードウェア保護のために用意されていた内蔵の「緊急モード」を作動させていたという。
この機能を使うことで、バッテリー残量の低下に応じて出力を50kW刻みで段階的に下げていくべき制御を事実上回避できた。つまり、通常なら徐々に落ちていくはずの電力を、最後の瞬間まで最大のまま引き出せる余地があったことになる。
この利点について『f1-insider.com』は、「フィニッシュラインまでの最後の数メートルを最大エネルギーで走ることができ、重要なコンマ数秒を稼げる」と伝えた。予選ではそのわずかな差がグリッド順を左右するだけに、チームにとっては見過ごせない武器だった。
問題はタイムではなく安全性だった
ただし、この手法がもたらす影響はラップタイムだけではなかった。
アタックラップ後、MGU-Kが60秒間停止することで、マシンは突然大きく減速する可能性があった。すでに2026年F1マシンはエネルギーマネジメントの特性によって速度差が大きくなりやすいと懸念されており、そこにさらに予測しにくい減速が加われば、後続車との相対速度差は一段と危険なものになる。
今回の件は、単なる“うまい使い方”ではなく、安全性を脅かし得る運用として受け止められたからこそ、FIAが早急に手を打ったと見るべきだ。

FIAは即座に監視強化 乱用にはペナルティ
4月のインターバル期間に入る中で、FIAはこの問題に対して明確な姿勢を示した。
各チームには、緊急モードは本当に技術的な問題が発生した場合に限って使用すべきであり、パフォーマンス目的で使うことは認められないと通達された。今後はテレメトリーが厳しく監視され、不適切な使用があればペナルティが科される見通しだ。
重要なのは、仕組みそのものが完全に違法化されたわけではない点だ。あくまで合法な保護機能としては残されるが、予選タイムを稼ぐための利用は実質的に封じられた。
2026年F1の課題を象徴する一件
今回の措置は、2026年F1レギュレーションが持つ難しさを改めて浮き彫りにした。
チームはルールの範囲内で常に限界を探る。しかし、その最適化が安全性と衝突したとき、FIAは線引きを迫られる。今回の“電力トリック”封じは、まさにその典型例だった。
予選での数百分の1秒を争う攻防の裏で、マシンの速度差や挙動の予測不能性が拡大していた以上、この問題は放置できなかった。2026年F1のエネルギーマネジメントを巡る議論は今後も続くが、FIAは少なくともひとつの危険な抜け穴について、早い段階で明
確に境界線を引いた。
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