F1抗議乱用対策にテニス方式導入を検討 レッドブルのラッセル抗議きっかけ

モントリオールでは、レッドブルがレース終了後に2件の抗議を提出。1件目はセーフティカー中の「不規則なドライビング」、2件目はマックス・フェルスタッペンが一時的にラッセルを追い越した件について、ラッセルの無線コメントが「スポーツマンらしからぬ行為」にあたるとするものだった。
2件目の抗議はすぐに撤回されたが、1件目はレースから約2時間後に正式に提出され、最終的にFIAが棄却を決定するまでに5時間を要した。これにより、正式なレース結果の確定も大幅に遅れる事態となった。
レッドブルは今季これが2度目のラッセルへの抗議で、前回はマイアミGPでイエローフラッグ中に十分減速しなかった疑いで訴えたが、こちらも却下されている。
こうした動きに対して、レッドブル代表のクリスチャン・ホーナーは「正当な理由があると考えた上での抗議だ」と主張。一方でメルセデス側は不満を募らせており、チーム代表のトト・ヴォルフは以下のようにコメントしている。
「抗議する権利があるのは当然だ。我々はレースやタイトルを争っている。もし何かがおかしいと感じたなら、抗議すべきだ。ただし、中には“それはさすがに無理があるだろう”というケースもある」

ヴォルフによれば、FIA(国際自動車連盟)は現在、抗議をより慎重な判断に委ねるための制度改革を検討しているという。現行制度では抗議に必要なデポジット(保証金)はわずか2000ユーロであり、巨額の予算を持つF1チームにとってはほとんど抑止力になっていない。
「罰金を好む者はいないが、こういうケースではもっと高額にすべきだ。FIA会長のモハメド・ビン・スライエムもその方向で検討している。仮に抗議が棄却されたときに、無駄な出費が恥ずかしいと思えるくらいの金額にすれば、次はもっと慎重になるだろう」
FIAとF1の関係筋によると、現在いくつかの代替案が検討されており、保証金の増額に加え、テニスの「チャレンジ制度」に似た仕組みの導入も候補に挙がっている。テニスでは選手が1セットあたりのチャレンジ回数に制限があるように、F1でもシーズン中の抗議回数に上限を設けることで、チーム側に慎重な判断を促す狙いだ。
ただし、他の関係者の中には「現行制度で十分」とする声もあり、抗議の自由は競技者の重要な権利であるとする意見も根強い。現在は抗議件数こそ少ないものの、2026年に予定されている新レギュレーション導入によって、抗議の対象となる事案が増える可能性があるとも指摘されている。
この問題は、次回7月22日に開催予定のF1コミッション会議で議題として取り上げられる見通しだ。ちょうどF1ベルギーGPの直前にあたる。
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