FIAがF1ドライバーの暴言罰則を見直し 初犯・情状酌量を考慮
FIA(国際自動車連盟)は、国際モータースポーツ競技規則の付則Bを改訂し、F1ドライバーの暴言などの行為に対する罰金を引き下げたほか、初犯に対する執行猶予や情状酌量の考慮などの新たな仕組みを導入した。

今年1月、FIAはドライバーの不適切行為に関する一連のスチュワード指針を付則Bに盛り込んだ。これには「侮辱的、下品、粗野、無礼または攻撃的な言葉遣いやジェスチャー、表現」の使用、FIA職員への暴行、およびその扇動行為などが含まれている。

しかし、2月のWRC(世界ラリー選手権)ラリー・スウェーデンでフランス人ドライバーのエイドリアン・フルモーがインタビュー中に放った一言により罰金を科せられたことを発端に、この規定には複数のカテゴリーから不満の声が上がっていた。特に、「違反と見なされる表現」の明確な基準がないことが問題視されていた。

例えば、フォーミュラEのダン・ティクタムがジェッダE-Prixのレース中に乱暴な無線交信を行ったにもかかわらず処罰されなかったことが、こうした不公平感を助長した。

FIA F1ダン・ティクタム

今回の見直しは、昨年のF1シンガポールGPの記者会見でマックス・フェルスタッペンが暴言を口にしたことが発端だったとされている。その後、フェルスタッペンはFIA主催のメディア対応で発言を最小限にとどめる姿勢を見せていた。

FIAは今回の改訂で、不適切行為に対する基本罰金を1万ユーロから5000ユーロへと半減。さらにFIA世界選手権では、従来の「乗数方式」で加算されていた罰金が、これまで以上に大幅に軽減されることが明らかにされた。

また、スチュワードには初回の違反者に対する罰則の執行猶予を適用する裁量が与えられるほか、どのセッションでの発言や行動が処罰対象となるかも明確にされた。

改訂された付則Bでは、「統制された環境」と「非統制環境」の区別が導入された。前者には記者会見などが含まれ、より厳しく判断される。一方、走行中に発したコメントなどは非統制環境と見なされ、処罰対象となりにくいとされている。

また、各レースにおいてスチュワードは、情状酌量すべき事情を考慮することが求められるという。

FIA会長モハメド・ビン・スライエムは、次のように述べた。

国際自動車連盟 F1FIA会長モハメド・ビン・スライエム

「私自身も元ラリードライバーとして、競技中にさまざまな感情が入り交じることを身をもって知っている。

私は、7つのFIA世界選手権すべて、FIA加盟クラブ、そして他のモータースポーツ団体からの意見を反映しながら、広範で協調的な見直しを主導してきた。

今回の付則Bの改訂によって、モータースポーツにおけるスポーツマンシップの精神をより強く推進できると同時に、競技の品位を損なうような行為に対して、スチュワードが的確に対処するためのガイドラインも整備されることになる。

FIAは、今後もすべての人々に開かれたモータースポーツを目指して尽力していく」

さらに、FIA職員への暴言・暴力については今後、金銭罰ではなく「スポーティングペナルティ(競技上の罰則)」が科される。また、あらゆる人種差別的あるいは差別的な言動については、特に厳しく判断されることになる。

F1スチュワード委員長のギャリー・コンリーも今回の見直しを歓迎し、今後もスチュワードの裁量権は保持されるべきだと述べている。

「今回の改訂によって、スチュワードはオン・トラックとオフ・トラックの問題を区別するための明確な指針を持つことになる。

私は、特定の状況に応じて情状酌量を考慮し、公平な処分を下すためにスチュワードが引き続き裁量を行使できることを嬉しく思っている。

こうした変化によって、あらゆる年齢層のファンがモータースポーツを楽しむことができ、世界的な普及に向けた我々の努力も継続していけるだろう」

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カテゴリー: F1 / FIA(国際自動車連盟)