F1エンジン勢力図に異変?メルセデス優位崩れる可能性 ADUOの盲点
2026年F1シーズンのパワーユニット開発を巡るADUO(追加開発機会)について、メルセデスF1代表トト・ヴォルフが「問題は1社だけ」と発言し、制度運用を巡る駆け引きが一気に表面化した。

この発言は、ホンダへの限定的支援を示唆する一方で、他メーカーへの開発機会拡大を牽制する狙いを含んでいるとみられる。


だが、この議論の裏側では、そもそも“どのエンジンが基準になるのか”という根本的な問題が残されている。評価の仕組み次第では、現在の勢力図そのものが覆る可能性がある。

ADUOの評価が勢力図を決める
ADUOは、一定の性能差が認められたメーカーに対して開発機会を与える制度だ。

基準となるエンジンに対して2%以上遅れていれば1回、4%以上であれば複数回のアップグレードが許可される。

一見すると単純な救済措置だが、どのエンジンが“基準”とされるかによって、誰が支援を受けるのかが大きく変わる。

つまりADUOは単なる救済制度ではなく、勢力図を再構築する装置として機能する可能性を持っている。

評価対象はICE単体という盲点
今回の評価で対象となるのは、パワーユニット全体ではなく内燃機関(ICE)のみだ。

エネルギー回生、デプロイメント、バッテリー性能、MGU-K制御といった要素は評価対象外となる。

そのため、実際のラップタイムや最高速とは異なる評価結果が導かれる可能性がある。

この“ICE単体評価”こそが最大の盲点だ。

実戦で速いパッケージが、必ずしもADUO上で優れているとは限らない構造になっている。

フェラーリの主張と“見かけの差”
フェラーリは、自らが基準に対して遅れているとの認識を示している。

フレデリック・バスールは「ADUOの導入は、我々が差を縮める機会になる」と語り、さらに「パワー依存区間ではメルセデスに対してコンマ8秒ほど遅れている」と具体的に言及している。

ただし、この差は単純な性能不足ではなく設計思想による影響も大きい。

排気系の背圧増加はダウンフォース生成と引き換えに出力損失を招き、小型ターボの採用はドライバビリティ向上と引き換えにピーク出力を抑える。

さらに高温でのブースト運用はパッケージングに利点をもたらす一方で、熱効率では不利となる。

これらはすべてマシン全体のパフォーマンスを優先した結果であり、ICE単体評価では不利に働く。

フォーミュラ1エンジン

“本当に遅れているのか”という問題
こうした背景から、フェラーリの遅れが“本質的な性能差”なのか、それとも設計選択によるものなのかという論点が浮上している。

もし後者であれば、ADUOによる支援は本来の趣旨から外れる可能性もある。

この点こそが、ヴォルフが「支援は1社に限るべき」と主張する根拠の一つと考えられる。

メルセデスが基準でなくなる可能性
現時点ではメルセデスが最も優れたエンジンを持つとの見方が一般的だ。

しかし、ICE単体という評価軸では別の結果になる可能性も指摘されている。

一部では、レッドブルのエンジンがICE性能では最も優れているとの見方もある。

ローラン・メキースは「他チームと比較して自分たちの出力を正確に把握するのは非常に難しい」としつつも、「我々としてはメルセデスが先行していると考えている」と語っている。

この“認識のズレ”こそが、現在のADUO議論の核心だ。

制度が生む戦略と駆け引き
評価基準が不透明であることは、新たな戦略的要素も生み出している。

意図的に出力を抑え、基準より遅れていると判断されることで開発機会を得る、いわゆる“サンドバッギング”の可能性だ。

一方で、優位なメーカーが出力を調整し、他チームへの支援を防ぐという動きも考えられる。

ヴォルフが警戒する「ゲームマンシップ」は、まさにこの構造から生まれる。

FIAによる最終評価はマイアミGP後に行われる予定だが、その結果は単なる順位付けでは終わらない。

どのエンジンが基準とされ、誰に開発機会が与えられるのか。

その判断ひとつで、2026年F1の勢力図は大きく書き換えられる可能性がある。

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / F1マシン