F1カナダGP 技術アップデート一覧:マクラーレンの“マーメイドテール”が話題
F1第10戦カナダGPを迎え、各チームがサーキット・ジル・ヴィルヌーヴの特性に合わせた技術アップデートを投入した。フロントウイングやブレーキ冷却、フロアエッジといった主要エアロパーツを中心に、マシン性能の最適化を図る動きが見られた。

特に目を引くのは、マクラーレン。新たに改良を加えた「マーメイドテール(人魚の尾)」型のフロントウイングエンドプレートをMCL39に投入した。これはレッドブルF1とフェラーリがアップグレードを持ち込まなかった週末において、特に注目すべき開発といえる。

この新型フロントウイングは、空力性能の向上と気流の最適化を目的としており、同時にフロントサスペンションにも小規模な修正が加えられている。また、中程度のダウンフォース仕様の新型リアウイングも今大会専用に投入された。

アップグレードを投入したもうひとつのトップチームはメルセデス。8度のコンストラクターズ王者は、W16に対してカナダ特有の強いブレーキングゾーンに対応するフロントコーナーの改良と、新設計のフロアエッジを追加している。

このフロアエッジのアップデートには、「フラップのコード長を短縮し、ベーンを調整。これにより前方フロア下部への質量流量と、フェンスシステムから放出される渦度が増加し、フロア全体のダウンフォースが向上する」という効果が見込まれている。

中団勢では、アストンマーティンがブレーキング性能強化のため、出口面積の大きい新型フロントウイングダクトをAMR25に導入。一方、アルピーヌはピエール・ガスリーとフランコ・コラピントのマシンに対し、前翼フラップの再設計と短縮を施し、モントリオール特有の空力ニーズに対応している。

ハース、ウィリアムズ、ステークの3チームは、FIA提出のアップグレード公開資料に変更点を申告していないが、レーシングブルズはサーキット特化型のアップデート1件と性能向上型のアップデート1件を届け出ている。

アルピーヌと同様に、レーシングブルズも前翼フラップのコード長を短縮し、低ダウンフォース時のバランス向上を狙う。加えて、リアコーナーのロアウイングレットエンドプレートの形状を変更することで、タイヤとディフューザー周辺の気流をより適切に制御し、リアダウンフォースの増加が見込まれている。

■ マクラーレン:流線型フロントウイングに“マーメイドテール”導入
マクラーレンはカナダGPに向けて3つのアップデートを投入。特に注目されるのは、流れの制御性能を高めるために再設計されたフロントウイングで、エンドプレートには“マーメイドテール”と呼ばれる新形状が採用された。これにより広範な姿勢変化に対応した空力性能の向上が見込まれる。

加えて、中程度のダウンフォース仕様のリアウイングも更新され、より幅広いドラッグレンジへの対応力を高めた。さらに、フロントサスペンションの形状も微調整され、局所的な空力流れの最適化に貢献している。
カナダGP F1 マクラーレン

■ メルセデス:フロアに2つの改良、冷却とダウンフォースを強化
メルセデスは、カナダの特性に合わせた2つのアップデートをフロア周辺に施した。ひとつは大きくなったフロントブレーキダクトの吸排気口で、高負荷のブレーキ条件に対応する冷却性能の向上が狙いだ。

もうひとつは、フロアエッジのウイングエレメントを短くし、バン構造の整流板を再調整した新設計。これにより、床下への質量流量が増加し、フェンスシステムから発生する渦の強化によってフロア全体のダウンフォースが増大する。
カナダGP F1 メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

■ アストンマーティン:ブレーキ冷却向上のためにダクト出口を拡大
アストンマーティンは、冷却性能の強化を目的として、フロントブレーキダクトの出口を拡大した新型フロントコーナーを導入。モントリオールではブレーキへの負荷が高く、効率的な冷却が不可欠となる。新たな設計によって空気の流量が増し、熱対策の向上が期待される。
カナダGP F1 アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

■ アルピーヌ:フロントウイング短縮でバランス調整を最適化
アルピーヌF1は、カナダGPに向けてフロントウイングの形状を見直し、フラップを短縮した新仕様を投入した。今回の変更はモントリオール特有のバランスレンジへの対応が主な目的であり、フラップのリプロファイルにより発生するダウンフォースが低減された。これにより、空力バランスの調整幅が拡大し、より細かなセットアップ変更が可能になる。
カナダGP F1 アルピーヌF1チーム

■ レーシングブルズ:バランス調整と後方整流で全体性能を底上げ
レーシングブルズは、フロントウイングとリアコーナーの2点をアップデート。フロントウイングは最後方のフラップ要素を短くすることで、低ダウンフォース仕様に合わせた前後バランスの最適化を実現。これにより、より低いフロント荷重設定が可能になった。

一方、リアコーナーでは、ブレーキドラムのウイングレットの形状を見直し、発生する渦を安定させることで、タイヤ周辺およびディフューザーの空力を改善。結果としてリアのダウンフォースが向上し、マシン全体の一体感が増している。
カナダGP F1 ビザ・キャッシュアップ・RB・フォーミュラワン・チーム

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カテゴリー: F1 / F1カナダGP / F1マシン