ブラウンGP BGP001
ブラウンGPの2009年マシン「BGP001」は、テストデビューで周囲を驚かすパフォーマンスをみせた。

ロス・ブラウンがオーナーとなったブラウンGPだが、チームのスタッフはホンダF1とほとんど変わっていない。BGP001は、事実上ホンダF1が今年参戦させるはずだったマシン「RA109」である。ホンダF1は、2008年シーズンを早々に“諦め”、ロス・ブラウンの指揮の下、シーズン序盤からRA109に開発リソースを集中させてきた。

BGP001は、ホンダF1が15か月前から準備をはじめ、世界最高峰といわれる施設で開発された意欲作であるRA109のエンジンを、グリッドで最も非力と言われたホンダエンジンからチャンピオンエンジンであるメルセデスエンジンに載せかえたマシンということになる。

一見、すっきりとみえるBGP001だが、フロントサスペンションの処理、“雪かき”バージボード、複雑なディフューザなど、詳細にはかなり独自のエアロデザインが採用されている。

フロントノーズは極端に低い位置に設定された。高さはレギュレーションで許される125mm。2009年マシンでは最も低いノーズを採用していることになる。

フロントウイングには独自のエアロコンセプトが注がれている。2枚のフラップを採用するウイングには、外側に複雑な形状の特にカスケード部品が装着される。そして、エンドプレートの処理は他チームと大きく異なる。

2009年のレギュレーションは、2008年の狭いバージョンを使用せず、ウイングの全幅を守るために、エンドプレートの複数のセクションについての最小表面積を規定している。

BGP001:全チーム中、最も低いフロントノーズを採用 BGP001:独自の解釈がみられるフロントウイング

BGP001のフロントウイングは、ウイング先端に垂直フェンスを追加してエンドプレートを構成するのではなく、ウイングプレート自体を伸ばしエンドプレートの底面にし、そこに大きなベーンを追加して、側面の表面積をレギュレーションに適合させている。

エンドプレートをなくすことで、ドラッグを低下させ、ウイング先端の気流を整えることで、幅広となったウイングのマイナス部分を相殺している。

また、フロントウイングを通過する気流を調整するため、フロントサスペンション部にも巧妙な処理が施されている。ステアリングアームの位置をさげ、ロワー・ウィッシュボーンの位置を平行にすることで、合理化を実現。低いウィングからの気流への干渉を避けている。おそらくこのレイアウトを採用するために低いノーズコーンを採用したと考えられる。

シャシー部分には先週ウィリアムズが披露したような“雪かき”ソリーションが採用される。2009年のレギュレーションでは、バージボードが禁止されており、ベーンを設置できる唯一の場所はシャシーの立ち上がり部分の下となる。

このソリーションにより、実質的にBGP001はマシンの両側にバージボードを備えていることになる。またサイドポッド前面にも小型のベーンが装着され、ノーズ下を流れ、スプリッタで左右に分けられた気流をディフューザに効率的に送る。

サイドミラーの取り付け部分にも工夫がみられる。ミラーの取り付け部は、ウイングレットのような形状の2つの部品で構成され、サイドポッド上面を通過する気流を整える機能を備えている。

BGP001:“雪かき”ソリュショーンでディフューザーへの気流をコントロール BGP001:整流効果を狙ったサイドミラーの形状

サイドポッドは非常に小さい。ラジエータの形状はマクラーレンのような同じく高くて幅広いデザイン。下部は深いアンダーカットが施される。

サイドポッドを小型化した要因として、ブラウンGPがKERSを搭載しないことがあげられる。KERSを搭載しないため、エンジンのみを冷却するだけでよく、KERSに必要な追加ハードウェアを冷却する必要はない。そのためラジエータと配管をコンパクト化できる。

サイドポッドは非常に短く、排気口も非常に狭い。エギゾーストはサイドポッドのフェアリングの中から出している。また、ギアボックスフェアリングと、ディフューザーの一部を構成する後部衝突構造の下からも熱い空気を排出しているようだ。

BGP001:サイドポッドの終点 BGP001:ディフューザの形状も凝った造りとなっている

ディフューザーは二層構造を採用。U字型の中心部分はディフューザーを天井部分を構成せず、単純にセットアップの下側を担当。上側は、衝突構造によって構成されており、175mmよりも数cm高くなっている。

リアウイングは、エンドプレートと同様、シンプルな形状。下部のビームウイングはエンドプレート全幅まで広がり、その下を衝突構造が通るようになっている。

土壇場になってエンジン載せ替えが決定したため、メルセデス・エンジンとシャシー、ギアボッスクを統合するのは大きな課題だったと思われる。

これまでのところ、ブラウンGPはKERSの搭載を予定していない。2009年はKERSの搭載が日無ではないので、限られた予算を考えると懸命な考えといえる。KERSを選択しないことで、約30kgのバラストを効率的に配置することになり、重量配分でアドバンテージを得られることになる。

ブラウンGPは、オーストラリアでの開幕戦の前に、ヘレスで3日間のテストを予定している。

主要諸元表:ブラウンGP BGP001

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カテゴリー: F1 / ブラウンGP