アストンマーティンF1 巨額赤字で再編急務 ニューウェイ後任ウィートリー浮上

チームは2026年シーズンの壊滅的な立ち上がりに苦しんでおり、その背景にはホンダとの新パワーユニット体制で噴出した深刻な信頼性問題がある。
一方で、財務面でも2025年に4600万ポンド(約97億5200万円)の損失を計上しており、この赤字がローレンス・ストロール会長の判断に影響を与える要素として注目されている。
アストンマーティンでは2025年11月、エイドリアン・ニューウェイがマネージング・テクニカル・パートナーとしての既存業務に加え、チーム代表の役割も担う体制へ移行した。これはアンディ・コーウェルをホンダとの連携を重視する最高戦略責任者のポジションへ移し、レースチームの指揮をニューウェイに託すための再編だった。
ただ、チーム内ではニューウェイがその役職に向いていないとの見方が強まっているとされる。報道では、ニューウェイによるホンダへの公然とした批判もその一因とされており、ストロール会長は新たなチーム代表の起用を検討しているという。
その最有力候補がジョナサン・ウィートリーだ。ウィートリーは最近までアウディのチーム代表を務めていたが、アウディ側は「個人的理由」によりチームを離れたと認めた。もっとも、2026年シーズン中はガーデニング休暇の対象となり、すぐにアストンマーティンへ合流できない可能性もある。
今回の人事の背景について、GRVメディアのファイナンスおよびガバナンス分野の専門家アダム・ウィリアムズは、競争面だけでなく商業面の事情が色濃く反映されていると分析している。
「アストンマーティンは昨季、売上高2億8100万ポンド(約595億7200万円)に対して4600万ポンド(約97億5200万円)の損失を出した。つまり実質的には、5ポンド稼ぐごとに6ポンド使っているような状況だ」
「これは商業的な投資だ。アストンマーティンは、自らをエリートで格式あるブランドとして売り込み続けたいし、そのロゴを成功と結びつけたい」
「今の彼らはブランド露出、つまり製品に目を向けさせることはできているが、成功と結びついたブランド価値は得られていない。その一方でローレンス・ストロールは資金を失い、彼自身の自尊心も傷ついている」
ウィリアムズはさらに、現体制を引き延ばすよりも、抜本的な立て直しを選ぶ可能性があるとみている。
「もしかすると必要なのは全面的なリセットだ。もちろん、どこかでは安定も必要になる。しかし、うまくいっていない体制、そして今後もうまくいかない体制に、意地になって資金を注ぎ込み続けることほど悪い判断はない」
そのうえで、ジョナサン・ウィートリーの獲得は、対外的にも非常に大きな意味を持つと指摘した。
「アウディ加入からこれほど間もない段階でウィートリーを引き抜ければ、それは明確な意思表示になる」
「スポーツチーム経営の究極の格言は『優秀な人材を雇い、あとは仕事を任せること』だ」
「オーナーの役割は頭脳になることではなく、資金を支えることにある。構造を整え、必要な資源を与える。それこそが、アストンマーティンをスーパー・チームにしたいならストロールが担うべき役割だ」

4600万ポンド赤字の重み
アストンマーティンが抱える損失額は、単なる収支の悪化では片づけられない。ストロール体制下のチームは、トップチーム化に向けて積極投資を続けてきたが、肝心の成績が伴わなければ、その投資はブランド価値の向上ではなく、失望の拡大につながる。
しかも2025年のコンストラクターズ選手権では89ポイントで7位に終わっており、レーシングポイントを2021年にアストンマーティンとして再始動させて以降、最低タイの成績だった。ニューウェイは2025年型マシンへの関与が限定的で、主眼を2026年レギュレーション対応へ置いていたとされるだけに、AMR26への期待は大きかった。
AMR26の失速で問われる体制そのもの
そのAMR26は、ニューウェイ主導で生み出されたマシンと位置づけられていた。ストロール会長はこのマシンによってタイトル争いに加わる青写真を描いていたが、現実にはホンダの信頼性問題によって、アストンマーティンはここまでグランプリ完走すら果たせていない。
しかも議論の中心は車体性能ではなく、パワーユニット由来とされる過度な振動問題に集中している。ニューウェイは開幕前の時点で、この振動がフェルナンド・アロンソの手に深刻な影響を及ぼしかねないと明かしており、問題の深さを印象づけた。
こうした状況では、ニューウェイを技術部門の中核に専念させ、現場統率や政治的調整を担える専任代表を置く発想は自然だ。ジョナサン・ウィートリーの名前が浮上しているのは、その必要性をチーム側も強く感じているからだろう。
アストンマーティンF1にとって今回の人事は、単なる役職交代ではない。ニューウェイ体制をどう機能させるか、ホンダとの新時代をどう立て直すか、そして巨額投資をどう結果へ変えるか。そのすべてが、次の一手にかかっている。
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