アストンマーティン・ホンダF1、タイトル連覇を掲げる“BHAG”構想
2026年からホンダのワークスチームとして新時代に挑むアストンマーティンF1が、明確な目標を掲げた。チーム代表兼CEOのアンディ・コーウェルは、「頂点に立ち、そこに居続ける」というビジョンのもと、“BHAG(Big Hairy Audacious Goal)”としてタイトル連覇を目指すと語った。

エイドリアン・ニューウェイとエンリコ・カルディーレの加入により技術体制を刷新した同チームは、新ファクトリーと風洞設備の完成を経て、本格的な王者プロジェクトを始動。

コーウェルの言葉どおり、アストンマーティン・ホンダF1は“挑戦者”から“王者志向チーム”へと進化を遂げようとしている。

コーウェルが語る“頂点に立ち、そこに居続ける”ビジョン
アストンマーティンF1のアンディ・コーウェルは、将来的に“連続タイトル獲得”というチーム目標を達成できると確信していると語った。「頂点に立ち、そして頂点に居続ける」という明確なビジョンを共有したかたちだ。

かつてレーシングポイントとして戦ってきたチームは2021年にアストンマーティンへと生まれ変わり、その後、体制強化を進めてきた。マネージングテクニカルパートナーのエイドリアン・ニューウェイ、チーフテクニカルオフィサーのエンリコ・カルディーレなど、著名エンジニアが次々と加入。また、シルバーストンの新ファクトリーも稼働し、2025年には新風洞が本格運用を開始している。

アストンマーティンの“BHAG”──ニューウェイ体制で現実味は増すか
コーウェルは2024年10月にCEOとして加入し、2025年1月からチーム代表も兼任。チーム公式YouTubeのインタビューで「大きな、大きなゴール」について語った。

「正直であること、過剰に約束しないこと、そして焦点をひとつに絞ること──それはレースカーだ。すべてはレースカーに帰結する。全員が『そのレースカーのために何をするのか』と考えるべきなんだ」

「大きく、みんなが“不可能だ”と思うような目標を掲げ、それを可能にする。それがチームワークだ。頂点に到達し、そこに居続けるというビジョン。私は“BHAG”と呼んでいる。Big Hairy Audacious Goal(大きく、大胆で、無謀に見える目標)だ」

その“BHAG”とは何かと問われると、コーウェルは明確に答えた。

「複数のタイトルを、連続で獲得することだ」

それは実現すると信じているのかと追及されると、彼は迷いなく言い切った。

「我々はそのために努力している。そう、実現する」

さらに「偉大さとは何か」についても触れた。

「チームワークだ。工学ビジネスとして、チームで働き、レースカーのために尽くすということだ」

成功を急ぎたいスタッフもいるはず、という質問にはこう返した。

「そのハングリーさを持とう。私自身にもそれがある。達成したと感じる日は一日もない」

現在、アストンマーティンはコンストラクターズランキング7番手(69ポイント)。6番手レーシングブルズとはわずか3ポイント差と、ミッドフィールドは混戦となっている。

アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム ホンダF1

アストンマーティンの“連覇宣言”の真意
アストンマーティンは明らかに「トップチーム化の第2フェーズ」に入っている。ニューウェイとカルディーレの獲得、新施設の本格稼働、そしてコーウェルの指揮。単なる上位争いではなく、「王者文化の構築」が合言葉だ。

“BHAG”という表現は、内部マネジメントにおける“文化スローガン”の色合いが強い。ただし、目標を“連覇”と明言した点は、現場とファン双方への強烈なコミットメントでもある。アストンマーティンが中長期的にチャンピオンチームへと変貌するための、方向性の明確化ともいえるだろう。

現実的障壁:2026年PU時代と競合勢力
2026年にホンダとのワークス体制が本格化するものの、その過程には依然として多くの未知数が存在する。新世代パワーユニット(PU)規定の下で性能バランスがどのように変化するのか、レッドブル、メルセデス、フェラーリといったトップ勢との技術競争をどこまで拮抗できるのか、さらに急速な組織拡大に伴うオペレーション面での課題をどう克服するかが大きな焦点となる。コーウェルが掲げる“連覇”のビジョンを現実のものとするには、まず単発的な勝利ではなく、安定して勝利を重ねられる体制づくりが不可欠だ。

評価:野心は本物、時間軸が鍵
アストンマーティンは現在、「挑戦者」から「王者志向チーム」へと明確に進化を遂げつつある。しかし、頂点に到達し、そこに居続けるためには、継続的な技術革新に加え、フェルナンド・アロンソとランス・ストロール以降を見据えたドライバーラインアップの安定、そしてチームマネジメントの成熟が求められる。現時点ではやや強気にも映るコーウェルの発言だが、その裏にはチーム全体の士気を高め、組織をひとつにまとめ上げるための明確なリーダーシップ戦略がある。野心の方向性は正しく、あとはそれを実現へと導く時間軸のマネジメントが問われることになる。

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カテゴリー: F1 / アストンマーティンF1チーム / ホンダF1