アルファタウリF1 「AT03に昨年から引き継がれたパーツは存在しない」
スクーデリア・アルファタウリのテクニカルディレクターを務めるジョディ・エギントンが、2022年F1マシン『AT03』について語った。
アルファタウリF1の2022年F1マシン『AT03』には“昨年から引き継がれたパーツは実質的に存在”と語るジョディ・エギントン。だが、ギアボックスや油圧系、リアサスペンションなどのリアエンドにおいてレッドブル・テクノロジーと協業、パワーユニットも昨年のアップデート版となるホンダ製で、同じホンダのパワーユニット担当チームと作業が行われた。
テクニカルレギュレーションが大幅に変更されましたが、AT03のデザインは白紙から立ち上げられたのでしょうか?
パーツやアセンブリの大部分が新しくなっていますので、昨年から引き継がれたパーツは実質的に存在しません。ですので、全体的にはほぼ白紙から立ち上げられたデザインです。
マシンの設計はいつ始まったのでしょう?
設計の開始時期については若干のずれがあります。というのも、新レギュレーションは当初2021シーズンから導入予定でしたので、私たちはかなり以前から作業を始めていました。
その後、当然ながらパンデミックの影響を受け、2020年中は風洞を使用した開発作業の停止が定められました。設計作業が再開したのは2021年1月1日でした。しかしながら、このタイミングは60%サイズ風洞への移行と重なっており、2022シーズン用マシンの60%モデルの設計と製造を行わなければなりませんでした。同時に、2021シーズンのAT02は50%モデルで開発が進められていたので、AT02の60%モデルも並行して用意しました。2つの風洞を並行して稼働させることは認められていませんので、AT02のシーズン中の開発を進めるために60%モデルへ移行したのです。
当然、作業量は大幅に増えましたが、60%サイズ風洞への移行はかなり前に決定していた戦略プランで、チームの中期目標の達成のために実行する必要がありました。チームスタッフたちは作業量の増加にもスムーズに対応してくれました。私たちはこの決定が中期的な成功をもたらすことに自信があります。
最初のテストを目前に控え、不安と自信のどちらが上回っていますか? それとも、その中間でしょうか?
何回も同じ質問をされていますよ! 私たちは過去2、3年をかけて作業プロセスを向上させているので、今回のマシンにもその影響が出ています。統計的に見ても、また直近のリザルトから見ても、チームは努力に見合った成功を収めているので、正しい方向へ進んでいると言えるでしょう。
とはいえ、あらゆる部分がリセットされる2022シーズンは結果が得られる可能性とリスクが混在しているので、そう簡単にはいきません。マシンの開発スピードが重要な指標になりますが、重要なのは、ライバルと比較して私たちが開発の “どこ” にいるのかです。開幕戦で蓋を開けてみるまではまったく分かりません。
コストキャップ制度が実効性を持つのは2023シーズンまで待たなければなりませんが、すでにビッグチームと対等になってきていると感じていますか?
現在話題になっているフレーズを使うなら、一定の “レベリングアップ”(編注:英国のボリス・ジョンソン首相が国内の地域格差是正のために掲げているスローガン)が期待できると考えています。
各チームの業務にコストキャップ制度が浸透するまではもう少し時間がかかると思いますが、コストキャップ導入前に予算面でビッグチームに差をつけられていたチームは、当然ながらある程度の恩恵が得られるでしょう。それでも、賢く予算を使わなければならないことに変わりありません。
最大のレギュレーション変更はエアロダイナミクス関連で確認できます。形状がよりシンプルになったウイングに重点が置かれ、フロアの重要性が増していますが、各チームが独自のアイディアを持ち込める余地はまだ残っているのでしょうか?
空力レギュレーションの変更は広範ですので、新しいアイディアや空力コンセプトを実験できるスペースはかなりありますが、同時に、新レギュレーションでは開発の方向を間違ってしまうリスクも大きくなっています。
各チームは、イノベーティブな空力ソリューションを考案する余地が十分にあることを理解していますが、今回の新たな空力レギュレーションから何を引き出せるかについては、表に出てこない細部の開発が重要になると予測しています。
最初のテストでは、各チームによる様々なレギュレーションの解釈が見られるでしょう。そのような解釈は議論を呼び起こすはずですが、同時にシーズン中の開発の方向性を考える機会を提供するはずです。
シャシーはレギュレーション変更の影響をどの程度受けているのでしょう?
新レギュレーションには衝突面の変更を含むクラッシュテスト要件の大幅な変更が含まれているため、シャシー構造が大型化しました。
シャシーホモロゲーション試験の変更は、安全性向上の視点から歓迎すべきものですが、いくつもの試験に合格するためには多大な努力が求められます。また、重量増加を抑え、空力開発で妥協しながらシャシー構造を最適化していく必要もあります。
ですが、2022シーズン用シャシーの設計プロセスは計画通りに進んだと言って良いでしょう。ホモロゲーションに関しても同じです。
18インチタイヤへの変更は、マシンデザインにどのような影響を与えましたか?
ホイールとタイヤが空力特性に及ぼす影響は非常に大きいので、これは重要な変更です。新たなタイヤとホイールに加え、ブレーキダクトや多くの空気力学的表面、そして4輪と相互作用する気流構造は、パッケージを向上させながらパフォーマンスを引き出していく領域になるでしょう。
タイヤに関しては、昨年中に旧型マシンでテストできていたので、データは揃っていますし、タイヤの基本パラメータの大半は把握できています。タイヤマネージメントの必要性を下げ、各コンパウンド間のパフォーマンス差をさらに揃えているという部分においては、ピレリの方向性は維持されていると思います。
新型タイヤは反応も機能も従来とは異なっています。その特性を有効活用するためにチームのビークルパフォーマンスグループはハードワークを重ねてきました。私たちはシーズンを通じてマシンへの理解を深めながら、この作業を続けていく予定ですし、このプロセスによってパフォーマンスを向上させられるはずです。
18インチタイヤの導入は重要かつ歓迎すべき変化ですが、その他のレギュレーション変更に関連する新製品を開発する機会をピレリに提供することになるでしょう。
パワーユニットについての質問です。AT03にはホンダのバッジこそ備わっていませんが、基本的には昨シーズンと同じパワーユニットです。
ええ、多くの部分が引き継がれています。私たちはホンダの皆さんと引き続き協働できることを大変嬉しく思っています。スクーデリア・アルファタウリとホンダの関係は非常に良好です。チームにとって素晴らしいパートナーシップでしたし、いくつかの成功を得られましたので、この関係を継続できることは喜びです。
私たちは同じパワーユニット担当チームと働いていますし、これが実を結んでいます。自分たちの現在地が分かっていますし、お互いをよく理解できています。このような継続はプラスしかもたらしませんね。
スクーデリア・アルファタウリは、レギュレーションで許可される範囲で今後もレッドブル・テクノロジーとの協働体制を続けていくのでしょうか?
2022シーズンは、ギアボックスや油圧系、リアサスペンションなどのリアエンドにおいてレッドブル・テクノロジーと協働しました。従来とまったく同じ体制です。
相違点は、これまで私たちはレッドブル・レーシングの1年落ちのパーツを使用してきましたが、レギュレーション変更によって2022シーズンは両チームが同一スペックのパーツを使用することですね。
レギュレーションがどのように変更されても、結局の所、違いを生み出すのはチームスタッフです。2022シーズンに挑む現在のチームをどのように評価していますか?
スクーデリア・アルファタウリは様々な部分で非常に若いチームですが、過去3年をかけて独自のプロセスと構造を作り上げてきました。チームと共に成長してきた団結力のあるスタッフが揃っていますし、これが明確な恩恵をもたらしています。
私たちの働き方は大いに向上したと思います。これが明確な恩恵や信頼関係、シニアマネージャー間のオープンなコミュニケーションをもたらしています。また、ファエンツァとビスター間の意思疎通もかなり良好になりました。
全体的な話をすれば、マシン開発とレーシングにおける私たちの基本哲学が確立され、これが各業務の優れたスタートポイントになっています。スタッフはチーム目標を意識して真剣に仕事へ取り組んでいますし、強力なライバル勢と戦えるマシンを開発するというチャレンジを楽しんでいます。
私たちはF1の中ではまだ小規模なチームのひとつに過ぎませんが、チームの構造が整備されたことで、リソースを迅速に移動できるようになったため、優先度の高いプロジェクトをより早く片付けられるようになりました。お互いへのオープンで誠実な姿勢がチームの気風となっていて、個人的にこれは非常に重要なことだと考えています。誰もがそれぞれの意見を忌憚なく主張しますし、何かがプラン通りに進んでいなかったら、その解決に向けて集中します。この姿勢が、スタッフが成長できる優れた労働環境を生み出しています。
カテゴリー: F1 / スクーデリア・アルファタウリ
アルファタウリF1の2022年F1マシン『AT03』には“昨年から引き継がれたパーツは実質的に存在”と語るジョディ・エギントン。だが、ギアボックスや油圧系、リアサスペンションなどのリアエンドにおいてレッドブル・テクノロジーと協業、パワーユニットも昨年のアップデート版となるホンダ製で、同じホンダのパワーユニット担当チームと作業が行われた。
テクニカルレギュレーションが大幅に変更されましたが、AT03のデザインは白紙から立ち上げられたのでしょうか?
パーツやアセンブリの大部分が新しくなっていますので、昨年から引き継がれたパーツは実質的に存在しません。ですので、全体的にはほぼ白紙から立ち上げられたデザインです。
マシンの設計はいつ始まったのでしょう?
設計の開始時期については若干のずれがあります。というのも、新レギュレーションは当初2021シーズンから導入予定でしたので、私たちはかなり以前から作業を始めていました。
その後、当然ながらパンデミックの影響を受け、2020年中は風洞を使用した開発作業の停止が定められました。設計作業が再開したのは2021年1月1日でした。しかしながら、このタイミングは60%サイズ風洞への移行と重なっており、2022シーズン用マシンの60%モデルの設計と製造を行わなければなりませんでした。同時に、2021シーズンのAT02は50%モデルで開発が進められていたので、AT02の60%モデルも並行して用意しました。2つの風洞を並行して稼働させることは認められていませんので、AT02のシーズン中の開発を進めるために60%モデルへ移行したのです。
当然、作業量は大幅に増えましたが、60%サイズ風洞への移行はかなり前に決定していた戦略プランで、チームの中期目標の達成のために実行する必要がありました。チームスタッフたちは作業量の増加にもスムーズに対応してくれました。私たちはこの決定が中期的な成功をもたらすことに自信があります。
最初のテストを目前に控え、不安と自信のどちらが上回っていますか? それとも、その中間でしょうか?
何回も同じ質問をされていますよ! 私たちは過去2、3年をかけて作業プロセスを向上させているので、今回のマシンにもその影響が出ています。統計的に見ても、また直近のリザルトから見ても、チームは努力に見合った成功を収めているので、正しい方向へ進んでいると言えるでしょう。
とはいえ、あらゆる部分がリセットされる2022シーズンは結果が得られる可能性とリスクが混在しているので、そう簡単にはいきません。マシンの開発スピードが重要な指標になりますが、重要なのは、ライバルと比較して私たちが開発の “どこ” にいるのかです。開幕戦で蓋を開けてみるまではまったく分かりません。
コストキャップ制度が実効性を持つのは2023シーズンまで待たなければなりませんが、すでにビッグチームと対等になってきていると感じていますか?
現在話題になっているフレーズを使うなら、一定の “レベリングアップ”(編注:英国のボリス・ジョンソン首相が国内の地域格差是正のために掲げているスローガン)が期待できると考えています。
各チームの業務にコストキャップ制度が浸透するまではもう少し時間がかかると思いますが、コストキャップ導入前に予算面でビッグチームに差をつけられていたチームは、当然ながらある程度の恩恵が得られるでしょう。それでも、賢く予算を使わなければならないことに変わりありません。
最大のレギュレーション変更はエアロダイナミクス関連で確認できます。形状がよりシンプルになったウイングに重点が置かれ、フロアの重要性が増していますが、各チームが独自のアイディアを持ち込める余地はまだ残っているのでしょうか?
空力レギュレーションの変更は広範ですので、新しいアイディアや空力コンセプトを実験できるスペースはかなりありますが、同時に、新レギュレーションでは開発の方向を間違ってしまうリスクも大きくなっています。
各チームは、イノベーティブな空力ソリューションを考案する余地が十分にあることを理解していますが、今回の新たな空力レギュレーションから何を引き出せるかについては、表に出てこない細部の開発が重要になると予測しています。
最初のテストでは、各チームによる様々なレギュレーションの解釈が見られるでしょう。そのような解釈は議論を呼び起こすはずですが、同時にシーズン中の開発の方向性を考える機会を提供するはずです。
シャシーはレギュレーション変更の影響をどの程度受けているのでしょう?
新レギュレーションには衝突面の変更を含むクラッシュテスト要件の大幅な変更が含まれているため、シャシー構造が大型化しました。
シャシーホモロゲーション試験の変更は、安全性向上の視点から歓迎すべきものですが、いくつもの試験に合格するためには多大な努力が求められます。また、重量増加を抑え、空力開発で妥協しながらシャシー構造を最適化していく必要もあります。
ですが、2022シーズン用シャシーの設計プロセスは計画通りに進んだと言って良いでしょう。ホモロゲーションに関しても同じです。
18インチタイヤへの変更は、マシンデザインにどのような影響を与えましたか?
ホイールとタイヤが空力特性に及ぼす影響は非常に大きいので、これは重要な変更です。新たなタイヤとホイールに加え、ブレーキダクトや多くの空気力学的表面、そして4輪と相互作用する気流構造は、パッケージを向上させながらパフォーマンスを引き出していく領域になるでしょう。
タイヤに関しては、昨年中に旧型マシンでテストできていたので、データは揃っていますし、タイヤの基本パラメータの大半は把握できています。タイヤマネージメントの必要性を下げ、各コンパウンド間のパフォーマンス差をさらに揃えているという部分においては、ピレリの方向性は維持されていると思います。
新型タイヤは反応も機能も従来とは異なっています。その特性を有効活用するためにチームのビークルパフォーマンスグループはハードワークを重ねてきました。私たちはシーズンを通じてマシンへの理解を深めながら、この作業を続けていく予定ですし、このプロセスによってパフォーマンスを向上させられるはずです。
18インチタイヤの導入は重要かつ歓迎すべき変化ですが、その他のレギュレーション変更に関連する新製品を開発する機会をピレリに提供することになるでしょう。
パワーユニットについての質問です。AT03にはホンダのバッジこそ備わっていませんが、基本的には昨シーズンと同じパワーユニットです。
ええ、多くの部分が引き継がれています。私たちはホンダの皆さんと引き続き協働できることを大変嬉しく思っています。スクーデリア・アルファタウリとホンダの関係は非常に良好です。チームにとって素晴らしいパートナーシップでしたし、いくつかの成功を得られましたので、この関係を継続できることは喜びです。
私たちは同じパワーユニット担当チームと働いていますし、これが実を結んでいます。自分たちの現在地が分かっていますし、お互いをよく理解できています。このような継続はプラスしかもたらしませんね。
スクーデリア・アルファタウリは、レギュレーションで許可される範囲で今後もレッドブル・テクノロジーとの協働体制を続けていくのでしょうか?
2022シーズンは、ギアボックスや油圧系、リアサスペンションなどのリアエンドにおいてレッドブル・テクノロジーと協働しました。従来とまったく同じ体制です。
相違点は、これまで私たちはレッドブル・レーシングの1年落ちのパーツを使用してきましたが、レギュレーション変更によって2022シーズンは両チームが同一スペックのパーツを使用することですね。
レギュレーションがどのように変更されても、結局の所、違いを生み出すのはチームスタッフです。2022シーズンに挑む現在のチームをどのように評価していますか?
スクーデリア・アルファタウリは様々な部分で非常に若いチームですが、過去3年をかけて独自のプロセスと構造を作り上げてきました。チームと共に成長してきた団結力のあるスタッフが揃っていますし、これが明確な恩恵をもたらしています。
私たちの働き方は大いに向上したと思います。これが明確な恩恵や信頼関係、シニアマネージャー間のオープンなコミュニケーションをもたらしています。また、ファエンツァとビスター間の意思疎通もかなり良好になりました。
全体的な話をすれば、マシン開発とレーシングにおける私たちの基本哲学が確立され、これが各業務の優れたスタートポイントになっています。スタッフはチーム目標を意識して真剣に仕事へ取り組んでいますし、強力なライバル勢と戦えるマシンを開発するというチャレンジを楽しんでいます。
私たちはF1の中ではまだ小規模なチームのひとつに過ぎませんが、チームの構造が整備されたことで、リソースを迅速に移動できるようになったため、優先度の高いプロジェクトをより早く片付けられるようになりました。お互いへのオープンで誠実な姿勢がチームの気風となっていて、個人的にこれは非常に重要なことだと考えています。誰もがそれぞれの意見を忌憚なく主張しますし、何かがプラン通りに進んでいなかったら、その解決に向けて集中します。この姿勢が、スタッフが成長できる優れた労働環境を生み出しています。
カテゴリー: F1 / スクーデリア・アルファタウリ