角田裕毅 レッドブルF1加入で浮き彫りになった「マックス要因」

この極端な差に注目したのが、元F1チーム代表のオトマー・サフナウアーだ。彼はこの現象を「マックス要因(Max factor)」と呼び、こう語っている。
「角田は非常に有能なドライバーだ。だが、ポールポジションを取るフェルスタッペンに対し、角田は10番手、0.7秒の差がある。同じマシンに乗っているのに、これだけ差が出るのは“マックス要因”としか言いようがない」
サフナウアーはまた、現在グリッド最強とされるマクラーレンを引き合いに出して比較する。ランド・ノリスとオスカー・ピアストリは、常に予選で僅差の戦いを繰り広げており、両者の実力が極めて拮抗していることが明らかだ。

マクラーレンの強さに見る「総合力」
マクラーレンは予選での接戦だけでなく、決勝レースでの安定したペースによって、今季すでに5勝を挙げている。サフナウアーはその強さの理由を「ロングランペース」と「タイヤマネジメント」にあると分析している。
「マクラーレンが本当に強いのは、一発の速さよりもレース全体のペースにある。これはクルマの設計、セットアップ、そしてタイヤの扱い方など、細部にわたる総合力の成果だ」
自身がフォース・インディアやアルピーヌを率いていた当時の経験を振り返り、サフナウアーは「最良のタイヤエンジニアを集め、クルマの開発でもタイヤへの影響を常に重視していた」と述懐する。
“マックス要因”は、フェルスタッペンの並外れた才能を象徴する言葉であると同時に、チーム内の構造的な偏りを示している可能性もある。
角田裕毅のような力量あるドライバーが、これほどまでに差をつけられる状況は、果たして個人の問題なのか。それとも、マシンやチームの運用がフェルスタッペンに最適化されすぎているのか。
角田裕毅がチームに加わったことで、その「差」はより鮮明に可視化された。“マックス要因”という言葉は、称賛であると同時に、F1界に投げかけられた疑問でもある。
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