角田裕毅 レッドブルF1で真の課題は「レースペース」 予選が結果に直結せず

角田裕毅が見せた予選7番手という結果は、チームからも「素晴らしい」と高く評価された。しかし、決勝ではピットインのタイミングを巡る無線遅れによって、その好成績が無駄となってしまった。
角田裕毅はインターミディエイトで走行していた第1スティントの終盤、コースが乾き始めていることをチームに警告。そしてスパの最終シケイン手前で「ボックス?」と無線を入れた。しかし返答が遅れ、「ボックス、ボックス」と伝えられたのはすでにピット入口を過ぎた後だった。
「ふざけんな!乾いてるって言っただろ!」と角田裕毅は叫んだ。
この判断ミスにより角田裕毅はインラップを1周余分に走ることとなり、大幅にタイムをロス。7番手から一気にポイント圏外へ転落し、これで6戦連続+1スプリントでのノーポイントが続くこととなった。これまでの不振は角田裕毅自身の責任が主だったが、今回はレッドブル側の明確なミスだった。
一方、マックス・フェルスタッペンには「OK、ボックス、マックス、今ラップでボックス」「ルクレールも入る。今ラップでボックスだ」と明確な指示が事前に伝えられていた。
レッドブルF1の新チーム代表ローラン・メキースはレース後、こう認めた。
「完全に我々のミスだった。マックスと同じラップでピットさせるつもりで準備は万端だったが、呼び出しが遅すぎた」
「1周の遅れが大きな差を生み、結果的に3〜4ポジションを失ってしまった。ポイント獲得のチャンスを失ったのは本当に残念だ」
レース後半、角田裕毅はローダウンフォース仕様のアルピーヌに乗るピエール・ガスリーの真後ろで走行を強いられ、オーバーテイクもできずにレースを終えた。第1スティントでのペースは悪くなかったが、戦略ミスにより自身のレースを自由に展開する機会が失われた。
とはいえ、今大会では明確な進歩も見られた。新仕様のフロアが投入された予選で7番手に入り、フェルスタッペンとの差も0.4秒以内と、2018年のダニエル・リカルド以来もっとも迫ったチームメイトとなった。
メキースはこう振り返る。
「新仕様を投入したのは、スプリントと本予選の間という非常にタイトなタイミングだった。メカニックは素晴らしい仕事をしてくれたし、角田裕毅もすぐに順応して素晴らしい予選をしてくれた」
「決して特別扱いではなく、パーツの供給タイミングによってこうした判断になることはこれまでにもあった。今回はリスクを取ったが、価値のある結果を得られた」
メキース体制となってから初のレースとなったベルギーGPで、角田裕毅はより対等なサポートを受けていると見られている。本人もホーナー体制時代からのサポートに満足していたが、メキースとは以前からの関係もあり、よりパーソナルな信頼関係が築かれている点が今後に好影響を与える可能性がある。

一方で、チーム内では依然として懸念材料もある。予選の好成績に比べ、決勝でのレースペースは明らかに劣っており、特にピット後のクリアエアに入った状態でもフェルスタッペンには1周あたり1秒差をつけられていた。ヘルムート・マルコも角田裕毅の「レースペース」に疑問を呈しており、「タイヤが溶ける」と訴え続ける角田裕毅の特性も課題として残っている。
これまでのレッドブルでは、予選よりもレースで差を詰める傾向が強かった。しかし角田裕毅は逆に、ここ数戦で一発の速さでは改善を見せている一方で、ロングランの弱さが目立ってきた。
ベルギーで投入された新フロアがロングランにも効果を発揮するかは、今回のレース展開の影響で明確にはならなかった。よって次戦ハンガリーGPが真の試金石となる。
特にハンガロリンクは予選順位が非常に重要なサーキットであり、角田裕毅にとっては結果が求められる。予選のフラッシュだけでは将来は保証されない。仮にチームがフェルスタッペンの新パートナーとして新たな選択肢を検討する場合、レッドブル育成のアイザック・ハジャーが最有力となるだろう。
だからこそ、今は角田裕毅にとってチャンスの時期でもある。メキースの下で、彼はあらゆる機会を与えられるだろう。そして、レッドブルがスパでのようなミスを繰り返さない限り、角田裕毅次第で未来は切り開けるはずだ。
カテゴリー: F1 / 角田裕毅 / レッドブル・レーシング