ヨス・フェルスタッペン炎上事故 F1の安全対策を変えた歴史的転換点

給油中にマシンが一瞬で火の玉に包まれたこの事故は、ドライバーやメカニックに負傷者を出しただけでなく、その後のF1の安全対策やピットストップ手順を大きく見直す契機となった。
給油中に突如発生した炎上事故
1994年ドイツGPのホッケンハイムリンク。レースのおよそ3分の1を終えたところで、ベネトンのヨス・フェルスタッペンは通常の給油ピットストップのためにピットインした。
インターテクニーク製の給油ノズルが接続された直後、高圧の燃料がマシン後方へ噴き出し、高温になっていたボディワークとリアブレーキに引火。一瞬のうちにマシン全体が炎に包まれた。
火災そのものは数秒で消し止められたが、バイザーを少し開けた状態だったフェルスタッペンは鼻や目の周辺に軽い火傷を負った。当時は走行中でもバイザーをわずかに開けることは珍しくなかったという。
また、消火活動にあたった数人のメカニックも火傷を負ったものの、幸い重傷者は出なかった。
後にフェルスタッペンは当時の状況を次のように振り返っている。
「マシンに乗っていると突然すべてが炎に包まれた。本当に何もできない。パニックになるよ」
「でも、チームは非常に素早く対応してくれた。数秒後には火は消えていた」
A heart-stopping moment for Jos Verstappen at Hockenheim in 1994
— Formula 1 (@F1) July 25, 2019
Thankfully, nobody suffered any serious injuries #F1 #GermanGP pic.twitter.com/nKuE4gxghe
FIA調査で判明した安全装置の取り外し
事故後に行われたFIAの調査では、ベネトンが給油バルブ内部の安全フィルターを取り外していたことが判明した。
このフィルターを外すことで燃料流量は約12.5%増加し、ピットストップを約1秒短縮できるとされていた。
しかし、安全フィルターがなかったことで異物がバルブ内部に詰まり、バルブが正常に閉じなくなった結果、燃料が制御不能な状態で噴き出したと結論づけられた。
ベネトンには罰金が科されたが、チーム側はフィルターの取り外し自体が事故の直接原因ではないとの立場を示した。
この事故がF1の安全対策を変えた
この事故を受け、F1では給油装置の設計が大きく見直された。
給油ホースには異常時に燃料の流れを瞬時に遮断するフェイルセーフ機構が導入され、ピットクルーには耐火性能を強化した防火服やヘッドギアの着用が義務化された。
さらに、各チームはFIAが承認した標準仕様の給油装置を使用しなければならなくなり、装置への改造や変更についても監視が一段と厳格化された。
この事故は、レース中給油そのものの危険性を改めて浮き彫りにする出来事ともなり、F1は2010年シーズンからレース中給油を全面的に廃止している。
炎に包まれながらも大事故を免れたヨス・フェルスタッペンの一件は、F1の安全思想を大きく前進させた歴史的な転換点として、現在でも語り継がれている。
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