F1放送批判に著名カメラマンが反論「恋人ショットはわずか0.25%にすぎない」

サインツはスペインのラジオ局『El Partidazo de COPE』で、「先週末、終盤に僕がした4~5回のオーバーテイクも、フェルナンド(・アロンソ)がルイス(・ハミルトン)を追っていた場面も一切放送されなかった」と指摘。
「もし競り合いがあるなら、観客のリアクションを映すのも理解できるけど、主役はあくまでレース。セレブや恋人ばかりを映すのは行き過ぎだ」と苦言を呈した。
同じくスペイン人のフェルナンド・アロンソもSNS「X」で「プライベートラジオ放送ではポールポジションを取った。あとは本放送の改善だ!」と皮肉交じりに同調した。
イルマンが検証「恋人ショットは全体の0.25%」
議論を受け、F1公式カメラマンでもあるイルマンが自身のYouTubeチャンネルで詳細な分析を実施した。
「スタートからチェッカーフラッグ直後まで、レース映像は1時間41分、つまり6060秒あった」と前置きした上で、イルマンは次のように語った。
「その中で映された“ガールフレンド”は2人だけ。カルロスの恋人レベッカ・ドナルドソンが8秒、ランドの恋人マギーが7秒。合計で15秒。全放送時間のわずか0.25%にすぎない。これを『やり過ぎ』と言えるだろうか?」
さらに、ランス・ストロールの妹と夫スコッティ・ジェームズが7秒、トト・ヴォルフが15秒、マクラーレンのピットウォールクルーが計36秒、フレデリック・バスール、ボノ、ピーター・バイヤー、アンディ・コーウェルがそれぞれ約7秒と指摘。「これらをすべて合わせても86秒、つまり全体の1%程度だ」と説明した。
ポストレースではジョージの恋人が最多登場
レース後の映像では比率が増えるとし、「ジョージ(・ラッセル)の恋人カルメンは24分間の放送で5回登場し計31秒。マギーも3秒映った」と分析。カルメンとの会話シーンも「彼が唯一の家族として現場にいたため、監督が彼女を映したのは自然」と補足した。
イルマンは「過去にもランドの両親やオスカー(・ピアストリ)のマネージャーのマーク・ウェバー、マックスの父親などが映されてきた。人間的なリアクションを見せる意図は理解できるし、F1が“人間味ある演出”を重視している以上、この方針は変わらないだろう」と述べた。
「本当に問題なのはバトルを見逃したこと」
一方でイルマンは、サインツの主張の本質には同意した。「重要なのは“恋人”の件ではなく、F1中継が重要なバトルを逃した点だ」と強調。特に「ブレーキトラブルを抱えたハミルトンをアロンソが追う場面は、レース終盤のハイライトだったのに映されなかった」と指摘した。
「マクラーレンの歓喜映像を映している間に、アロンソはハミルトンの背後コンマ4秒差まで迫っていた。あの瞬間はトラック映像を優先すべきだった」とも述べた。
FOMは「常にレースを最優先」と反論
放送を統括するFOM(Formula One Management)は声明で、「我々は常にファンに最高のレース映像を届けることを最優先しており、トラック上のアクションを犠牲にすることはない」と反論。「複雑な状況を扱う中でも、レースや観客、ゲスト、開催地の魅力をバランスよく伝える努力を続けている」と述べた。
今回の一件は、F1が“スポーツ”と“エンターテインメント”の間で揺れる現状を浮き彫りにした。レース本来の迫力を伝える中継と、人間ドラマを映す演出のバランスは、今後も議論を呼びそうだ。
Source: Crash.net
カテゴリー: F1 / テレビ放送