トヨタ:ニュルブルクリンク QFレース 予選/決勝レポート
4月22日、23日、ニュルブルクリンク24時間レースのための「Qualifying Race(QFレース)」が開催された。QFレースとはニュル24時間への参加資格や上位クラスのシードチームを決める6時間のレースだが、24時間レース直前の実戦、テスト、調整を行なうチームが多く、今回の参戦の目的もVLN参戦と変わらず、ニュル24時間に向けた様々なトライやデータ取り、そして実戦経験で人の動きや改善点を洗い出す「クルマ」と「人」の実戦テストである。
VLNでは順調に見えたがその裏では細かいトラブルも発生していたため、改善を積み重ねながら、さらにアップデートを行ない、QFレースに臨んだ。
今回のドライバーは井口卓人、松井孝允、蒲生尚弥選手の3名。エントリーリストにはVLNには参戦していなかった、スバルWRX STIの記載もあり、LEXUS RCと同じSP 3Tクラスの24時間レースの顔ぶれが揃った格好だ。
また、SP3クラスにはTOYOTA GAZOO Racing Team Thailandから2台のCollora ALTISが参戦。2台のうち124号車にはTOYOTA GAZOO Racingドライバーの木下隆之選手がエントリーしており、「タイのチームは純粋にレースを楽しんでいて、ドライバーも全力疾走しているところに、自分自身がレースを始めた頃の気持ちを思い出しました。チームの中で刺激し合いながら24時間を走りたいと思います」と語っていた。
4月22日、午前中の練習走行はニュル特有の霧雨でウエットでのセッティングをトライ。その後雨は止み、18時40分から行なわれた予選1回目はドライ路面で実施。決勝グリッドを狙ったフルアタックは行わず、あくまでも実戦テストとして臨み、途中で空力のセットアップ変更なども行ないながらの走行となったが9分14秒219を記録した。
翌23日9時から行なわれた予選2回目も同じスタンスでセッティングのトライを行ないながらの走行を行ない、結果は総合46位、SP 3Tクラス2位。
SP3TのクラストップはスバルWRX STIの9分7秒096だったが、昨年と比べるとその差は確実に縮まっている。RCでは初ドライブとなった井口卓人選手は「VLN1で松井・蒲生選手がセットアップを進めてくれたおかげで、走り始めから気持ち良く走れました」とマシンの進化を語った。
23日12時から行なわれた6時間の決勝レース。クラス2位からスタートした井口選手は順調にラップを重ね、6周目に1位のスバルWRX STIがピットインしたタイミングでクラストップへ浮上。8周目にピットインし2位となるものの、13周目に再びトップへと返り咲く。15周目の2回目のピットインのタイミングでは、稼いだマージンによりトップのままピットアウト。
その後もトラブルなく順調に走行。予定周回でのルーティンのピットイン以外はピットに入る事もなく周回を重ね6時間を走り切り、総合23位、そしてVLN1、VLN2に続きに続きSP3Tクラス優勝を獲得。
しかし、クラス優勝より6時間を着実に走り抜き、周回を重ねたことで多くのトライやデータが得ることができたことのほうが重要だった。また、クルマのみならずエンジニア、メカニックにも変化が見受けられ、前回よりも「判断しなければいけない時の動き」や「各々のコミュニケーション」、「1つ1つの作業」などにも改善が見られ、チーム力もアップしていた。ただ、順調に見えたマシンだったが、足周りの不具合や、ドライバーからはもう少し立ち上がりの時のパワーが欲しいと言う声も聞かれた。不具合は今回のレースで大きな問題にはならなかったが、ニュル24時間では致命傷になる可能性があることを踏まえ、24時間本戦まで残された時間は短いが、ハードを見直して対策を実施。パワートレインに関しても「やるべき事は最後までやる」とRCの強みを更に引き出し、ドライバーが更に安心して走れるように、最後の最後までアップデートを行う。
VLN、QFレース共に好成績を残したことからチームはいい雰囲気なので満足しがちだが、“もっといいクルマづくり”のための実戦テストであり、今回のQFレースで得られたこと、ドライバーからのフィードバック、各自の改善を反映し、更に乗りやすいクルマに仕上げニュル24時間へと挑む。
井口卓人
国内テスト以来の走行でしたが、走り始めから気持ち良く走ることができ、燃費とLAPのバランスは24時間でも有利に働くことも確認できました。しかし、ややアンダー傾向でフロントタイヤに負担をかけるハンドリングや立ち上がり加速など、新たな課題もありました。それ以外は大きなトラブルもなく順調すぎて怖い所もありますが、ニュル24時間は何が起きるか解りません。今まで以上にエンジニアとメカニックとコミュニケーションを密にして、チーム全体で“心を一つ”にして挑みたいと思います。
平田チーフメカニック(トヨタ自動車社員)
チーム、マシン共に想定通りの内容でした。これまで一生懸命やってきたことがタイムや燃費、順位と言う数値で表れたのは嬉しいしモチベーションにも繋がっています。メカニックには決勝中にルーティン作業以外をピットロードで行なうなどプレッシャーを掛けて鍛えました。このプロジェクトを率いた成瀬さんも「とにかく物を見ろ」と言っていましたが、例えばひとつの部品も改善を意識しながら作業にあたれば、改善すべき点が見え、作業性の向上などにつながります。更なる作業の精度アップとより自主的に動けるようにしたいです。ただ、マシンは足回りに少し課題を残してしまったので、24時間レースのグリッドにつく瞬間まで改善を行い、ドライバーが安心して快適に乗れるクルマに仕上げます。
茶谷車両エンジニア(トヨタ自動車社員)
“走る”ことで我々が目指す方向に着実に進んでいます。今回も細かいトラブルも含め様々な課題を視つけ、レース中でも仕様変更を行っていました。 しかし、今までの課題も走り続けてきたからこそ視つけることができ、車両だけでなくチームの動きも改善が進んできました。 その結果が今回のタイム、順位に表れており、チームに自信と勢いが増し私も本当にうれしいです。 細かいトラブルも24時間では致命的になる可能性もあります。今回得られた自信・勢いを車輌とチームの課題に向け対策をすると共にRCの強みを引き延ばすために最後の最後までアップデートも行ないます。
カテゴリー: F1 / トヨタ
VLNでは順調に見えたがその裏では細かいトラブルも発生していたため、改善を積み重ねながら、さらにアップデートを行ない、QFレースに臨んだ。
今回のドライバーは井口卓人、松井孝允、蒲生尚弥選手の3名。エントリーリストにはVLNには参戦していなかった、スバルWRX STIの記載もあり、LEXUS RCと同じSP 3Tクラスの24時間レースの顔ぶれが揃った格好だ。
また、SP3クラスにはTOYOTA GAZOO Racing Team Thailandから2台のCollora ALTISが参戦。2台のうち124号車にはTOYOTA GAZOO Racingドライバーの木下隆之選手がエントリーしており、「タイのチームは純粋にレースを楽しんでいて、ドライバーも全力疾走しているところに、自分自身がレースを始めた頃の気持ちを思い出しました。チームの中で刺激し合いながら24時間を走りたいと思います」と語っていた。
4月22日、午前中の練習走行はニュル特有の霧雨でウエットでのセッティングをトライ。その後雨は止み、18時40分から行なわれた予選1回目はドライ路面で実施。決勝グリッドを狙ったフルアタックは行わず、あくまでも実戦テストとして臨み、途中で空力のセットアップ変更なども行ないながらの走行となったが9分14秒219を記録した。
翌23日9時から行なわれた予選2回目も同じスタンスでセッティングのトライを行ないながらの走行を行ない、結果は総合46位、SP 3Tクラス2位。
SP3TのクラストップはスバルWRX STIの9分7秒096だったが、昨年と比べるとその差は確実に縮まっている。RCでは初ドライブとなった井口卓人選手は「VLN1で松井・蒲生選手がセットアップを進めてくれたおかげで、走り始めから気持ち良く走れました」とマシンの進化を語った。
23日12時から行なわれた6時間の決勝レース。クラス2位からスタートした井口選手は順調にラップを重ね、6周目に1位のスバルWRX STIがピットインしたタイミングでクラストップへ浮上。8周目にピットインし2位となるものの、13周目に再びトップへと返り咲く。15周目の2回目のピットインのタイミングでは、稼いだマージンによりトップのままピットアウト。
その後もトラブルなく順調に走行。予定周回でのルーティンのピットイン以外はピットに入る事もなく周回を重ね6時間を走り切り、総合23位、そしてVLN1、VLN2に続きに続きSP3Tクラス優勝を獲得。
しかし、クラス優勝より6時間を着実に走り抜き、周回を重ねたことで多くのトライやデータが得ることができたことのほうが重要だった。また、クルマのみならずエンジニア、メカニックにも変化が見受けられ、前回よりも「判断しなければいけない時の動き」や「各々のコミュニケーション」、「1つ1つの作業」などにも改善が見られ、チーム力もアップしていた。ただ、順調に見えたマシンだったが、足周りの不具合や、ドライバーからはもう少し立ち上がりの時のパワーが欲しいと言う声も聞かれた。不具合は今回のレースで大きな問題にはならなかったが、ニュル24時間では致命傷になる可能性があることを踏まえ、24時間本戦まで残された時間は短いが、ハードを見直して対策を実施。パワートレインに関しても「やるべき事は最後までやる」とRCの強みを更に引き出し、ドライバーが更に安心して走れるように、最後の最後までアップデートを行う。
VLN、QFレース共に好成績を残したことからチームはいい雰囲気なので満足しがちだが、“もっといいクルマづくり”のための実戦テストであり、今回のQFレースで得られたこと、ドライバーからのフィードバック、各自の改善を反映し、更に乗りやすいクルマに仕上げニュル24時間へと挑む。
井口卓人
国内テスト以来の走行でしたが、走り始めから気持ち良く走ることができ、燃費とLAPのバランスは24時間でも有利に働くことも確認できました。しかし、ややアンダー傾向でフロントタイヤに負担をかけるハンドリングや立ち上がり加速など、新たな課題もありました。それ以外は大きなトラブルもなく順調すぎて怖い所もありますが、ニュル24時間は何が起きるか解りません。今まで以上にエンジニアとメカニックとコミュニケーションを密にして、チーム全体で“心を一つ”にして挑みたいと思います。
平田チーフメカニック(トヨタ自動車社員)
チーム、マシン共に想定通りの内容でした。これまで一生懸命やってきたことがタイムや燃費、順位と言う数値で表れたのは嬉しいしモチベーションにも繋がっています。メカニックには決勝中にルーティン作業以外をピットロードで行なうなどプレッシャーを掛けて鍛えました。このプロジェクトを率いた成瀬さんも「とにかく物を見ろ」と言っていましたが、例えばひとつの部品も改善を意識しながら作業にあたれば、改善すべき点が見え、作業性の向上などにつながります。更なる作業の精度アップとより自主的に動けるようにしたいです。ただ、マシンは足回りに少し課題を残してしまったので、24時間レースのグリッドにつく瞬間まで改善を行い、ドライバーが安心して快適に乗れるクルマに仕上げます。
茶谷車両エンジニア(トヨタ自動車社員)
“走る”ことで我々が目指す方向に着実に進んでいます。今回も細かいトラブルも含め様々な課題を視つけ、レース中でも仕様変更を行っていました。 しかし、今までの課題も走り続けてきたからこそ視つけることができ、車両だけでなくチームの動きも改善が進んできました。 その結果が今回のタイム、順位に表れており、チームに自信と勢いが増し私も本当にうれしいです。 細かいトラブルも24時間では致命的になる可能性もあります。今回得られた自信・勢いを車輌とチームの課題に向け対策をすると共にRCの強みを引き延ばすために最後の最後までアップデートも行ないます。
カテゴリー: F1 / トヨタ