トロロッソ・ホンダ F1特集:ジェームス・キーの力
F1の代表的なサーキットのひとつ、“シルバーストン”は、イギリスGPのホームサーキットであり、F1マシンが高速走行の限界に挑戦する場所。時速200マイル(約321km)ほどでコプスに突入すると、マゴッツやべケッツのコーナーが続き、マシンの限界までプッシュする走行になる。
シルバーストンではシャシーの性能が明らかになってしまうし、ドライバーだけでなく、チームのテクニカルディレクターにとってもチャレンジだ。
このサーキットは1950年のF1世界選手権の初開催から使われ続けてきたサーキットなので、F1カレンダーの中でも重要な開催地となる。
トロロッソのテクニカルディレクターのジェームズ・キーは、彼にとってのホームレースでもあるシルバーストンについて、次のように語る。
「ドライバーにとってシルバーストンは、自然体で走るつもりでも、ついうまく走ろうとしてしまうサーキットだと思います。なぜなら、バルセロナのように何年も前からたびたびテストにも使ってきたサーキットで、勝手を知っているからです」
「近年コースレイアウトが変化しているとはいえ、ドライバーにとってもシルバーストンは馴染みのあるサーキットだと思います。現在ではそのようなサーキットは多くはなく、鈴鹿、モナコ、モンツァ、スパ、シルバーストン、バルセロナなどがあるだけです」
「ほかのコース、例えばバクーは、まだまだ理解するのに時間を要します。したがって、ドライバーの頭の中には馴染みのトラックとそうでないトラックがあり、シルバーストンはよく知っているタイプのサーキットです。かといって、特別なプレッシャーを感じることもないでしょう」
なぜ“特別なプレッシャー”について言及されたかというと、ジェームス・キーと同じくトロロッソの多くのスタッフにとってシルバーストンがホームレースだからだ。シルバーストンから15マイル(約24km)ほど離れたビスターにトロロッソの施設があり、英国に家があるキーは英国と(イタリアの)ファエンツァを行き来している。
「シルバーストンは初めて観に行ったグランプリなので、より特別な気持ちがします。私が10歳くらいだったころ、連れてってもらいたくて父親にしつこくねだりました。父はレースファンだったので、無理なお願いではなかったのですが、でもついに行けたんです」
「クラブ・コーナーから観戦していて、ナイジェル・マンセルが優勝したのを覚えています。私にとってずっと大好きなサーキットですし、そこにいるのが楽しくなるサーキットなんです」
「雰囲気はもちろん、ファンなど、シルバーストンのすべてがすばらしいですし、コースそのものが特別です。コプスを走るF1マシンを見るのは、本当に最高な気分です」
トロロッソ代表のフランツ・トストにとってのオーストリアと同様に、シルバーストンはキーの身近な人たちが彼の仕事姿を見る機会になるだろう。
「私の家族や友人が観戦に来ます。他の英国人スタッフもゲストを呼んでいるようですが、私も家族を招くつもりで、本当にうれしいことです。シルバーストンの雰囲気のおかげで、観客にとっては楽しい一日になるでしょう」
「私の子供たちにとっても本当に楽しそうですし、私も楽しみます。盛り上がる観客の姿や声援を直に見ることができるサーキットは少なく、シルバーストンはその数少ない中のひとつです」
家族や友人がレースに来るからといって、やるべき仕事が減るわけではありません。ホンダとトロロッソのパートナーシップがスタートした今年、キーとスタッフは競争力のあるシャシーを作り上げてきた。しかし、その性能を常に発揮し続けるのは簡単ではない。
「今シーズンはまさにジェットコースターです。現時点のポジションには満足していませんが、その要因はさまざまです。モナコやバーレーンでピエール(ガスリー)はいいペースで走れていたと思いますが、一貫して力を出すことはできていません」
「ペースを上げるカギのひとつがシャシーです。一貫してペースを出せるようにアップグレードを行いました。しかしペースを出すにはバランスが大切で、それがぴったりとハマったらうまくいくでしょう」
「今シーズン、調子の良し悪しでコンマ3秒ほどのラップタイムの差があります。つまり、それによって14番手以内に入るか、Q1で敗退するかの違いがでてきます」
「調子のアップダウンが激しいように見えますが、ライバルとのラップタイム的にはかなり大混戦です。したがって、さまざまな要因を除けば、中団のトップグループで戦える力を持っていると言えます。状況を変えようと努めていることです」
「ホンダとトロロッソはパートナーシップの開始当初からパワーユニットとシャシー双方の改善に取り組んでいますし、いい結果を出すために努力を続けるという部分において両者は想いをともにしています」
今シーズン前半、カナダでのアップグレード導入によるパワー改善にキーは勇気づけられたと言う。
「不調があったとしてもとても小さなもので、パフォーマンスの改善などに集中することができたことはよかったです。そして、その改善が実を結び始めています」
マスコミからは、来シーズン以降のレッドブルへのパワーユニット供給が決まったホンダの動きが注目されている。しかし、よりよいパフォーマンスをするためのホンダの今シーズンの努力が、シャシーを開発するトロロッソへもいい意味でのプレッシャーをもたらしていると言う。
「トロロッソがワークスのパートナーシップを結んだのは初めてです。カスタマーだったときにはベンチテストを行うこともなく、与えられたPUを受け取るだけだったので、いつかワークスとしてやりたいと思っていました。しかし、いざそのチャンスを与えられると、“一体どうやったらいいんだ?”と思ってしまいました」
「本当に大きなチャレンジですし、責任も重大です。シャシー開発に関して会社から任されている部分は大きいですし、その期待に応えなければなりません。今シーズンに向けてメンバーの補強をしたわけではなくこれまでのメンバーと変わりませんが、チームが一丸となってチャレンジに挑み、よくやっています」
ホンダのレッドブルとのパートナーシップは、ホンダとトロロッソの双方にいい効果をもたらすだろうという点で、ジェームス・キーとフランツ・トストは同意見だ。今シーズン中の進化が鈍化したり、シャシーチームの役割が減ったりするのではという見方に、キーは否定的だ。
「我々にとっては昨シーズンよりプレッシャーが少ないだろうと多くの人が言いますが、そんなことはありません。もちろんプレッシャーはあります。ネガティブなプレッシャーよりもポジティブなプレッシャーになるように努めています。私たちはお互いにとてもオープンでフランクです。このことが、私たちが課題を解決し進歩し続けるのに役立っています」
「互いに非難し合うこともなく、オープンにコミュニケーションを取ることができています。パートナーシップがスタートした当初は、昨シーズンまでの難しい状況の影響により、ホンダが少しナーバスで自信をなくしているように見えました。それを彼ら自身の中で少しリセットし、いろいろと状況の整理をすることにより状況が改善できたと思います」
「組織変更を行ったことも助けになったと思います。一人が担っていた非常に重い役責が今は2つにわかれたことで、複雑なタスクをうまくカバーできるようになったと思います」
「ホンダは多くのリソースとパワーを持っていますが、新たなインプットが必要だったと考えています。私たちは前シーズンまでに他のパワーユニットも使っていたので、何をどう進めていくべきか、何が実現可能かを、おおむね理解していました」
「私たちが考えるホンダの役割についても話し合うことができました。彼らは十分な人員、能力、資金力などがあったので、かなり素早く対応することができたと思います」
「ここまで彼らの変化を見てきましたが、ホンダ内部での仕事はうまく進んでいるようですし、今はさらに、信頼性に対する懸念がない状況で仕事を進められています」
「そして、彼らが自信を深めてきていることにも気づきましたた。一緒に働きはじめたときに比べ、よりリスクを取ってチャレンジしようとしています。この調子で続けていけば、いい方向に進んでいくと思っています」
カテゴリー: F1 / トロロッソ
シルバーストンではシャシーの性能が明らかになってしまうし、ドライバーだけでなく、チームのテクニカルディレクターにとってもチャレンジだ。
このサーキットは1950年のF1世界選手権の初開催から使われ続けてきたサーキットなので、F1カレンダーの中でも重要な開催地となる。
トロロッソのテクニカルディレクターのジェームズ・キーは、彼にとってのホームレースでもあるシルバーストンについて、次のように語る。
「ドライバーにとってシルバーストンは、自然体で走るつもりでも、ついうまく走ろうとしてしまうサーキットだと思います。なぜなら、バルセロナのように何年も前からたびたびテストにも使ってきたサーキットで、勝手を知っているからです」
「近年コースレイアウトが変化しているとはいえ、ドライバーにとってもシルバーストンは馴染みのあるサーキットだと思います。現在ではそのようなサーキットは多くはなく、鈴鹿、モナコ、モンツァ、スパ、シルバーストン、バルセロナなどがあるだけです」
「ほかのコース、例えばバクーは、まだまだ理解するのに時間を要します。したがって、ドライバーの頭の中には馴染みのトラックとそうでないトラックがあり、シルバーストンはよく知っているタイプのサーキットです。かといって、特別なプレッシャーを感じることもないでしょう」
なぜ“特別なプレッシャー”について言及されたかというと、ジェームス・キーと同じくトロロッソの多くのスタッフにとってシルバーストンがホームレースだからだ。シルバーストンから15マイル(約24km)ほど離れたビスターにトロロッソの施設があり、英国に家があるキーは英国と(イタリアの)ファエンツァを行き来している。
「シルバーストンは初めて観に行ったグランプリなので、より特別な気持ちがします。私が10歳くらいだったころ、連れてってもらいたくて父親にしつこくねだりました。父はレースファンだったので、無理なお願いではなかったのですが、でもついに行けたんです」
「クラブ・コーナーから観戦していて、ナイジェル・マンセルが優勝したのを覚えています。私にとってずっと大好きなサーキットですし、そこにいるのが楽しくなるサーキットなんです」
「雰囲気はもちろん、ファンなど、シルバーストンのすべてがすばらしいですし、コースそのものが特別です。コプスを走るF1マシンを見るのは、本当に最高な気分です」
トロロッソ代表のフランツ・トストにとってのオーストリアと同様に、シルバーストンはキーの身近な人たちが彼の仕事姿を見る機会になるだろう。
「私の家族や友人が観戦に来ます。他の英国人スタッフもゲストを呼んでいるようですが、私も家族を招くつもりで、本当にうれしいことです。シルバーストンの雰囲気のおかげで、観客にとっては楽しい一日になるでしょう」
「私の子供たちにとっても本当に楽しそうですし、私も楽しみます。盛り上がる観客の姿や声援を直に見ることができるサーキットは少なく、シルバーストンはその数少ない中のひとつです」
家族や友人がレースに来るからといって、やるべき仕事が減るわけではありません。ホンダとトロロッソのパートナーシップがスタートした今年、キーとスタッフは競争力のあるシャシーを作り上げてきた。しかし、その性能を常に発揮し続けるのは簡単ではない。
「今シーズンはまさにジェットコースターです。現時点のポジションには満足していませんが、その要因はさまざまです。モナコやバーレーンでピエール(ガスリー)はいいペースで走れていたと思いますが、一貫して力を出すことはできていません」
「ペースを上げるカギのひとつがシャシーです。一貫してペースを出せるようにアップグレードを行いました。しかしペースを出すにはバランスが大切で、それがぴったりとハマったらうまくいくでしょう」
「今シーズン、調子の良し悪しでコンマ3秒ほどのラップタイムの差があります。つまり、それによって14番手以内に入るか、Q1で敗退するかの違いがでてきます」
「調子のアップダウンが激しいように見えますが、ライバルとのラップタイム的にはかなり大混戦です。したがって、さまざまな要因を除けば、中団のトップグループで戦える力を持っていると言えます。状況を変えようと努めていることです」
「ホンダとトロロッソはパートナーシップの開始当初からパワーユニットとシャシー双方の改善に取り組んでいますし、いい結果を出すために努力を続けるという部分において両者は想いをともにしています」
今シーズン前半、カナダでのアップグレード導入によるパワー改善にキーは勇気づけられたと言う。
「不調があったとしてもとても小さなもので、パフォーマンスの改善などに集中することができたことはよかったです。そして、その改善が実を結び始めています」
マスコミからは、来シーズン以降のレッドブルへのパワーユニット供給が決まったホンダの動きが注目されている。しかし、よりよいパフォーマンスをするためのホンダの今シーズンの努力が、シャシーを開発するトロロッソへもいい意味でのプレッシャーをもたらしていると言う。
「トロロッソがワークスのパートナーシップを結んだのは初めてです。カスタマーだったときにはベンチテストを行うこともなく、与えられたPUを受け取るだけだったので、いつかワークスとしてやりたいと思っていました。しかし、いざそのチャンスを与えられると、“一体どうやったらいいんだ?”と思ってしまいました」
「本当に大きなチャレンジですし、責任も重大です。シャシー開発に関して会社から任されている部分は大きいですし、その期待に応えなければなりません。今シーズンに向けてメンバーの補強をしたわけではなくこれまでのメンバーと変わりませんが、チームが一丸となってチャレンジに挑み、よくやっています」
ホンダのレッドブルとのパートナーシップは、ホンダとトロロッソの双方にいい効果をもたらすだろうという点で、ジェームス・キーとフランツ・トストは同意見だ。今シーズン中の進化が鈍化したり、シャシーチームの役割が減ったりするのではという見方に、キーは否定的だ。
「我々にとっては昨シーズンよりプレッシャーが少ないだろうと多くの人が言いますが、そんなことはありません。もちろんプレッシャーはあります。ネガティブなプレッシャーよりもポジティブなプレッシャーになるように努めています。私たちはお互いにとてもオープンでフランクです。このことが、私たちが課題を解決し進歩し続けるのに役立っています」
「互いに非難し合うこともなく、オープンにコミュニケーションを取ることができています。パートナーシップがスタートした当初は、昨シーズンまでの難しい状況の影響により、ホンダが少しナーバスで自信をなくしているように見えました。それを彼ら自身の中で少しリセットし、いろいろと状況の整理をすることにより状況が改善できたと思います」
「組織変更を行ったことも助けになったと思います。一人が担っていた非常に重い役責が今は2つにわかれたことで、複雑なタスクをうまくカバーできるようになったと思います」
「ホンダは多くのリソースとパワーを持っていますが、新たなインプットが必要だったと考えています。私たちは前シーズンまでに他のパワーユニットも使っていたので、何をどう進めていくべきか、何が実現可能かを、おおむね理解していました」
「私たちが考えるホンダの役割についても話し合うことができました。彼らは十分な人員、能力、資金力などがあったので、かなり素早く対応することができたと思います」
「ここまで彼らの変化を見てきましたが、ホンダ内部での仕事はうまく進んでいるようですし、今はさらに、信頼性に対する懸念がない状況で仕事を進められています」
「そして、彼らが自信を深めてきていることにも気づきましたた。一緒に働きはじめたときに比べ、よりリスクを取ってチャレンジしようとしています。この調子で続けていけば、いい方向に進んでいくと思っています」
カテゴリー: F1 / トロロッソ