佐藤琢磨 インディカー 第3戦
佐藤琢磨が、インディカー 第3戦 アラバマのレース週末を振り返った。

トラブルに苦しみながらもしっかりとポイントを獲得し、ポイントテーブル上の順位を上げられたことは、チームとドライバーが熟達している何よりの証拠といえる。バーバー・モータースポーツ・パークにおける佐藤琢磨は、まさにそれをやってのけた。なにしろ、ブレーキ・トラブルを抱えたアンドレッティ・オートスポーツのNo.26 ダラーラ・ホンダで9位入賞を果たし、チャンピオン争いの8番手に浮上したのだから……。

「もっと上位陣に近いポジションでフィニッシュできたら、もちろんそのほうがよかったでしょう」と佐藤琢磨。

「でも、僕たちはいくつかの問題に悩まされていたので、最終的に手に入れた結果には満足しています。しかも、悪くないポイントを獲得してチャンピオン争いの順位も上がったのですから、長い目で見てもよかったと思います」

3週間前にバーバーで行われたテストで大きな手応えを掴んでいたので、チームは意気揚々としてアラバマでのレースウィークを迎えていた。「数年前まではバーバーでオープンテストを行なうのが恒例となっていました。ただし、3月初旬に開催されるためにとても気温が低く、たとえ太陽が出ていても凍えるように寒いので、どうしても待ち時間が長くなっていました。それと、バルセロナでのF1テストと同じで、温度がマシンのバランスやパフォーマンスに与える影響が大きく、コンディションの異なるレースウィークエンドにはあまり役に立たないという傾向もありました」

「それに比べると3週間前に行ったテストのときはずっと温かく、マシンのバランスとパフォーマンスもとても満足のいくものでした。しかも午前中はトップ、午後も6番手だったので、レースウィークを楽しみにしていました」

ところが、金曜日のフリープラクティスは期待外れに終わる。

「初日、僕たちのマシンはあまり調子がよくありませんでした。あの日は、普段では考えられないほど暑く、まるで夏のようでした。気持ちのいい1日でしたが、テストのときに比べるとバランスは大きくシフトしていました。また、ブレーキに問題があることも明らかになります。結果的に、これは素材が安定していないことが原因だと突き止めました。ペダルのフィーリングは良好なのに、コントロールがとても難しく、何度もタイアをロックさせてしまいました。バーバーでは、コーナー進入の姿勢を決められない限り、いいタイムは記録できません。もしも正確にブレーキングできなければ、コーナーではひどいアンダーステアになり、出口ではスナップオーバーに見舞われます。でも、チームメイトのマルコ・アンドレッティはとてもコンペティティブでした。僕は4カーチームの特権を存分に活用し、彼のセットアップを“コピー&ペースト”して最良の道を探ることにしました」

土曜日のプラクティスで状況は好転。新しいブレーキを手に入れた佐藤琢磨はいいムードに包まれていた。しかし、このセッションの最後に起きたことは、佐藤琢磨のグリッド・ポジションに大きな影響を与えることとなる。佐藤琢磨は14番手につけていたのだが、トニー・カナーンが最後のラップで佐藤琢磨を15番手に蹴落としたのだ。予選グループの区分はこのセッションにおける順位の奇数・偶数によって決まるのだが、佐藤琢磨と同じ奇数グループにはペンスキーの3人 —— ウィル・パワー、エリオ・カストロネヴェス、シモン・パジェノ —— が含まれていたほか、これまでに4度チャンピオンに輝いたスコット・ディクソン、2017年のシリーズリーダーであるセバスチャン・ブルデー、アンドレッティのエース級であるライアン・ハンター-レイなどが揃っていたのである。激戦となることは目に見えていた。

「信じられませんでした! それでもトップ6に入ってQ2に進められそうでしたが、最後の最後に僕とライアンの間にブルデーが割って入ってきたのです。それもものすごい接戦で、惜しいところでQ2進出を逃しました」

実際のところ、佐藤琢磨はあと100分の6秒速ければQ2に駒を進めていた。この結果、佐藤琢磨は14番グリッドからスタートすることが決まる。

残念なことに、決勝日朝のウォームアップは雨のために台無しとなってしまう。もちろん、佐藤琢磨はウェットコンディションが大好きだが、レースがドライになることがわかっているときには、好ましい状態とはいえないだろう。

「金曜日のセットアップには満足できなかったうえ、土曜日は予選のことに集中していたので、これまでとは異なるセッティングを試したいと思っていました。したがって、ここではあまり物事が捗りませんでしたし、はっきりとした見通しが立たないまま決勝を迎えることになりました」

レース前に不運なメカニカル・トラブルによって脱落したマルコ・アンドレッティによって一つ順位を上げ、佐藤琢磨はオープニングラップの小競り合いを潜り抜けてオーバーテイクを演じ、2ラップ目を終えたところで9番手まで浮上。ここで、この日2度提示されたコーションの1回目を迎える。原因はコース上の破片だった。

「スタートは楽しかったですよ! バーバーはオーバーテイクがとても難しいので、レースが落ち着くまでの最初の何コーナーかが勝負となります。ターン2とターン3はアウト側に回り込んだのに続き、ターン5のヘアピンでもアウトから攻めて、いくつか順位を上げました。最初はマシンの調子もよかったのですが、間もなくドライブしづらくなります。ひどいオーバーステアで、コース上に留まっているだけでも大変な状態でした。とても苦しい展開です。リアタイアの摩耗が進行するとさらにリアのグリップは落ち込み、オーバーステアはさらに強まりました」

「しかも、最初のスティントで新たなブレーキ・トラブルが発生します。ブレーキングするとマシンがブルブルと振動するようになったのです。右リアのブレーキ温度が常識外れなレベルまで上がっていました。これは、左フロント・ブレーキがなくなってしまったロングビーチのときと似た症状でした。そこでブレーキバイアスを大きく変更しなければいけなくなったのです」

グリップに関連する問題は柔らかめのレッドタイアによるデグラデーションが原因だったので、次のスティントではブラックタイアに交換することを決める。ここまでに、他のドライバーが早めのピットストップを行ったこともあり、佐藤琢磨は一時5番手に浮上。続くスティントでは10番手前後につけていたが、最後のスティントではわずかにトップ10圏外に落ちてしまう。レース終盤にはもう1度、イエローが提示され、ほとんどのドライバーがここでピットストップ、そのままフィニッシュを目指すこととなる。このとき佐藤琢磨は12番手でコースに復帰した。

「イエローが出たとき、僕たちはリスタートでのパフォーマンスを優先してレッドタイアを装着しました。僕は何台かのマシンとバトルを演じ、いくつか順位を上げました。けれども、ブレーキ・トラブルに苦しんでいたため、ヘアピンの進入でマシンを停められず、タイアを激しくロックさせてしまいます。このときタイアにフラットスポットができました。タイアが丸くなくなったせいで、レースが終わってからも僕の目と腕は揺れているような感じがしました!」

ロックアップをしながらも佐藤琢磨はマックス・チルトンをパスして11番手に浮上。しかし、すぐにチルトンに抜き返されて12番手となる。次の攻防ではイギリス人ドライバーを仕留めて11番手に返り咲くと、今度はチャーリー・キンボールを抜いて10番手に駒を進めた。最後のコーション中にピットストップを行わなかったキンボールは、ここで給油を行ったのだ。さらにタイアのパンクによりパワーがピットに舞い戻ったことで9番手となる。

「いいスティントでした。最初はハンター-レイ、続いてミカイル・アレシンを抑えなければいけませんでしたが、なんとか彼らの行く手を遮りました。長く、厳しい戦いでした。自分たちが期待するような最高の結果ではありませんでしたが、力強いパフォーマンスを示せたと思います」

佐藤琢磨たちはバーバーから真っ直ぐフェニックスに向かい、土曜日の夜に行われるレースに挑む。

「昨年のフェニックスではライバル陣営が好調でした。けれども、ホンダは大きな進化を果たしています。フェニックスはとてもチャレンジングなコースです。本当に、信じられないほどで、コーナーでは長い時間、5Gを発生させることになります。このショートオーバルでは既にテストも行なっているのでで、力強くレースを戦えることを期待しています」

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カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨 / インディカー