2026年F1プレシーズンテストで見えた11の論点 勢力図と技術トレンド

その中でも特に重要な11の論点を、できる限り具体的に整理する。
■ フェラーリの本物のポテンシャルとその但し書き
シャルル・ルクレールはテスト全体で最速タイムを記録した。フェラーリが競争力のあるパッケージを持っていることは疑いようがない。単発の速さだけでなく、ロングランでも印象的なタイムを刻み続けたことで、レースペース面でも強みを示した。
しかし同時に、フェラーリが自らのマシンの最大ポテンシャルにかなり近い領域までパフォーマンスを明かしていたことも確かだ。一方でメルセデスは、より多くの余力を残していたと見られている。
ルクレールは「各チームが本当の姿を隠しているので、我々がどこにいるのか理解するのは難しい」と認めている。テストでの“サンドバッグ”は誇張されがちだが、メルセデスが相当なペースを温存しているという見方は強い。
さらに、カスタマーチームであるマクラーレンも決定版のパワーユニット仕様では走っていなかったとされる。オーストラリアではその最終仕様を投入する見込みで、パフォーマンス向上が期待されている。
それでもフェラーリが力強いスタートを切ったのは事実だ。ただし、開幕戦で1秒差を築くという状況にはならないだろう。

■ 2026年は再び“2クラス制”へ
2025年には7チームが表彰台を獲得したが、2026年の開幕時点では再び2クラス構造になる可能性が高い。
前レギュレーション終盤はグリッドの収束が進み、中団勢がトップの失速を突いて結果を出す場面も見られた。しかし2026年は、少なくとも序盤においてはその構図は難しい。
中団最上位と見られるアルピーヌのピエール・ガスリーはトップから1.4秒遅れだった。最終タイム表ではレッドブルとアルピーヌ/ハースとの差は0.3秒だったが、より実態に近い差は前者と見られている。
現時点ではトップ4チームが数コンマ差で拮抗し、そこから少なくとも1秒のギャップが中団との間に存在する構図が予想される。
コスト上限や空力テスト制限があっても、施設、ツール、人材など長年の蓄積による優位性は依然として残っていることが示された。

■ アストンマーティンの悪夢はすぐには終わらない
アストンマーティンはホンダとの困難なプレシーズンを、最終日にわずか6周(タイム未計測)で終えるという象徴的な形で締めくくった。
2週間後のオーストラリアGPで両マシンが完走し、バーレーンよりも体裁を整えた姿を見せる可能性はある。しかしそれには膨大な作業が必要だ。
現実として、アストンマーティンはパワー面と信頼性面でのハンデ、そしてまだ理解が十分でないマシンという3つの課題を抱えてシーズンを迎える。
ポテンシャルは否定されていないが、それを引き出すまでには相当な時間がかかると見られている。

■ イノベーションは死んでいない
新レギュレーションはしばしば画一化を招くと懸念されるが、今回のテストでは注目すべき技術革新が数多く見られた。
アウディは初回バーレーンテストで完全新設計のサイドポッドを導入した。フェラーリはドライブシャフトを斜め配置した設計を活かし、排気後方にフローコンディショニングデバイスを追加した。
さらに話題をさらったのは、100度以上回転するフェラーリのアクティブ・リアウイングだった。抗力低減の自由度拡大を最大限に活用した設計である。
メルセデスも最終日に“第4要素”とも表現できる構造を持つ新リアウイングを投入した。
マシンの外観はそれぞれ明確に異なり、パワーユニットの音もチームごとに違いがある。エネルギー回生とデプロイ戦略の違いはシフトダウンやギア選択にも影響を与え、2026年型マシンは多様性に富んでいる。

■ 目標ペースはすでに到達
導入前には「マシンが遅すぎるのではないか」という懸念が断続的に浮上していた。しかしルクレールが記録した1分31秒992というベンチマークが、その懸念を払拭した。
これは前年のポールタイムから2.151秒遅れで、レギュレーション策定側が示していた「1〜2秒差」の想定範囲に近い数値だ。
このタイムはC4タイヤで、3日間の走行を経て路面が理想的な状態となった終盤に記録されたものだが、今後の開発進展を考えれば、2026年のポールタイムは想定ゾーン内に収まる見通しだ。

■ アルピーヌは“最下位メルセデス勢”ではない
アルピーヌは目立たない形で順調なテストを終えた。昨年最下位だったチームは、中団の中でリーダー争いに加わる位置に戻ったと見られている。
マネージングディレクターのスティーブ・ニールセンは「昨年から前進したと確信しているが、どこに位置しているかは分からない」と語った。
フラビオ・ブリアトーレ主導の戦略的決断であるメルセデス製パワーユニットへのスイッチは、現時点で最有力と見られるパワーユニットを得ることにつながった。
ワークスや王者マクラーレンを倒すことは想定外だが、“3番目のメルセデス勢”としての地位確立が現実的な目標となる。テストではその位置にあった。
ウィリアムズは苦戦したが、その一因は重量超過と見られ、今後の改善が予定されている。一方でアルピーヌは最低重量に達しているとされる。
今後の焦点は、シーズン前半でそのポジションを維持できるかにある。オーストラリアではピエール・ガスリーとフランコ・コラピントが中団上位争いに加わることが期待されている。

■ アウディの堅実なゼロ地点
アウディは中団主力のすぐ後ろに位置していると見られる。チーム自体はザウバーを母体としているが、新パワーユニットとギアボックスの自社製造体制という意味では新規参入に近い状況だ。
テスト序盤はトラブルもあったが、徐々に改善し、ガブリエル・ボルトレトの終盤アタックによって最終タイムでは1.758秒差に収まった。
走行距離は約5000kmでランキング8番手。信頼性面の疑問は残るものの、シーズン序盤を戦うための基盤は築いた。
大量得点が期待できる位置ではないが、Q2下位争いに加わる現実的なスタート地点だ。

■ エンジン“プランB”の模索
バッテリー充電とエネルギー管理を巡る懸念は今回のテストで顕在化したが、完全には露呈していない。
バーレーンは比較的回生に適したサーキットだが、他のコースでは状況が異なる。開幕戦オーストラリアはその最初の試金石となる可能性がある。
FIAは即断を避けているが、テスト中にいくつかの対策を試験した。レーストリムで電力を350kWから300kWに抑える案、そしてエンジン全開時にMGU-Kを逆向きにフル出力で使って充電する“スーパー・クリッピング”の試験だ。
理論上、これらを組み合わせれば過度なリフト&コーストを減らし、ピーク出力は若干下がるものの使用可能時間を増やせる。
メルボルンまでに変更はないが、議論は続く。

■ キャデラックは真剣に受け止められている
新規参戦のキャデラックは、主要目標をすべて達成したと評価している。
長らく参戦が承認されなかった背景には競争力への疑問もあったが、堅実な姿勢と基盤づくりによって他チームの敬意を得たとチーム代表グレアム・ロードンは語る。
「多くのチームから非常に好意的なメッセージを受け取った」と彼は明かした。
最終週のトラブルで走行距離はやや伸び悩んだが、266周は極端に少ない数字ではない。パフォーマンス面でも大きく離されてはいない。
107%ルールに抵触する懸念はなく、堅実なバックマーカーとしての出発を果たした。

■ スタート不安は大部分が解消
MGU-H廃止によりターボラグが発生しやすくなったため、スタート手順に新たな事前フェーズが導入された。
5秒間の保持時間を設けることで、ドライバーがターボ回転を十分に上げる時間を確保できるようにした。4秒への短縮も検討されている。
さらに、スタートから第1コーナーまでコーナリング・アクティブエアロモードを使用することで、加速局面でのダウンフォースを最大化し、安全面の懸念を軽減することが合意された。
それでも発進の質にはばらつきが見られ、メルボルンで何が起きるかは依然として未知数だ。

■ メルセデス余力とマクラーレンPU要素
フェラーリが最速で終えた一方で、メルセデスは相当な余力を残していると見られている。開幕戦では勢力図が変わる可能性がある。
さらにマクラーレンは決定版のパワーユニット仕様をまだ投入していなかったとされる。オーストラリアでの仕様変更はトップ争いをさらに接近させるかもしれない。
つまり、テスト結果はあくまで序章であり、2026年の本当の序列はまだ確定していない。
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