佐藤琢磨 「今後に期待の持てるレースだった」
佐藤琢磨は、バーバー・モータースポーツ・パークで開催されたIZODインディカーシリーズ第2戦で、開幕戦に続く目覚ましいスピードを披露したが、予期しないふたつの出来事が起きたおかげで、上位争いに食い込めたはずのレースを中位グループで終えることになった。
ファイアストン・ファスト6に進出して上位グリッドを手に入れるチャンスを奪われた佐藤琢磨は、レース中の2度目のピットストップで30秒ほどの時間をロスすることになる。
しかし、流れるようにコーナーが続くアラバマのロードコースにおいて、佐藤琢磨はレース後半にドラマチックな反撃を見せ、14位でチェッカードフラッグを受けた。
この週末、佐藤琢磨とAJフォイト・レーシングが取りかかった最初の仕事はマシンのバランスを改善することだった。
「1ヵ月前にバーバーで行われたオープンテストに参加しました」と琢磨。「ペースは悪くありませんでしたが、いくつか改善したいと思うポイントがありました。この作業はプラクティスまで続いたものの、バランスには改善の余地が残されており、スピードも不十分でした。レッドタイアで臨む予選についてはあまり心配していませんでしたが、昨年とはタイアの仕様が異なっているので、推測をもとに作業を進めなければいけない部分が残されていました」
そのような状況だったから、最初の予選グループで3番手に入り、12台が出走した予選の第2ラウンドで4番手となったことに佐藤琢磨が喜んだのは当然のことだった。そして順当にファイアストン・ファスト6に駒を進むはずだったにもかかわらず、ジャスティン・ウィルソンをブロックしたと見なされたためにベストラップを抹消され、佐藤琢磨は12番グリッドからスタートすることになった。
「予選についてはものすごく満足していました。レッドタイア用のセッティング変更が的中したのです。おかげでグリップとスピードが改善され、力強く戦うことができました」
「ジャスティンとの間に起きたことは非常に残念でした。とても不運な連鎖反応が起きてしまったのです。最初の予選ラップでジェイムズ・ジェイクに急接近した僕は、次のアタックに備えてスピードを緩め、彼との間に十分な間隔をとることにしました。ターン5の出口でバックミラーを見たときは、まだ誰も映っていませんでした。コークスクリューとなっているターン7〜8は起伏の激しいセクションですが、ここでジャスティンが猛然と迫ってきていることに気づいたので、急いでラインを譲りました」
「彼をブロックしないように努めたのはもちろんですが、それでも接近してしまったのは事実です。おそらく2列目グリッドは狙えたと思うので、ファイストン・ファスト6に進出できなかったのは本当に残念でした」
決勝で佐藤琢磨は直ちに順位を上げていった。オープニングラップでジェイクスをパス。その後のリスタートでエリオ・カストロネヴェスとセバスチャン・サーヴェドラを仕留めると9番手に浮上した。
「バーバーではいつもそうですが、今回もスタートはものすごい接近戦になりました! 最初はあまり順位を上げられませんでしたが、その後、すぐにフルコーションとなりました。その後のリスタートで僕はアウト側のポジションでしたが、ターン3には3ワイドで進入していきました。ターン4からターン7にかけては、ウィル・パワーと熾烈なサイド・バイ・サイドを演じました。けれども、この直後、僕たちは一列縦隊となり、レースは膠着状態に陥りました。ブラックタイアを履いたマルコ・アンドレッティを先頭に、レッドタイアを装着したドライバーたちがその後に続く形になったのです。目の前さえ開けていれば、もっと速く走れたでしょうが、僕たちはアンドレッティの後ろに連なる形になったのです」
4番手のアンドレッティが率いるグループのなかで、佐藤琢磨はパワーの直後にあたる6番手につけていた。ペースを抑えられ続けていた佐藤琢磨は早めにピットストップを行い、使用が義務づけられているブラックタイアに履き替えたが、すでにピットストップを行ったドライバーがいた関係で順位は大きく入れ替わっており、コースに戻ったときは13番手となった。
そして2度目のピットストップを行ったときに、佐藤琢磨に不運が襲いかかった。
「何が起きたのか、いまも調査を行っているところですが、クラッチに関連する電気系トラブルだった可能性が考えられます。まず、1速に入れられなくなりました。そこでギアボックスのエマージェンシー・モードを使ったところ、いきなり1速に入り、エンジンがストールしてしました。おかげで長い時間をロスすることとなりました」
これで35秒を失った佐藤琢磨は、一時的にトップに立ったチャーリー・キンボールが2度目のピットストップを行うまで、周回遅れとなってしまう。しかし、この状況から脱すると、佐藤琢磨は新しいレースリーダーから逃れようとして全力でダッシュし、この時点でコース上を走る誰よりも速いラップタイムを何度も記録することとなる。このとき佐藤琢磨は23番手まで沈み込んだが、それまでの失地を挽回しようとして懸命に走っていた。
「3番目のスティントは順調でした。目の前にブラックタイアを履くドライバーが何人かいましたが、彼らは容易にオーバーテイクすることができました」
最後のピットストップを終えた佐藤琢磨は中位グループに追いつき、ペースが鈍ったボルデーやグレアム・レイホールを尻目にオリオール・セルヴィアを攻略すると、続いてJRヒルデブランドを仕留めて見せた。しかも、この日の佐藤琢磨は再びドリンクボトルに問題を抱え、水分補給できない状況で戦っていたのだ。
「激しいバトルがいくつかありましたが、特にJRやオリオールとの戦いは面白かったですね。残り2周となったとき、プッシュ・トゥ・パスはあと3回分残っていたので、1周で1回ずつ使うことにし、残り1回は何かのときのためにとっておくことにしました。そして、それが実際に起きたのです。最後のコーナーでスローダウンしていたグレアムを見つけたオリオールはアウトサイドに避けましたが、おかげで加速が一瞬遅れます。これで彼の直後につけるチャンスを手に入れた僕は、プッシュ・トゥ・パスを使い、彼より数10cmほど先にフィニッシュラインを通過しました」
インディカーシリーズ第3戦はカリフォルニア州のロングビーチで開催されるが、その前に佐藤琢磨は母国に戻ってスーパーフォーミュラ・シリーズの開幕戦に出場する。昨年までフォーミュラ・ニッポンと呼ばれていたこのシリーズに、佐藤琢磨はホンダ・エンジンを用いるチーム無限から何度か参戦したことがある。
「バーバーでの第4スティントでは何度もバトルを行うことができました。また、マシンのパフォーマンスを確認できて自信が得られたほか、最後のピットストップはなかなか素早かったと思います。全般的にいって、今後に期待の持てるレースでしたが、問題点がなかったわけではないので、それらをできるだけ速く解決したいと期待しています」
「今年の僕たちはストリートコースでもロードコースでも好調なので、ロングビーチが楽しみです」
「でも、その前に日本を訪れます。きっとエキサイティングな週末になるでしょう。チームのことはよく知っていて、改善しなければいけない点があることもわかっていますが、きっと上手くいくと思います。それに、シーズンのこんな早い時期に日本のファンの皆さんと会えることも楽しみです!」
カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨 / インディカー
ファイアストン・ファスト6に進出して上位グリッドを手に入れるチャンスを奪われた佐藤琢磨は、レース中の2度目のピットストップで30秒ほどの時間をロスすることになる。
しかし、流れるようにコーナーが続くアラバマのロードコースにおいて、佐藤琢磨はレース後半にドラマチックな反撃を見せ、14位でチェッカードフラッグを受けた。
この週末、佐藤琢磨とAJフォイト・レーシングが取りかかった最初の仕事はマシンのバランスを改善することだった。
「1ヵ月前にバーバーで行われたオープンテストに参加しました」と琢磨。「ペースは悪くありませんでしたが、いくつか改善したいと思うポイントがありました。この作業はプラクティスまで続いたものの、バランスには改善の余地が残されており、スピードも不十分でした。レッドタイアで臨む予選についてはあまり心配していませんでしたが、昨年とはタイアの仕様が異なっているので、推測をもとに作業を進めなければいけない部分が残されていました」
そのような状況だったから、最初の予選グループで3番手に入り、12台が出走した予選の第2ラウンドで4番手となったことに佐藤琢磨が喜んだのは当然のことだった。そして順当にファイアストン・ファスト6に駒を進むはずだったにもかかわらず、ジャスティン・ウィルソンをブロックしたと見なされたためにベストラップを抹消され、佐藤琢磨は12番グリッドからスタートすることになった。
「予選についてはものすごく満足していました。レッドタイア用のセッティング変更が的中したのです。おかげでグリップとスピードが改善され、力強く戦うことができました」
「ジャスティンとの間に起きたことは非常に残念でした。とても不運な連鎖反応が起きてしまったのです。最初の予選ラップでジェイムズ・ジェイクに急接近した僕は、次のアタックに備えてスピードを緩め、彼との間に十分な間隔をとることにしました。ターン5の出口でバックミラーを見たときは、まだ誰も映っていませんでした。コークスクリューとなっているターン7〜8は起伏の激しいセクションですが、ここでジャスティンが猛然と迫ってきていることに気づいたので、急いでラインを譲りました」
「彼をブロックしないように努めたのはもちろんですが、それでも接近してしまったのは事実です。おそらく2列目グリッドは狙えたと思うので、ファイストン・ファスト6に進出できなかったのは本当に残念でした」
決勝で佐藤琢磨は直ちに順位を上げていった。オープニングラップでジェイクスをパス。その後のリスタートでエリオ・カストロネヴェスとセバスチャン・サーヴェドラを仕留めると9番手に浮上した。
「バーバーではいつもそうですが、今回もスタートはものすごい接近戦になりました! 最初はあまり順位を上げられませんでしたが、その後、すぐにフルコーションとなりました。その後のリスタートで僕はアウト側のポジションでしたが、ターン3には3ワイドで進入していきました。ターン4からターン7にかけては、ウィル・パワーと熾烈なサイド・バイ・サイドを演じました。けれども、この直後、僕たちは一列縦隊となり、レースは膠着状態に陥りました。ブラックタイアを履いたマルコ・アンドレッティを先頭に、レッドタイアを装着したドライバーたちがその後に続く形になったのです。目の前さえ開けていれば、もっと速く走れたでしょうが、僕たちはアンドレッティの後ろに連なる形になったのです」
4番手のアンドレッティが率いるグループのなかで、佐藤琢磨はパワーの直後にあたる6番手につけていた。ペースを抑えられ続けていた佐藤琢磨は早めにピットストップを行い、使用が義務づけられているブラックタイアに履き替えたが、すでにピットストップを行ったドライバーがいた関係で順位は大きく入れ替わっており、コースに戻ったときは13番手となった。
そして2度目のピットストップを行ったときに、佐藤琢磨に不運が襲いかかった。
「何が起きたのか、いまも調査を行っているところですが、クラッチに関連する電気系トラブルだった可能性が考えられます。まず、1速に入れられなくなりました。そこでギアボックスのエマージェンシー・モードを使ったところ、いきなり1速に入り、エンジンがストールしてしました。おかげで長い時間をロスすることとなりました」
これで35秒を失った佐藤琢磨は、一時的にトップに立ったチャーリー・キンボールが2度目のピットストップを行うまで、周回遅れとなってしまう。しかし、この状況から脱すると、佐藤琢磨は新しいレースリーダーから逃れようとして全力でダッシュし、この時点でコース上を走る誰よりも速いラップタイムを何度も記録することとなる。このとき佐藤琢磨は23番手まで沈み込んだが、それまでの失地を挽回しようとして懸命に走っていた。
「3番目のスティントは順調でした。目の前にブラックタイアを履くドライバーが何人かいましたが、彼らは容易にオーバーテイクすることができました」
最後のピットストップを終えた佐藤琢磨は中位グループに追いつき、ペースが鈍ったボルデーやグレアム・レイホールを尻目にオリオール・セルヴィアを攻略すると、続いてJRヒルデブランドを仕留めて見せた。しかも、この日の佐藤琢磨は再びドリンクボトルに問題を抱え、水分補給できない状況で戦っていたのだ。
「激しいバトルがいくつかありましたが、特にJRやオリオールとの戦いは面白かったですね。残り2周となったとき、プッシュ・トゥ・パスはあと3回分残っていたので、1周で1回ずつ使うことにし、残り1回は何かのときのためにとっておくことにしました。そして、それが実際に起きたのです。最後のコーナーでスローダウンしていたグレアムを見つけたオリオールはアウトサイドに避けましたが、おかげで加速が一瞬遅れます。これで彼の直後につけるチャンスを手に入れた僕は、プッシュ・トゥ・パスを使い、彼より数10cmほど先にフィニッシュラインを通過しました」
インディカーシリーズ第3戦はカリフォルニア州のロングビーチで開催されるが、その前に佐藤琢磨は母国に戻ってスーパーフォーミュラ・シリーズの開幕戦に出場する。昨年までフォーミュラ・ニッポンと呼ばれていたこのシリーズに、佐藤琢磨はホンダ・エンジンを用いるチーム無限から何度か参戦したことがある。
「バーバーでの第4スティントでは何度もバトルを行うことができました。また、マシンのパフォーマンスを確認できて自信が得られたほか、最後のピットストップはなかなか素早かったと思います。全般的にいって、今後に期待の持てるレースでしたが、問題点がなかったわけではないので、それらをできるだけ速く解決したいと期待しています」
「今年の僕たちはストリートコースでもロードコースでも好調なので、ロングビーチが楽しみです」
「でも、その前に日本を訪れます。きっとエキサイティングな週末になるでしょう。チームのことはよく知っていて、改善しなければいけない点があることもわかっていますが、きっと上手くいくと思います。それに、シーズンのこんな早い時期に日本のファンの皆さんと会えることも楽しみです!」
カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨 / インディカー