佐藤琢磨、ディクソンとの戦いの中で「最後まで爪を隠していた」  / インディ500
佐藤琢磨は、2020年にインディ500の決勝レースで優勝を争うことになったスコット・ディクソンとの戦いのなかで“最後まで爪を隠していた”と語る。

佐藤琢磨は合計2度、27周のリードラップしか記録しなかった。しかし、レース終盤の最も重要なタイミング、最後のピットストップを終えてからチェッカーフラッグを受けるまでの時間帯は、ライバル勢を寄せつけないスピードを持っていた。

200周のレースが終盤を迎え、優勝争いを行うドライバーはディクソンと佐藤琢磨に絞り込まれました。佐藤琢磨は168周目、ディクソンはその次の周に最後のピットストップを終えた。ここでディクソンがトップに返り咲き、佐藤は2番手に下がったが、185周目にメインストレートでディクソンをパスし、レースのリーダーとなった。

ここからの佐藤琢磨はディクソンのアタックを何度も阻止し、周回遅れのマシンをパスしながら前進した。そして、佐藤琢磨とディクソンが196周目へと入った直後、第4ターンでスペンサー・ピゴット(Rahal Letterman Lanigan Racing with Citron Buhl Autosport)が激しくクラッシュし、フルコースコーションが宣言された。

レッドフラッグ、レース中断となる可能性も考えられたが、イエローフラッグのままレースはゴールを迎えた。佐藤琢磨にとっては2017年の”500”初優勝に続く、インディでの2度目の優勝となった。

「後々のインタビューを見ると、ディクソンとガナッシ勢は、僕が捨て身の作戦で燃料がもたないなかで全力で走っている、彼らは僕たちが燃料切れになるのを待っていたらしいのですが、そんなことはまったくないです」と佐藤琢磨は語る。

「自分はしっかりと燃料計算をして、特にに最後の3周はフルパワーで走れる燃料計算の元で走らせていました。今こうして話しても余裕があるくらいででした」

「もちろんやっているときは、ピットと交信しながら『とにかくフルパワーで走らせてくれ』と、でも、チーム側は『待て、もう少し燃費を稼いでからだ』という攻防で緊張感が高かったですが、それでも非常に落ち着いて走ることができました」

「すべてが、本当に最後のスティントのために完璧に順序立てて、組み立てができたレースだったのではないかなと思います」

「その結果、勝つことができました。僕は最終的にはハンドルを握りましたけど、そこに至るまで準備で本当にチームの力が大きかったです。チームが素晴らしいクルマを作ってくれたこと、ミスなくすべてのピット作業を完璧にこなしてくれたこと、そして、間違いのない自分たちが実力をしっかり発揮できるような戦略をしっかり立てて、そのとおりにレースを運べたこと。それはチームの力です。それに自分自身がしっかりと走ることができたということです」

「常にトップ3で走っていたということで準備ができていました。なぜ、残り40周のなかで早めに仕掛けたかというと、それだけ時間があれば本当にまだまだ最後のピットストップを残していたので」

「最後の2スティントはクルマを触りたくなかったですが、当然日が少し傾き始めていて、気温も路面温度も変わり始めていて、1コーナーだけ影ができてくるなど、コンディションが変わってきます。ラバーも乗ってきますし。そのなかでディクソンの走り方を見て、戦い方を見て、前半と後半で違う可能性がある。そのときに自分が対策できる時間というのが作りたかったんです」

「それを確認して、ファステストラップを出したのは僕がピットアウトをすませて、ディクソンがピットアウトをすませて、パワーをミクスチャーをベストの状態でニュータイヤで出したときです。あのときに一番実力を出す必要があって、レースの前半ではむしろライバルにはそれを見せたくなかったのです」

「なぜかというと、そのスピードを見せてしまうと、インディ500はフロントウィングだけでなく、リアウィングも変更可能で、タイヤ交換の秒数以内ででほとんどロスタイムなくできます。それの調整を与えたくなかったのです」

「最後まで爪を隠していたというか、それくらい余裕を持ってレースを運べていました」

「ディクソンを抜いたときに、最終スティントなので、今こそ実力を出すべきだと。ファステストを出して、実際ディクソンがどれくらい付いてこれるのか抜きにかかるのかというのを見ていました」

「彼がすぐ抜きに来るようであれば一度バックオフして、3周ないしは5周の間で様子を見ながら順位を入れ替える。リードできるようだったらリードする。それを続けて残り10周に持ち込みたかった」

「ただ、残り10周になったときには絶対にレースはリードしていたかった。というのは、2017年の勝利のときにも少し話しましたが、今回それが起きてしまったのですが、イエローが入ったら終わりなんです。なので、イエローが入っても、そのときにトップを走っていることがすごく必要でした」

「2台だけの一騎打ちになったときは必ずしも先頭が有利というわけではないのですが、どうしても今回は先頭を走りたかった。唯一、懸念があるとすればトラフィックですが、そのトラフィックのドラフティングを使って、パワーベストではなく、燃費重視のミクスチャーでありながら、平均速度220mph以上を記録している」

「おそらくディクソンはパワーベストで走っているよりも速い状態なので、彼は僕がものすごい飛ばして燃料切れになると思った。ガナッシチームがそう思ったのは無理もないのです。それくらいスピードに乗せることができていました」

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カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨