レッドブルF1 最強から5番手転落の理由 予算上限違反とキーパーソン流出
かつてF1を席巻したレッドブルが、2025年シーズンでは中団グループに埋もれつつある。RB21はマクラーレンやフェラーリ、メルセデスに後れを取り、優勝争いには加われていない。その失速の背景には、財政規律のほころびと技術部門の屋台骨を支えた人材の流出がある。

2021年、レッドブルはF1のコストキャップを違反した。これがFIA(国際自動車連盟)によって確認されたのは2022年だったが、その代償は大きかった。

チームはトップクラスの設計エンジニアに対して十分な昇給を提示できず、ロブ・マーシャルとエイドリアン・ニューウェイという2人の重要人物が“より良い環境”へと去っていった。

マーシャルはマクラーレンに加入し、同チームのマシンを一気に強豪へと変貌させた。一方ニューウェイは、アストンマーティンの2026年マシンの設計に取り組んでいる。

チーム代表のクリスチャン・ホーナーにも、この人材流出の責任の一端はある。仮に自らの給与を削ってでも予算を捻出していれば、2人のエンジニアを引き留められたかもしれない。

2人が去った後、ピエール・ワシェが設計部門のトップに就いたが、RB20とRB21はいずれも継続的に期待外れのパフォーマンスに終始している。

最近、レッドブルはホーナーを解任し、後任にレーシングブルズの元代表ローラン・メキースを起用した。しかし、車両設計の指揮は依然としてワシェが握っており、チームの苦戦は当面続くと見られている。

レッドブル・レーシング2025年5月3日、マイアミ・インターナショナル・オートドロームで行われたF1マイアミGP予選中、ピットウォールで指示を出すオラクル・レッドブル・レーシングのテクニカルディレクター、ピエール・ワシェ(Photo by Mark Thompson/Getty Images)

RB21の弱点を時折覆い隠しているのは、ただただマックス・フェルスタッペンの卓越した才能によるものだ。しかしレース本番では、マクラーレン、フェラーリ、メルセデスが優位に立っている。レッドブルのセカンドドライバーは誰が座っても、マシンの競争力不足により太刀打ちできていない。

フェルスタッペン自身も、レッドブルの「勝てる時代」が終わったことを悟っており、2025年限りでメルセデスやアストンマーティンへ移籍するのではないかと噂されている。

さらに2026年にはホンダがレッドブルへのエンジン供給を終了する。角田裕毅も結果を残せていないことから、メキースは将来有望な若手を起用する可能性がある。たとえば、VCARB 02でポテンシャルを見せているアイザック・ハジャーや、F2およびシルバーストンのFP1で印象を残した17歳のジュニアドライバー、アービッド・リンドブラッドだ。

あるいは、フェルスタッペンがメルセデスに移籍した場合、その見返りとしてジョージ・ラッセルがレッドブル入りし、ハジャーとコンビを組むというドライバースワップのシナリオもあり得る。

また、もしメルセデスがフェルスタッペンとラッセルのペアを維持した場合、ルーキーのキミ・アントネッリは“レンタル”という形でメルセデス・エンジンを使うチーム──たとえば不調のフランコ・コラピントが乗るアルピーヌ──に送り込まれる可能性もある。

メキースにとっては難題山積だ。最優先すべきは、ロブ・マーシャルをレッドブルに呼び戻すことだろう。ホーナー解任によって予算に余裕が生まれた今こそ、そのリソースを最大限に活用すべきタイミングだ。マーシャルの技術がなければ、ワシェの設計は今後も競合に後れを取る可能性が高い。

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カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング