レッドブルF1の“賭け”戦略 モナコでフェルスタッペンに託した逆転の一手

この戦略は、予選4番手からスタートし、ハードタイヤでロングスティントをこなした後、ミディアムで50周という非常に長い2スティント目を走る内容だった。
今大会特有のレギュレーションにより、レース中には最低でも2種類のコンパウンド、合計3セットのタイヤを使用することが義務付けられていた。C6のソフトタイヤは数周しか保たないため、戦略の主軸はC4ハードとC5ミディアムで組み立てる必要があった。

マクラーレンとフェラーリは、それぞれのマシンにこのレース用コンパウンドの3セットを確保していたが、レッドブルはフェルスタッペン用に2セットしか用意していなかった。
これは、レッドブルが予選に向けてソフトタイヤの使用セット数を最大化しようとした結果であり、プラクティスでも追加でミディアムを1セット使っていたためだ。レース開始時点で各ドライバーが利用可能だったハードとミディアムのセット数は以下のとおり:
■ ノリス:新品ハード2セット/新品ミディアム1セット
■ ルクレール:新品ハード1セット/新品ミディアム1セット/使用済ミディアム1セット
■ ピアストリ:新品ハード2セット/新品ミディアム1セット
■ フェルスタッペン:新品ハード1セット/新品ミディアム1セット
■ ハミルトン:新品ハード1セット/使用済ハード1セット/使用済ミディアム1セット
理論的には、これはレッドブルにとって不利な状況だった。というのも、ハードとミディアムを2スティントにわたって長く使用しなければならず、3セット使用の義務を果たすためには、不向きなソフトタイヤをどうしても投入せざるを得なかったからだ。
一方で、フェラーリとマクラーレンはソフトを使用する必要がなく、スティント長を柔軟に調整する戦略の自由度が高かった。

とはいえ、この理論上の不利は実際には大きな問題とならなかった。というのも、マクラーレンやフェラーリに対して競争力を欠いていた今回のレッドブルにとっては、そもそも長いスティントが最適だったからだ。後方からのアンダーカットの脅威も存在せず(これは予選でのペナルティによりルイス・ハミルトンが3グリッド降格し、スタートでフェルスタッペンの後ろに回ったため)、レッドブルとしては、他車がピットストップを済ませた後にセーフティカーや赤旗が出るのを期待して、できるだけ長く走行を続ける戦略を選んだ。
この戦略がうまくはまれば、番狂わせの勝利も不可能ではなかった。しかし、現実にはそうはならず、フェルスタッペンは最終的なピットストップ後、4番手でコースに復帰し、そのままフィニッシュした。
予選でフェルスタッペンの走行を妨害したことでハミルトンがグリッド降格処分を受けていなければ、フェルスタッペンは5番手スタートとなっていた可能性が高く、その場合のフィニッシュも5位だっただろう。
しかし、0.286秒も速いタイムで予選を終えたハミルトンのフェラーリは、決勝ではフェルナンド・アロンソのアストンマーティンに引っかかり、その後も“人工的にスローな”渋滞の中で周回遅れに苦しむ展開となった。その結果、フェルスタッペンにとっての脅威とはならなかった。

チャンピオンシップ争いの観点では、今回の結果はレッドブルにとって「善戦」だったとも言える。フェルスタッペンがポイントリーダーであるオスカー・ピアストリに対して失ったのはわずか3ポイントにとどまった。
近年の改良にもかかわらず、レッドブルRB21は依然として低速でバンピーなコースには根本的に適していない。しかし、次戦はバルセロナ。レッドブルにとってははるかに相性の良いサーキットとなるはずだ。
予選でポールポジションから0.7秒遅れたフェルスタッペンはこう語っていた。
「今年の予選では、実は去年よりも遅かった。ここで改善したかった部分は、まったく改善されていない。新世代マシンになってから、毎年ここではずっと苦しんでいる」
「2023年はマシン全体に大きなアドバンテージがあったから勝てたけど、それ以外の年はいつも苦戦ばかり。毎年挑戦してるけど、理由はわからないが、ここではなぜかうまくいかない」
決勝でも状況は変わらなかった。
「トップ3のマシンとはペースが違った。ついていこうとすると、すぐにタイヤがオーバーヒートしてしまった。ここはただ僕ら向きのコースじゃないんだ」
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