レッドブル・ホンダF1 分析:ペレスのタイヤマネジメントという武器 / F1ポルトガルGP 決勝
レッドブル・ホンダF1にとって、F1ポルトガルGPはセルジオ・ペレスのタイヤマネジメントという武器を手に入れたことを改めて確認するレースとなった。

レース展開は「今回はルイス・ハミルトンの方がマックス・フェルスタッペンよりも、レース運び、スピード、タイヤの使い方という点で一枚上手だった。以上。」といった感じの展開だった。

マックス・フェルスタッペンのレースを見れば、ポイントは4つだ。

①リスタートでハミルトンの前に出る(7周目)
リスタートは狙い通りだった。ハミルトンがボッタスに仕掛けようとして抜けたスリップストリームを使って加速してオーバーテイク。ドンピシャなタイミングだった。

②ハミルトンに不用意なミスで抜かれる(11周目)
ターン14で大きめなミスをしたことで最終コーナーで加速が鈍り、DRSを使ってハミルトンに成す術なく抜かれてしまう。チャンピオンシップを考えれば、なんとしてでもハミルトンの前にいることが最優先なレースだけに、ここでのミスがこのレースを大きく分けたと言える。

③ピット戦略でボッタスを抜く(37周目)
あのまま走り続けていれば、ボッタスを抜きあぐねて、ハミルトンにさらに離されていたので、アンダーカット狙いだったかどうかは不明。ピットインした段階で前のボッタスとの差は3.9秒。36周目に2.3秒の静止時間でパードに交換したマックス・フェルスタッペンは、37周目に3.3秒の静止時間で同じハードタイヤに交換したバルテリ・ボッタスにピット出口では前に出られるが、タイヤのウォームアップが弱いボッタスに対する1周分のアドバンテージを使ってオーバーテイクに成功。ピットストップはレッドブルの武器のひとつだ。

④ファステストラップ取り消し
追加の1ポイントのチャンスを逃す。おそらくターン14でトラックリミットを監視されていることは分かっていたはず。賭けに出て、失敗したと思われる。

ルイス・ハミルトンのスピードを考えれば、②のミスがなくてもいずれは抜かれていたはずであり、ダメージを最小限に抑えることができたレースと言える。ポイントには入れなかったが、レース中に3速がスムーズに繋がらないというトラブルを訴えていた。このような問題はハミルトンとの直接対決において致命的な差になってしまう可能性があり、要対応だ。

そして、勝敗には関係なかったが、今回際立ったのはセルジオ・ペレスのタイヤマネジメントだった。

まずは悪い点から。ミディアムとソフトという差があったとは言え、スタートでカルロス・サインツ(フェラーリ)に抜かれる。同じ移籍組であり、マシンに慣れていないという点は理由にはならない。また、リスタート時でポジションを取り戻したものの、今度はランド・ノリスにも抜かれ、抜き返すのに9周かかってしまう。その間に3番手のフェルスタッペンに対して約10秒の遅れをとってしまった。

だが、そこからがセルジオ・ペレスの真骨頂だった。

アルファルベ・サーキットのピットストップは25秒(22.5+静止時間2.5)だが、セーフティカー中はそれが15秒となる。すなわち、セーフティカーが入れば、15秒の差をつけていれば、逆転できる可能性がある。

上位3台がピットインしたタイミングでは5番手のダニエル・リカルド(マクラーレン)との差は26秒。前に出られるタイム差ではあるが、ここで入っては前の3台には絡めず、下手をすれば後続との4番手争いになる可能性もあった。

そこからセルジオ・ペレスはミディアムタイヤで素晴らしいタイヤマネジメントをみせる。上位3台と1秒以内のラップタイムで走行を続け、45周目あたりまでバルテリ・ボッタスに対して15秒差を保った。フェルスタッペンとポジションを争っているボッタスにとっては追加のプレッシャーになったはずであり、ペレスは“仕事をした”と言っていいだろう。

その後、ペレスはハミルトンに抜かれる51周目までさらにミディアムで引っ張った。3周オールドのソフトとしかなかったこともあり、また、ハミルトンに『ブルーフラッグじゃないの?』と嫌味な無線を浴びせられたが、抜きにくいサーキットであれば、フェルスタッペンのためにブロック役を果たせたはずだ。ニキータ・マゼピンにブロックされて2秒を失った周がなければ、あと2秒はトップに居座れたかもしれない。

さらにセルジオ・ペレスはソフトタイヤでルイス・ハミルトンのファステストラップを上回るという大仕事をやってのけ、バルテリ・ボッタスにファステスト狙いのピットストップを誘発させた。ボッタスが残り3周でピットに入った理由は不明だが、それはマックス・フェルスタッペンにもファステスト狙いのピットストップの扉を開くことになった。結局、フェルスタッペンのトラックリミット違反によって1ポイントはボッタスの手に渡ったが、ハミルトンに取られることはなかった。メルセデスにプレッシャーをかけるという点では、これも“仕事をした”と言えるだろう。

セルジオ・ペレスが果たしたメルセデスに対する2つの“仕事”は前任ドライバーにはできなかったことだ。今回はコース上で直接的に対メルセデスの役割を果たすことはできなかったが、今後に期待が持てる仕事ぶりだった。

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1 / セルジオ・ペレス / F1ポルトガルGP