F1特集:レッドブル・レーシング 2020年のF1世界選手権 総括
レッドブル・レーシングのチームプリンシパルを務めるクリスチャン・ホーナーが、2020年のF1世界選手権の激動のシーズンを振り返った。
マックス・フェルスタッペンのアブダビGP優勝は、2020シーズンの締めくくりに相応しかった。F1シーン全体が協力してパンデミックに取り組み、23週間で17レースを消化した2020シーズンはチャレンジングな1年だった。
クリスチャン・ホーナーが、2020シーズン最後となる公式サイトのコラムで、2020シーズンや2021シーズンのドライバーラインアップなどについて語った。
F1への感謝
まずはF1に関わった全員に感謝の気持ちを述べるべきだろう。F1のライツホルダーだけではなく、FIA、全チーム、全サーキット、全メディアにも感謝したい。
この1年が私たちに与えた難しい試練に取り組みながら17戦を消化したというのは素晴らしい功績だ。この功績は、F1シーン全体が協力すれば何ができるのかを示していると思う。
今シーズンのハイライトのひとつで、私たちがひとつの大きなファミリーだということを示す好例と言えたのが、『Project Pitlane』だった(編注:COVID-19の危機を受けて、英国を拠点に置くF1チームが通常なら開発まで数年かかると言われていた医療用人工呼吸器を4週間で共同開発したプロジェクト)。私たちと他のチームがあのプロジェクトに注いだスピリットとエンジニアリングには素晴らしいものがあった。数年かかると言われていた物をたった4週間で作り上げることができた。
もちろん、レーストラックにもハイライトはあった。シルバーストンで開催された70周年記念GPとシーズン最終戦アブダビGPでの優勝は、言うまでもなくチームにとって祝福の瞬間だった。
どちらの勝利もメルセデスと真っ向勝負に挑んだ結果だ。ラッキーな勝利ではない。今シーズンのマックスのドライビングは称賛に値する。彼はすべてのチャンスを逃さなかった。
まだ2シーズン目だったアレックスにとっては、学習と成長のハードな1年になった。彼のハイライトはムジェロで記録したキャリア初表彰台とバーレーンでの2度目の表彰台だ。6シーズンの経験があり、グリッド最強クラスに数えられるマックスのようなドライバーと一緒に走るのは簡単ではないが、アレックスはマックスから学んでいたし、2人のコンビネーションは良かった。
新ドライバーについて
マックスの2021シーズンのチームメイトは長らく議論のテーマだった。アレックスは厳しい質問を浴びせられたり、外部からプレッシャーをかけられたりする時があったが、彼は非常に上手く乗り切っていた。シーズンを通じてアレックスが見せたメンタルの強さ、回復力、気品には感服した。
チーム全員がアレックスにシートを守ってもらいたかったので、シーズン最終戦を終えてすべてのデータを手に入れてから彼のパフォーマンスを評価することにした。そして、ドライバー2人のデータを確認し、そこにセルジオの力強いパフォーマンス、特にシーズン後半のパフォーマンスを加味して評価した結果、2021シーズンのシートはセルジオが獲得すべきだという結論を導き出した。
アレックスには引き続きチームで重要な役割を担ってもらう。2022シーズンに向けた開発にフォーカスしてもらいながら、未来のシートを狙ってもらうことになる。アレックスは私たちがこれまで一緒に仕事をしてきた中で最も謙虚なドライバーのひとりであり、チームの中で最も大きな尊敬を集めている人物だ。
2007シーズン以降初めて私たちのプログラム外からドライバーを選ぶことになったが、メルセデスと戦うためには最強のチームを用意する必要がある。セルジオの経験は2021シーズンの私たちに不可欠だ。彼をチームに迎え入れる日を楽しみにしている。
クリスマスについて
クリスマスが近づくと今も興奮を覚える。子供たちと一緒に階下へ向かい、サンタクロースがミンスパイとウィスキーを口にしたかどうかを確認するのは楽しい(編注:英国ではクリスマスイブにサンタクロース用に暖炉前にミンスパイと酒を置くのが伝統)。
クリスマスはイベントが次から次へ続く。まず、私は子供たちと同じでプレゼントを真っ先に開けたいタイプだ。午後にゆっくり開けるようなタイプではない。
そのあとはクリスマスランチだが、このイベントはほとんど人任せだ。私は、ブレッドソースが作ってあり、ピッグ・イン・ブランケットが用意されているかどうかを確認するだけだ(編注:共に英国のクリスマス料理の定番。前者はパンで作る肉料理用ソース。後者はソーセージのベーコン巻き)。FIAの車検検査員のようにね!
ジェリ(ハリウェル)はブルーベル(長女)と一緒にかなり熱心に料理に取り組んでいるが、家族の中で一番料理が上手いのはブルーベルだろう(笑)。
家族全員がクリスマスランチを食べ過ぎてしまうが、例年は午後にゲームをする。そしてターキーサンドイッチをつまんだあと、全員が早めに眠ってしまう。
クリスマスは子供たちと一緒の時間を過ごし、レゴで遊ぶための時間だ。レゴはユニコーンや「うまれて!ウーモ」と並んで我が家ではかなり人気がある。
モンティ(息子)はエイドリアン(ニューウェイ)からレゴのトラクターをもらったあと、少なくとも50回はそのトラクターを組み立てているはずだ。モンティはいつも私に「エイドリアンから “説明書通りに進めることがとても大事だ” って言われたんだ」と言っている。
3歳の息子が「エイドリアンから “説明書通りに進めることがとても大事だ” って言われた」と言っているのは笑える。なぜなら、おそらくエイドリアンは人生で一度も “説明書通り” に物事を進めたことがないからだ。彼はいつも自分のやり方で進めている!
2021シーズンに向けて
今年の冬はとても短くなるだろう。クリスマスの1週間前にようやくシーズンが終わったが、2月にはテストが始まる。
2021シーズンの目標について話そう。2020シーズンをコンストラクターズ2位で終えた私たちは、メルセデスと第2集団の間に位置している。
2021シーズンはメルセデスにより厳しい戦いを強いることが目標だ。今シーズンの彼らは素晴らしい仕事をしたし、彼らの功績は称賛に値する。しかし、私たちは最終3~4レースで大きな収穫を得ることができた。かなり多くのハイライトが生まれた。
2020シーズンが終わったばかりだが、今シーズンに得た学びを活かすのを楽しみにしている。
また、日常がある程度帰ってくることにも期待したい。ファンがいなかったアブダビGPはかなり奇妙だった。いつもなら活気に満ちているのだが、今年はそのような活気がなかった。
私たちには、シーズンを通じて勝利やリタイアを一緒に経験してくれる素晴らしいファンの皆さんがいる。彼らは一生懸命サポートしてくれるので、心の底から感謝している。来シーズンは今シーズンよりも彼らと一緒に祝える回数が増えることに期待したい。
最後になるが、この難しい1年を通じて私たちを助けてくれたファンとパートナーの皆さんに感謝の気持ちを述べたい。
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1
マックス・フェルスタッペンのアブダビGP優勝は、2020シーズンの締めくくりに相応しかった。F1シーン全体が協力してパンデミックに取り組み、23週間で17レースを消化した2020シーズンはチャレンジングな1年だった。
クリスチャン・ホーナーが、2020シーズン最後となる公式サイトのコラムで、2020シーズンや2021シーズンのドライバーラインアップなどについて語った。
F1への感謝
まずはF1に関わった全員に感謝の気持ちを述べるべきだろう。F1のライツホルダーだけではなく、FIA、全チーム、全サーキット、全メディアにも感謝したい。
この1年が私たちに与えた難しい試練に取り組みながら17戦を消化したというのは素晴らしい功績だ。この功績は、F1シーン全体が協力すれば何ができるのかを示していると思う。
今シーズンのハイライトのひとつで、私たちがひとつの大きなファミリーだということを示す好例と言えたのが、『Project Pitlane』だった(編注:COVID-19の危機を受けて、英国を拠点に置くF1チームが通常なら開発まで数年かかると言われていた医療用人工呼吸器を4週間で共同開発したプロジェクト)。私たちと他のチームがあのプロジェクトに注いだスピリットとエンジニアリングには素晴らしいものがあった。数年かかると言われていた物をたった4週間で作り上げることができた。
もちろん、レーストラックにもハイライトはあった。シルバーストンで開催された70周年記念GPとシーズン最終戦アブダビGPでの優勝は、言うまでもなくチームにとって祝福の瞬間だった。
どちらの勝利もメルセデスと真っ向勝負に挑んだ結果だ。ラッキーな勝利ではない。今シーズンのマックスのドライビングは称賛に値する。彼はすべてのチャンスを逃さなかった。
まだ2シーズン目だったアレックスにとっては、学習と成長のハードな1年になった。彼のハイライトはムジェロで記録したキャリア初表彰台とバーレーンでの2度目の表彰台だ。6シーズンの経験があり、グリッド最強クラスに数えられるマックスのようなドライバーと一緒に走るのは簡単ではないが、アレックスはマックスから学んでいたし、2人のコンビネーションは良かった。
新ドライバーについて
マックスの2021シーズンのチームメイトは長らく議論のテーマだった。アレックスは厳しい質問を浴びせられたり、外部からプレッシャーをかけられたりする時があったが、彼は非常に上手く乗り切っていた。シーズンを通じてアレックスが見せたメンタルの強さ、回復力、気品には感服した。
チーム全員がアレックスにシートを守ってもらいたかったので、シーズン最終戦を終えてすべてのデータを手に入れてから彼のパフォーマンスを評価することにした。そして、ドライバー2人のデータを確認し、そこにセルジオの力強いパフォーマンス、特にシーズン後半のパフォーマンスを加味して評価した結果、2021シーズンのシートはセルジオが獲得すべきだという結論を導き出した。
アレックスには引き続きチームで重要な役割を担ってもらう。2022シーズンに向けた開発にフォーカスしてもらいながら、未来のシートを狙ってもらうことになる。アレックスは私たちがこれまで一緒に仕事をしてきた中で最も謙虚なドライバーのひとりであり、チームの中で最も大きな尊敬を集めている人物だ。
2007シーズン以降初めて私たちのプログラム外からドライバーを選ぶことになったが、メルセデスと戦うためには最強のチームを用意する必要がある。セルジオの経験は2021シーズンの私たちに不可欠だ。彼をチームに迎え入れる日を楽しみにしている。
クリスマスについて
クリスマスが近づくと今も興奮を覚える。子供たちと一緒に階下へ向かい、サンタクロースがミンスパイとウィスキーを口にしたかどうかを確認するのは楽しい(編注:英国ではクリスマスイブにサンタクロース用に暖炉前にミンスパイと酒を置くのが伝統)。
クリスマスはイベントが次から次へ続く。まず、私は子供たちと同じでプレゼントを真っ先に開けたいタイプだ。午後にゆっくり開けるようなタイプではない。
そのあとはクリスマスランチだが、このイベントはほとんど人任せだ。私は、ブレッドソースが作ってあり、ピッグ・イン・ブランケットが用意されているかどうかを確認するだけだ(編注:共に英国のクリスマス料理の定番。前者はパンで作る肉料理用ソース。後者はソーセージのベーコン巻き)。FIAの車検検査員のようにね!
ジェリ(ハリウェル)はブルーベル(長女)と一緒にかなり熱心に料理に取り組んでいるが、家族の中で一番料理が上手いのはブルーベルだろう(笑)。
家族全員がクリスマスランチを食べ過ぎてしまうが、例年は午後にゲームをする。そしてターキーサンドイッチをつまんだあと、全員が早めに眠ってしまう。
クリスマスは子供たちと一緒の時間を過ごし、レゴで遊ぶための時間だ。レゴはユニコーンや「うまれて!ウーモ」と並んで我が家ではかなり人気がある。
モンティ(息子)はエイドリアン(ニューウェイ)からレゴのトラクターをもらったあと、少なくとも50回はそのトラクターを組み立てているはずだ。モンティはいつも私に「エイドリアンから “説明書通りに進めることがとても大事だ” って言われたんだ」と言っている。
3歳の息子が「エイドリアンから “説明書通りに進めることがとても大事だ” って言われた」と言っているのは笑える。なぜなら、おそらくエイドリアンは人生で一度も “説明書通り” に物事を進めたことがないからだ。彼はいつも自分のやり方で進めている!
2021シーズンに向けて
今年の冬はとても短くなるだろう。クリスマスの1週間前にようやくシーズンが終わったが、2月にはテストが始まる。
2021シーズンの目標について話そう。2020シーズンをコンストラクターズ2位で終えた私たちは、メルセデスと第2集団の間に位置している。
2021シーズンはメルセデスにより厳しい戦いを強いることが目標だ。今シーズンの彼らは素晴らしい仕事をしたし、彼らの功績は称賛に値する。しかし、私たちは最終3~4レースで大きな収穫を得ることができた。かなり多くのハイライトが生まれた。
2020シーズンが終わったばかりだが、今シーズンに得た学びを活かすのを楽しみにしている。
また、日常がある程度帰ってくることにも期待したい。ファンがいなかったアブダビGPはかなり奇妙だった。いつもなら活気に満ちているのだが、今年はそのような活気がなかった。
私たちには、シーズンを通じて勝利やリタイアを一緒に経験してくれる素晴らしいファンの皆さんがいる。彼らは一生懸命サポートしてくれるので、心の底から感謝している。来シーズンは今シーズンよりも彼らと一緒に祝える回数が増えることに期待したい。
最後になるが、この難しい1年を通じて私たちを助けてくれたファンとパートナーの皆さんに感謝の気持ちを述べたい。
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1