ピレリF1、第3の雨天用タイヤ“スーパーインターミディエイト”を提案
F1の公式タイヤサプライヤーであるピレリは、雨天時に使用する第3のタイヤの導入を提案した。

F1ドライバーたちは長年にわたってピレリのウェットタイヤを批判してきたが、雨の影響を受けた先週末のスパ・フランコルシャンでのスプリントレース後に再び批判の声を挙げた。ジョージ・ラッセルは「近いものにならない」タイヤだと言い、ルールで使用が義務付けられているセーフティカーの後ろを走行するときだけ使用するタイヤだと指摘するドライバーもいる。

フルウェットタイヤは、サーキット上に大量の水がある場合にアクアプレーニングのリスクを軽減するものの、ラップタイムは遅くなる。そのためドライバーたちは、アクアプレーニングに強いインターミディエイトタイヤに履き替えるチャンスを逃さない。

F1は、雨天時の視界不良というさらなる懸念に直面している。これらは近年、2017年からワイドなマシンとタイヤが導入され、昨年から導入された新しいテクニカルレギュレーションではマシンのフロアを利用してより大きなダウンフォースを発生させることが可能になったことで悪化している。

先月スパで行われたフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ選手権のウエットレースでディラーノ・ヴァン・ト・ホフが死亡したことで、シングルシーターのモータースポーツではあらゆるレベルのレースで視界を改善する必要性が浮き彫りになった。

ピレリのモータースポーツディレクター、マリオ・イゾラ氏は、F1が雨の中でのレースによってもたらされる課題にどのように対処するか、またフルウェットタイヤとインターミディエイトタイヤのパフォーマンスをどのように望むかを決定するために議論が必要であると述べた。

「ここスパでは、インターミディエイトとウェットの状況について明確なフィードバックがあった」とマリオ・イゾラはRaceFansに語った。

「我々はFIAとチーム、そしてもちろんF1と協力する必要がある。何人かのドライバーがミーティングに参加してくれると嬉しいが、我々は何を希望するかを決める必要がある」

ピレリのウェットタイヤにおけるF1開発の優先課題は、チームが予熱なしで使用できるようにすることだった。これが完了し、現在のタイヤは使用前にブランケットで温める必要がなくなった。

「ブランケットなしでテストしたところ、フィオラノとポール・リカールでは従来のウェットタイヤよりも5~6秒速く、ウォームアップも問題なかった」とイゾラは説明した。

「そして、ウォームアップも問題なかった。だから、シーズン中に新しいウエットタイヤを導入することを全チームに要請した。ピレリだけがそう言っているのではなく、彼らもデータを持っていて、新しいウェットを導入するのは良いステップだと同意した」

「今、重要なのは、インターミディエイトとの適切なクロスオーバーを生み出すには、このパフォーマンスではまだ不十分だということだ。しかし、我々が抱えている問題のひとつは、ウェットタイヤをポール・リカール(ショートコンフィギュレーション)とフィオラノでしかテストできないことだ。この2つのトラックは、スパやシルバーストーン、あるいは他のサーキットとは特性がまったく異なる」

「インターミディエイトとウエットコンディションを比較する機会を得たことで、ウエットコンディションのパフォーマンスを向上させる必要があることがわかった。過去のデータによると、インターミディエイトとウエットとのクロスオーバーを考慮すると、ウエットでは(ドライのラップタイムの)115~116%程度が妥当な数字だった」

「つまり、収集したデータをもとに、インターミディエイトとの適切なクロスオーバーを達成するために、ウエットタイヤのパフォーマンスに取り組まなければならないということだ」

しかしイゾラは、今後のウェットタイヤの開発は、F1がどのように視界問題に取り組んでいくかにかかっているという。FIAは先月、「スプレーガード」というボディワークコンセプトのテストを開始したが、まだ導入の準備は整っていない。

この装置がうまく機能しない場合、インターミディエイトとフルウェットの中間に位置する新しいクラスのタイヤを導入することがひとつの解決策になるとイゾラは語る

「もし、将来的に現在の状況を維持するのであれば、つまり、トラック上に大量の水があり、赤旗やセーフティカーが提示され、視界の関係で走れないのであれば、私の考えでは、おそらくインターミディエイトタイヤを開発するのが最善の解決策だろう。スーパーインターミディエイト、インターミディエイトプラスなど、呼び名は何でもいい。視界が確保できる限界からドライコンディションとのクロスオーバーまで、1つの製品でカバーできるようにするのだ」

「スプレーを軽減し、フルウエットコンディションでの走行を可能にするデバイスを探し続けるという考えであれば、今あるインターミディエイトと、ブランケットなしで走れる新しいインターミディエイトの2つを維持し、フルウエットタイヤを改良していかなければならない」

「しかし、もしフルウェットタイヤがセーフティカーの後でのみ使用されるのであれば、現時点ではそれは役に立たないタイヤであるというドライバーに意見に同意する。したがって、F1に必要な製品を開発するために、将来どの方向に進みたいかを決める必要がある」

F1 スーパーインターミディエイト タイヤ

スプリントレースのコンディションは、トラックが非常に濡れていたものの、すぐに乾くというものだった。2年前の日曜の雨が降り続いてF1のレースが不可能になったのとは対照的だった。

「最初の4周はセーフティカーが導入されたことで、ここのトラックはすぐに乾くことがわかった」とイゾラは語った。

「11周でトラックは完全インターミディエイトのコンディションからほぼドライコンディションになった。つまり、4周でトラックはフルウエットからインターミディエイトに移行したわけだが、その4周はセーフティカーが導入されていた」

イゾラは、ピレリは濡れたコンディションでより優れたパフォーマンスを発揮するタイヤを開発できるかもしれないが、それはF1の優先順位次第だと語った。

「どちらの方向に進むのかを決める必要がある。より幅広いコンディションで機能する、別のトレッドパターンを開発したいだろう? それなら、我々はそれに集中し、それを実行する。しかし、我々は現在のウェットトレッドパターンを改善するために取り組んでいない」

「テストの可能性が非常に限られているため、どの方向性もカバーできるというわかではない。明確な方向性がないまま様々なものをテストすることに時間を浪費すると、目標を達成できないリスクがある」

「このスーパーインターミディエイトのアイデアは、スプリントレース後にスプリントの結果を見て議論していたもので、週末中ずっと話していた」

新しいウェットタイヤの性能についてドライバーたちが批判したことに対し、イゾラは、タイヤに大きな負荷がかからないサーキットでは良いパフォーマンスを発揮するが、スパのようなトラックでは改良が必要だと語った。

「モナコでウエットタイヤを使ったが、結論から言うと問題なかった」とイゾラは語った。

「だが、これからデータを分析するので、結論は出したくない。一般的にモナコは危険の低いサーキットだし、フィオラノも危険度の低いサーキットだ。ポール・リカールも3キロの短いサーキットで4~5コーナーしかないことを考えれば危険度の低いサーキットだ」

「だから一般的には、ブランケットなしの新しいウエットタイヤは危険度の低いサーキットでうまく機能しているようだ。しかし、スパやシルバーストーンのような高速で過酷なサーキットを走ると、パフォーマンスが不足してしまう。だからウエットタイヤのこの面を改善する必要がある」

「それは可能な方向性だ。しかし、もしこの方向で取り組まなければならないのであれば、当然、別のトレッドパターンの開発は延期しなければならない。しかし、それはピレリだけの決定ではなく、共通の決定でなければならない」

ベルギーGPの後、ピレリはスパに残り、マクラーレンとアストンマーティンとともに2日間にわたってウェットタイヤとインターミディエイトタイヤのテストを行った。

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カテゴリー: F1 / ピレリ