ピレリ 新型F1ウェットタイヤで「セーフティカー専用」からの脱却を目指す

近年、F1チームはピレリのフルウェットタイヤの使用を極端に避ける傾向にあり、ほとんど“使われない”存在となっていた。
昨年のF1ブラジルGPでは激しい雨により予選が日曜朝に延期されたが、当時ルイス・ハミルトンは「こんな状況は馬鹿げている。もっとマシなタイヤを用意すべきだ」と強く批判していた。
その背景には、現行のウェットタイヤが十分な温度を維持できず、すぐにオーバーヒートを起こしてしまうという問題がある。結果的に、使用は“極端な豪雨時”に限られるが、そのようなコンディションではレース自体が中断されることが多く、事実上「セーフティカー用タイヤ」と化していた。
こうした状況を打破するため、ピレリはフィオラノ・サーキットにてフェラーリのテスト車両を使った評価走行を実施。ドライバーはシャルル・ルクレールと周冠宇が務めた。
ピレリのモータースポーツ部門責任者マリオ・イゾラは「今、我々はかなり良い状況にあると思う」とコメント。
「インターミディエイトタイヤはほぼ2026年向けの仕様として固まりつつある。今は新しいウェットの解決策を検証しているところだ。特に、ウェットとインターのクロスオーバーを今とは異なる位置に再設定し、極端なウェットタイヤでもセーフティカー後ではなく、通常のレースでも使えるようにしたい」
「視界の問題はウェットでは常につきまとうが、今のところインターもウェットも満足のいく仕上がりになっている」

パフォーマンス改善の鍵は“クロスオーバーラップ”
ピレリが追求しているのは、ラップタイムにおける各コンパウンドの“適正使用ウィンドウ”の見直しだ。
データによれば、従来のフルウェットはドライタイヤ基準で120%程度のラップタイムが使用の目安とされてきた。一方、ドライからインターへ切り替える目安は112%であり、両者の間に大きなギャップが存在していた。
今年テストされた新ウェットは、ラップタイム基準で118%と、従来より2%の改善にとどまっている。ピレリはこれをさらに116〜115%にまで縮めることを目指しているという。
「ミュールカーでのテストはドライタイヤ同様、限界がある」とイゾラは述べつつも、「新コンパウンドによってその目標に到達できると期待している」とした。
一方で、2026年向けのドライタイヤについては早くも厳しい声が上がっており、メルセデスのジョージ・ラッセルは「現行より明らかに悪い」と評価している。ピレリにとっては、ウェットタイヤの改良がその信頼回復のカギとなりそうだ。
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