ピエール・ガスリー アルピーヌF1と2028年まで契約延長の舞台裏

ガスリーは2023年シーズン前にレッドブル一門を離れ、エステバン・オコンとのオールフランス体制でアルピーヌに加入した。それ以来、速さと安定感を備えたチームリーダーへと進化し、今季は4度のトップ10フィニッシュでチームの全20ポイントを稼ぎ出している。
一方、もう一方のシートはジャック・ドゥーハン、続いてフランコ・コラピントが乗っているが、いまだに1ポイントも獲得できていない。そのためガスリーは、チーム最下位に沈むアルピーヌにとって必要不可欠な安定要素であり、マシンの真の性能を測るための基準ともなっている。
その状況を踏まえ、アルピーヌは来季の大規模なシャシーおよびパワーユニット規則変更を前に、安定性を確保するためガスリーを長期にわたり確保することを望んでいた。来季からはメルセデス製パワーユニットを搭載予定で、それが最強のエンジンの一つになると期待される中、チームは29歳のガスリーがその力を最大限に引き出し、チームを再び上位争いへと導いてくれると確信している。
アルピーヌのエグゼクティブ・アドバイザーであるフラビオ・ブリアトーレや、ルノー新CEOフランソワ・プロヴォがガスリーの実力を高く評価しており、次の段階に向けて彼をチームに縛り付けたいと考えた。
この契約延長は、ガスリーがアルピーヌの将来的な目標──表彰台、勝利、そして最終的には世界選手権への挑戦──を信じていることの証でもある。同時に、ルカ・デ・メオのCEO退任や今季限りでのF1パワーユニットプロジェクト終了というチームの決断を経ても、アルピーヌがF1にコミットし続ける姿勢を再確認させるものとなった。
ガスリーは来季まで待ってから将来を決めることもできたはずだった。そうすれば、アルピーヌのマシン開発能力を間近で見極める時間もあり、他チームの戦闘力を比較する余裕もあった。しかし彼は、来年以降に少なくとも半数のグリッドが移籍の選択肢を持つことを考慮しながらも、今の段階で署名に踏み切った。
早期に署名したことで、彼はプロジェクトへのコミットメントの見返りとしてより良い条件を勝ち取ったとみられる。そしてこの安定が、今後3年間、自身の将来を気にせずレースに集中できる環境をもたらす。
結果として、ガスリーは現在のグリッドで最も長期契約を結んだドライバーの一人となった。

アルピーヌはすでにリソースを来季マシンに振り分けており、来年の飛躍を本気で信じている。ルノー製パワーユニットからの移行も助けになるだろう。現行エンジンは一部サーキットで1周あたり約0.4秒を失っているとされ、それがメルセデス製ユニットに代わることで競争力が大幅に向上すると期待されている。
もし期待通りの結果が出れば、ガスリーの早期決断は英断と評価されるだろう。そしてアルピーヌは優れたドライバーを確保し、空席となる2つ目のシートは一気に人気のポジションとなるはずだ。
以上の理由から、双方が契約延長に動いたのは自然な流れだった。残された課題は、今季終了後のチームメイトを誰にするかという点だ。現ドライバーのコラピントはまだ契約延長を納得させるだけの結果を示していないが、それはまた別の問題である。
カテゴリー: F1 / ピエール・ガスリー / アルピーヌF1チーム