ロードレース世界選手権 本田技研工業 マルク・マルケス MotoGP
2018年シーズンの幕開けを告げる公式テストが、1月28日(日)から30日(火)までの3日間、マレーシアのセパンで行われた。12月1日から1月31日まではレギュラーライダーのテストが禁止されているが、レースディレクションの定めた公式テストは例外となっており、今年は1月下旬に1回目のテストが行われた。

2回目の公式テストは、2月中旬に今季から新たにカレンダーに加わったタイのブリーラム(チャーン・インターナショナル・サーキット)、3月上旬には、開幕戦カタールGPに向けて最後の調整となる3回目のテストが、ドーハのロサイルで行われる。

今季初のテストは、Repsol Honda Teamからマルク・マルケスとダニ・ペドロサ、LCR Hondaからはカル・クラッチローと中上貴晶、そして、Estrella Galicia 0,0 Marc VDSのフランコ・モルビデリとトーマス・ルティの6選手が参加した。

昨年、シーズン6勝を挙げて2年連続4回目のタイトルを獲得したマルク・マルケスと、2勝を挙げて総合4位となったダニ・ペドロサ、そして総合9位のカル・クラッチローは、引き続きHonda陣営からの参戦となる。

また、Moto2クラスで8勝を挙げてチャンピオンを獲得したフランコ・モルビデリ、2勝を挙げて総合2位のトーマス・ルティ、イギリスGPで優勝、総合では7位となった中上貴晶らルーキー3人が、新たにHondaチームからMotoGPクラスに参戦することとなった。

熱帯の国マレーシアは、最高気温が30℃を超える日がほとんどのため、セパンは、シーズンを通して厳しいコンディションとなるサーキット。今年は不安定な天候となったが、おおむね、ドライコンディションで走行することができた。初日はウエットからドライ、2日目は朝方まで降った雨の影響でスタートがやや遅れたが、終日ドライ。最終日となる3日目は青空が広がり、暑さ、路面温度ともに3日間でもっとも厳しいコンディションとなったが、Honda勢の6選手は、それぞれのメニューを着実に消化した。

今年は、2016年から共通化されたECU(エンジン・コントロール・ユニット)とミシュランへタイヤの1社供給体制となってから3年目のシーズンを迎える。過去2年は、マシン作りに大きな影響を及ぼすこの2つの変更点を確認しながらマシンの開発テスト、調整が続いたが、今年は共通ECUへの対応、タイヤに合わせた車体作りなどが進み、各メーカーともに大きく前進、一段と厳しい戦いとなった。

その厳しい戦いの中で、3年連続3冠を目指すHondaは、昨年11月に行われた最終戦バレンシアGP後に行われた公式テストのデータをもとに、2018年型RC213Vの開発を続けてきた。今回のテストには2種類のスペックの違うエンジンを投入、今季使用するエンジンの選別テストを最優先に、さまざまなテストに取り組んだ。

13年に史上最年少記録で世界チャンピオンに輝き、14年にシーズン史上最多優勝記録を更新して2連覇を達成、15年はタイトルを逃すも、16年、17年とタイトルを獲得したマルク・マルケスは、初日は3台の車体を使って2種類のエンジンのテストを行った。2日目以降は2台のマシンに絞り、昨年のシーズン後半から実戦投入されているフェアリングを中心に、公式テストの前に行われた事前テストで青山博一がテストしたプロトタイプのフェアリングを併用しながら、多くのメニューをこなした。

3日間を通じて順調にテストメニューを消化したマルク・マルケスは、初日に2分00秒290、2日目には1分59秒730、3日目には1分59秒382を記録し、着実にタイムを更新。3日間で194ラップを走り、総合7位で今季初のテストを終了した。今回のテストでは、1度もアタックしなかったというマルク・マルケスだが、最終日には15ラップのロングランを実施。2分00秒台で連続ラップをこなし、2018年型RC213Vのセットアップが順調に進んでいることを感じさせた。

チームメートのダニ・ペドロサは、3日間合計で170ラップを周回した。Repsol Honda Teamで13年目のシーズンを迎えるダニ・ペドロサは、マルク・マルケス同様、エンジンの選別テストなど、これまでの経験を活かし、2018年型RC213Vのセットアップに集中した。その中でダニ・ペドロサは、初日に1分59秒427のトップタイムをマーク。最終日には1分59秒009で総合2番手のタイムをマークするなど、今季初テストの目標をほぼ達成してみせた。

昨年は、ウエットコンディションで十分なトラクションを得られず苦戦するレースがあったダニ・ペドロサ。今年はその課題克服にも重点を置き、ウエットコンディションでも積極的にコースインした。

LCR Hondaに移籍して4年目のシーズンを迎えるカル・クラッチローは、マルク・マルケス、ダニ・ペドロサともにファクトリーサポートを受ける契約選手の一人。今回のテストでは、マルク・マルケス、ダニ・ペドロサ同様に3台のマシンを使い、2018年型RC213Vのセットアップに取り組んだ。

3日間を通じてエンジンテストに集中したというカル・クラッチローは、3日間で168ラップをこなし、総合3番手で今季初テストを終えた。ウエットからドライになった初日は38ラップと少なめの周回だったが、ドライコンディションとなった2日目、3日目はともに65ラップをこなし、ベストタイムも1分59秒052を記録して自己ベストを更新するなど、順調なスタートとなった。

MotoGPクラスに今季デビューする3選手も、それぞれのメニューに沿って今季初テストを行った。

14年の青山博一以来、日本人としては4年ぶりにMotoGPクラスにフル参戦する中上貴晶は、3日間で169ラップを周回。2日目には転倒を喫したが、ルーキー勢ではトップタイムとなる2分00秒071の好タイムで初テストを終えた。

昨年のスペイン・バレンシアとヘレスのテストでは1台のマシンを使ってのテストだったが、今季の初テストは初めて2台のマシンを使ってのテストとなった。マシンを乗り換えながらのテストを初めて経験した中上貴晶は、ベストタイムはもちろんのこと、3日目最終日にはロングランを行い、2分01秒台で連続ラップするなど、ルーキーとしては上々の内容で初テストを締めくくった。

昨年のMoto2チャンピオンのフランコ・モルビデリは、3日間で153ラップ。Moto2時代から確実に前進していくタイプのライダーであるフランコ・モルビデリだが、MotoGPマシンに乗ってもそれは変わらず、着実にタイムを更新した。今回のテストでは、2日目に2度の転倒を喫し、左手の指を痛めるなど、テストの進行にややブレーキがかかったが、それでも着実にタイムをアップ。1日目は2分1秒161。2日目は2分0秒662。3日目は2分0秒526とタイムを更新した。総合順位は20番手だったが、次回からのテストでのタイムの短縮と、ポジションアップに大きな期待が膨らむ結果となった。

昨年、Moto2クラスで総合2位のトーマス・ルティは、今回のテストがMotoGPマシンでの初ライドとなった。トーマス・ルティは昨年の第17戦マレーシアGPの予選で転倒し、左足首を骨折。その影響でマレーシアGPと最終戦バレンシアGPを欠場せざるを得なくなってしまい、そのあとに行われたMotoGPクラスの公式テストとヘレスで行われたプライベートテストにも参加することができなかった。

この日を待ち望んでいたと言うトーマス・ルティは、MotoGPマシンに慣れることを1番の目標に今回のテストに臨んだ。そのため初日は2分3秒732というタイムだったが、2日目には2分1秒810、3日目は1分1秒126と着実にタイムを短縮。総合順位は25番手だったが、これからの伸びしろを感じさせる充実の初テストとなった。

次回のテストは2月16日から18日までの3日間、今シーズン初開催となるタイGPの舞台となるチャーン・インターナショナル・サーキットで行われる。

ダニ・ペドロサ (総合2番手、1分59秒009)
「3日間を通じて良いテストができました。初日は3台のマシンを使い、車体のセットアップを同じにして仕様のことなるエンジンのテストをしました。最大の狙いはそれぞれ異なる仕様で走行して多くのデータを収集することでした。この日は午前中がウエット、午後になってドライと、この部分でもデータ収集ができました。テストが始まったばかりの初日のフィーリングとしてはとても良くて、トップタイムで終えられたことも良いことでした。2日目は、新しいエンジンを中心にテストを行いました。こうしたテストは、多くの設定で走ることが必要になるのでサスペンションの調整をしながら、タイヤでも多くのテストをこなしました。その結果、ウィリーコントロールなど、とてもポジティブな部分がありました。最終日は、2日目のテストで得たベストな状態にしてロングランに挑み、良いリズムで走ることができました。3日間を通じて、エンジン、空力、サスペンション、タイヤはハードとソフトの両方のテストに取り組み、気持ち良く走ることができただけでなく、多くのデータを得ることができました。今回のテストの成果を他のサーキットでも再現できることを楽しみにしています」

カル・クラッチロー (総合3番手、1分59秒052)
「初日の午前中はウエットでしたが、午後はドライになり、最初から気持ちよく走ることができました。とても楽しい時間になりました。この冬のHondaの仕事にはとても満足しています。2日目は午前中路面が濡れていたので走行開始が遅れましたが、本当に多くのテストメニューをこなしました。その中でもユーズドタイヤで走ったときのフィーリングが良く、とても良かったです。最後にアタックしたときは、あまりフィーリングは良くなかったのですが、ラップタイムが良かったので、この部分ではポジティブでした。最終日はタイヤテストもこなせました。ロングランでは10周を終えたころからリアタイヤがグリップが多少落ちたり、フロントタイヤも自分の好みではありませんでしたが、3日間を通じてしっかりテストをこなすことができました。全体的なパフォーマンスには満足しています。最終日のアタックは、走行開始直後にアタックしたのですが、路面があまりいい状態ではありませんでした。それでも3番手タイムをマークできたことはとてもよかったです」

マルク・マルケス (総合8番手、1分59秒382)
「忙しい3日間でした。セパンは、シーズンを通して厳しいサーキットの1つですが、加えて初日は冬休み明けの最初の走行ということで、サーキットを走るリズムを取り戻さなくてはいけませんでした。3日間を通じて順調にメニューを消化しました。初日は2種類のエンジンを3台のマシンを使ってテストを行いましたが、2018年型のニューエンジンはよかったです。とてもポジティブなスタートになりました。2日目はエンジンを始め、電気、エアロダイナミクスなど、さまざまなセットアップにトライし、前進することができました。午後のもっとも気温が高いときにベストを出すことができたこともよかったです。新しいフェアリングのテストは、マシンのバランスを見ながらのテストが必要となり、多くの周回を必要とします。改善しなくてはいけない部分もありますが、おおむね、ペースもよく、機能していました。最終日は、もっとも気温が高い午後3時頃に15周のロングランをしました。マシンのフィーリングはとてもいいものでしたが、新しいフェアリングなど、正しい選択をするためにも、ほかのサーキットでしっかり確認したいです。今回はタイムアタックはしませんでした。まだ100%の状態ではありませんが、エンジンに関してはいい仕事ができたと思います。ダニ、カルとは若干異なる方向でテストを進めていました。Hondaにとっては、本当に多くのデータが収集できたと思います」

中上貴晶 (総合15番手、2分00秒071)
「今年初めてのテストということで、昨年手術した右腕のうで上がりの状態を確認しながらテストを開始しました。腕の状態は全く問題なく、2台のマシンを使いながら順調にメニューを消化することができました。最終日は2分00秒071というベストタイムをマークすることができました。もうちょっとで1分59秒台だったので、うれしさより悔しい気持ちの方が強かったです。そのあと、20ラップのロングランに挑み、2分1秒台で連続ラップし、その連続ラップの中で0秒台に入れるなど、初めてのテストとしてはまずまずだったと思います。今回のテストでは、2日目に自分のミスで転倒してしまい、チームには申し訳ない気持ちでした。トップから1秒差以内という目標にもちょっと届かなかったことも残念でした。しかし、3日間を通じて、ほぼ予定通りにテストを消化できたことは、とてもよかったと思います。今回のテストは、タイムやアベレージには満足していますが、フィジカル面に課題が残りました。この冬にしっかりトレーニングしてきたのですが、ペースをキープするためには、しっかりトレーニングして体力をつけなければと思います。次は全員が初めて走るタイなので、コース攻略も含め、3日間、しっかり走りたいと思います」

フランコ・モルビデリ (総合20番手、2分00秒526)
「今回のテストは、本当に多くのことを学ぶことができました。いろいろな条件でMotoGPマシンに乗ることができました。2日目には2回転び、多くの時間をロスしました。転倒の原因はブレーキングで、MotoGPマシンに慣れていないためのミスでした。最終日は、2日目の転倒の影響で左手の指に痛みがありましたが、鎮痛剤で走り続けました。2日目は転倒であまり多く周回できませんでしたが、最終日はしっかり周回をこなすことができたし、コンディションはあまりよくありませんでしたが、3日間のベストをマークすることができました。チームとのコミュケーションもよく、そういう意味でも今回は成果はありました。次のタイのテストを楽しみにしています」

トーマス・ルティ (総合25番手、2分01秒126)
「昨年、バレンシアとヘレスのテストを走れなかったので、今回のテストをとても楽しみにしていました。初日はウエットで始まり、午後はドライになりましたが、初めて走る日としてはとても難しいコンディションでした。それでも1周でも多く周回することが目標でした。2日目も午前中は路面が多少濡れている状態でしたが、午後は完全なドライになり多くの周回をこなすことができました。2日目を終えて1番の課題はフロントのフィーリングをつかむことでした。MotoGPマシンに乗るのもミシュランタイヤも初めてなので学ぶことがたくさんあると感じました。この日は、4コーナーでフロントを失って転倒を経験しましたが、ステップバイステップでタイムを上げることができました。最終日は、ユーズドタイヤでタイヤのスライドの感覚をつかむことに集中しましたが、とても気持ちのいいものでした」

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カテゴリー: F1 / MotoGP