メルセデスF1代表ヴォルフ 「ハミルトンとの友情が交渉を悪夢にした」
メルセデスF1代表のトト・ヴォルフは、ルイス・ハミルトンとのF1契約交渉がいかに気まずいものだったかを明かし、親しい友人関係が交渉を長引かせる要因になっていたと語った。

ハミルトンは2013年にメルセデスへ加入し、同チームで6度のワールドチャンピオンを獲得。メルセデスの成功を築いたヴォルフとの間には、強い友情も育まれていった。しかし、その関係性がビジネスの場では複雑さを生んでいたという。

「味方である誰かと交渉するのはいつだって物事を複雑にする」とヴォルフはFormula.huに語った。

「ルイスと私の場合、それが常に問題だった。僕たちは2年半の間、親友で、100%同意していたし、プライベートなこともすべて共有していた」

「それから2カ月にわたる交渉の時期がやってきた。僕たちはそれを嫌っていた。なぜか? その状況では意見が一致しないことがあるからだ。最終的に我々は方針を変え、代理を立てて交渉を任せるようになり、状況は数日で解決した」

ハミルトンは他の多くのドライバーのように代理人を立てず、自ら交渉に臨むことを好んでいたため、ヴォルフは親友である彼と直接契約条件を詰める羽目になっていた。その結果、話し合いは数カ月に及ぶこともしばしばだった。

「だから、すべてのドライバーとの交渉は複雑になるんだ」とヴォルフは続けた。

「一方で良い関係を保ちたい。でも交渉は時に厳しいものになるし、相手が日常的にこうしたことをしている人ではなく、感情的なアスリートであると余計に難しくなる」

ハミルトンは最終的に2023年にマネジメントチームを任命し、「自分ですべてをやるのはとてもストレスだった」と述べている。この変化はヴォルフにとっても安堵の要因となった。

メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ F1 ルイス・ハミルトン

「フェア」な交渉者か?
元メルセデスのドライバーであるニコ・ロズベルグはかつて、ヴォルフは「交渉相手としてひどい」と主張し、緊迫した場面になると姿を消してしまうと語った。しかしヴォルフ自身は、自分は決して冷酷ではないと否定する。

「いや、僕はフェアだと思っている」とヴォルフは言う。

「僕らは常に相手の立場に身を置くべきだと思う。だから僕は相手の側に立ち、もし自分が彼らだったら何を達成したいかを考える。そして自分自身に問うんだ、この状況でフェアとは何か? 正しいことは何か?」

「それを考えてバランスを探そうとする。もちろん双方があれこれ最適化しようとする時もあり、それが物事を複雑にする」

ヴォルフのやり方は、共感的でありながら戦略的でもある。チーム代表として数千万ドル規模の契約をまとめながら、個人的な信頼関係を守るという綱渡りを続けている。

結局、ヴォルフの回顧は普遍的な真理を示している。スピードと精密さが支配する華やかなF1の世界でも、人間関係──友情、信頼、そして時に衝突するエゴ──が契約を成否に導くことがあるということだ。

ヴォルフとハミルトンにとって、それは困難な教訓だったが、最終的には互いの尊敬をさらに深める結果となった。

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カテゴリー: F1 / メルセデスF1 / ルイス・ハミルトン