ロン・デニスの“ジーンズ禁止”伝説 マクラーレンF1が築いた新しい働き方
マクラーレンF1チームが2025年シーズンで圧倒的な強さを誇る裏には、ザク・ブラウンCEOが築いた「健全で柔軟な職場文化」があるとSky F1が報じた。かつてロン・デニス時代には「ジーンズ禁止令」まで存在したとされる厳格な環境から一転、現在のマクラーレンは「チーム全体が楽しんで働ける職場」へと変貌を遂げている。

2025年シーズン、マクラーレンは開幕から12勝を挙げ、7度の1-2フィニッシュでシンガポールGP時点でコンストラクターズタイトルを獲得。オスカー・ピアストリとランド・ノリスがドライバーズ選手権1位・2位を独占し、まさに無敵の強さを見せている。

しかし、成功が新たな課題を生む。ブラウンはSky F1のサイモン・レイズンビーに「最大の挑戦は“バンドを壊さないこと”」と語り、スタッフの流出を防ぐことの重要性を強調した。過去にはメルセデスがレッドブル・パワートレインズに、レッドブルがロブ・マーシャルやエイドリアン・ニューウェイを他チームに失った例もあり、勝利の代償は決して小さくない。

「文化こそ最大の武器」ジェイミー・チャドウィックが指摘
Sky F1ポッドキャストに出演した3度のWシリーズ王者ジェイミー・チャドウィックは、マクラーレンの成功要因として「職場文化とチームの調和」を挙げた。

「勝っていても、職場の雰囲気が悪ければ人は辞めてしまう。モータースポーツはただの仕事じゃなく、ライフスタイル。だからこそ、毎日チームに行きたいと思える文化が必要なの」と語り、ドライバーやスタッフの人間関係も含めた“チーム内のハーモニー”を維持することが今後の鍵になると指摘した。

ロン・デニス時代との違い──“ジーンズ事件”が象徴
Sky F1のテッド・クラヴィッツは、ロン・デニスがCEOを務めていた時代のマクラーレン・テクノロジー・センターでは、訪問者がジーンズを履いていたために退場させられた“ジーンズ事件”を振り返った。

「当時はジーンズを履くなんてあり得なかった。だけど今はザクのもとで許されている」と語り、「ブラウンはシリアスなときは真剣に、でも普段はリラックスしていて、チームにもその雰囲気が伝わっている」と続けた。

レイズンビーも「トップが柔軟であることがチーム全体の空気を変える」と同調し、ブラウンのリーダーシップがチームの結束と幸福度を支えていると評価した。

ザク・ブラウン体制が示す“新時代の勝ち方”
マクラーレンの現在の強さは、単なるマシン性能の優位に留まらない。ブラウンとアンドレア・ステラ代表が築いた「心理的安全性のある組織」が、技術革新を継続的に生み出す土壌になっている。

過去のF1では、成功が往々にして“緊張と支配”を伴ってきたが、マクラーレンは“自由と信頼”によって同等以上の成果を上げている。その象徴が、「ジーンズもOK」な職場だ。小さなルールの緩和が、創造性や忠誠心を高め、チーム全体の士気を押し上げている。

この「柔軟で勝てる文化」は、2026年の大規模レギュレーション変更を乗り越える上でも、マクラーレンにとって最大の強みとなりそうだ。

Source: Sky Sports F1 Podcast

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カテゴリー: F1 / マクラーレンF1チーム