ロバート・クビサ 失われたF1の夢をル・マンで取り戻す アロンソ「誇りに思う」

2011年のラリー事故でF1キャリアが突然断たれたクビサは、フェラーリのWECチームの一員として今回の勝利を収めた。当時クビサはF1でフェラーリ加入が決まっており、実現していればアロンソのチームメイトになるはずだった。
「本当に嬉しいよ」とアロンソは語った。「彼とは何度かル・マンがいかに特別なレースかを語り合ったことがあるし、彼にはそれを経験する資格がある。彼は我々のスポーツのレジェンドであり、ル・マン優勝を加えたことで、さらに伝説になった」
「彼が事故で味わった苦しみを知っているからこそ、今日はモータースポーツにとって本当にハッピーな日だ」
アロンソ自身も2018年と2019年にトヨタでル・マンを連覇しており、今回の勝利をSNSで「ブラボー、ロバート」と祝福した。
「本当にうれしい。明日、彼に電話するつもりだ。今日は邪魔したくなかった。きっと今はお祝いの最中だろうけど、すごくうれしいし、彼のことを誇りに思う」
今回のル・マン24時間レースでクビサと共に優勝を果たしたのは、フィル・ハンソンとイェ・イーフェイ。彼らはサテライトチームであるAFコルセの83号車フェラーリ499P LMHを駆り、激戦を制した。特にクビサは最後のスティントを担当し、給水ボトルが故障していたにもかかわらず59周を走り切り、全体の43%の距離を単独でドライブした。
2011年の大事故以降、F1での道が絶たれたクビサにとって、今回のル・マン制覇はまさに報われた瞬間だった。アロンソがかつて「自分が対戦した中で最高のドライバー」と評した男にふさわしい偉業だ。
さらに、F1カナダGPと同日に達成されたことも象徴的だ。クビサは2007年のカナダGPで大クラッシュに見舞われたが、翌2008年には同地でF1初優勝を飾っており、これが彼にとって唯一のF1勝利となっている。
今回のル・マン制覇は、F1時代の最後のチームメイトだったジョージ・ラッセルが同日のカナダGPで優勝したこととも重なった。ラッセルはSNSで「ル・マン優勝おめでとう!本当に嬉しいよ!!」と祝福のメッセージを送っている。

また、フェラーリでの勝利という点も感慨深い。クビサは2012年にスクーデリア・フェラーリと契約を結んでいたと報じられていたが、ラリー事故によってその夢は絶たれたとされる。
F1実況のアレックス・ジャックは、「これはロバート・クビサにとって歴史的瞬間」と称賛。「フェラーリでF1を走る夢は事故で潰え、2021年にはLMP2クラスで最終ラップのリタイアという悲劇も経験した。だが今日、その復活劇がついに完結した」と綴った。
フェラーリF1代表のフレデリック・バスールもクビサの勝利を喜んだ。バスールはF3やフォーミュラ・ルノー時代からクビサと関係があり、近年もアルファロメオでリザーブドライバーとして共に過ごしていた。
「私とロバートの関係はとても近い」とバスールは語る。「彼はモータースポーツ界において“異星人”のような存在だ。今回のような状況でル・マンを制し、チームを牽引する姿は想像を超えている。本当に素晴らしい成果だと思うし、彼がこれまでキャリアに注いできた努力を思えば、今日の結果は心から嬉しい」
なお、アロンソとクビサはともに、今世紀にF1とル・マンの両方で優勝した数少ないドライバーであり、現役F1ドライバーでル・マン優勝経験があるのは、2025年時点でザウバーのニコ・ヒュルケンベルグただ一人である。
カテゴリー: F1 / ロバート・クビサ / フェルナンド・アロンソ / ル・マン24時間レース