ホンダ インディカー・シリーズ
テキサス州の州都オースティンにある高速ロードコース、サーキット・オブ・ジ・アメリカスで初めて開催されたインディカー・レースで、ルーキーのコルトン・ハータ(Harding Steinbrenner Racing)がキャリア初優勝を飾った。

曇り空の下でスタートが切られ、3番手へと一つ順位を上げたハータは、レースを通してそのスピードを維持してトップグループを走り続けた。終盤のフルコースコーション直前に行ったピットストップが功を奏し、トップに躍り出た。

2台のマシンが接触し、1台がガードレールに強くヒットしてストップしたために出されたフルコースコーションは、その時点でトップと2番手を走っていたドライバーたちがまだ最後のピットストップを終えていなかったタイミングで出された。彼らが給油とタイヤ交換を行うためにピットに入ると、すでに作業を終えていたハータが先頭に躍り出た。トップを走っていたウィル・パワー(シボレー)はこのときのピットストップでメカニカルトラブルが発生し、リタイア。2番手、3番手だったアレクサンダー・ロッシ(Andretti Autosport)とスコット・ディクソン(Chip Ganassi Racing)はピットイン後、14番手、15番手まで大きく順位を下げた。

レース再開はゴールまで残り10周。ここでハータは、ルーキーながらプレッシャーなど感じていないかのような落ち着きぶりでダッシュ。1周でジョセフ・ニューガーデン(シボレー)とライアン・ハンターレイ(Andretti Autosport)という2人の元チャンピオンを2秒以上も突き放すと、その後もミスをすることなくリードを一時は4秒にまで広げるベテランのような走りをみせ、歓喜のチェッカーフラッグを受けた。サーキット・オブ・ジ・アメリカスに集まった大勢のファンは、新しいアメリカ人ウイナーの誕生に大歓声を送っていた。

ハータは、インディカーで2勝を挙げたブライアン・ハータの息子。少年時代からレースキャリアを積んできた彼は、18歳でインディカー・シリーズでの初優勝を達成した。これまでの最年少ウイナーは、2008年のセント・ピーターズバーグで19歳3カ月と2日で勝利したグレアム・レイホールだったが、ハータ二世が18歳11カ月と25日で優勝し、新しいインディカー最年少ウイナーとなった。昨シーズンの最終戦ソノマが初レースだったハータは、デビュー3戦目にして早々と初優勝。第2戦終了時点のポイントスタンディングでも2番手につけた。

そして、今回の勝利はHarding Steinbrenner Racingにとってもうれしい初勝利だっら。2017年にHarding Racingとして参戦を開始し、18年が初のフルシーズン出場。19年からはHarding Steinbrenner Racingに体制変更し、Hondaエンジンを使うようになった。18年シーズンにはHondaエンジンで走る5チームすべてが優勝を記録したが、19年はHondaファミリーに加わったばかりの新チームが開幕2戦目にして早くも優勝を飾った。

3位でゴールしたのはハンターレイ。12年のインディカー・チャンピオンは2戦目にして今シーズン初の表彰台に上った。4位グラハム・レイホール(Rahal Letterman Lanigan Racing)、5位セバスチャン・ブルデー(Dale Coyne Racing with Vasser-Sullivan)、6位マルコ・アンドレッティ(Andretti Herta with Marco & Curb-Agajanian)、7位佐藤琢磨(Rahal Letterman Lanigan Racing)、9位アレクサンダー・ロッシ(Andretti Autosport)、10位はジャック・ハーヴェイ(Meyer Shank Racing with Arrow SPM)と、Hondaドライバー8人がトップ10でのフィニッシュを達成した。ロッシはゴールまで10周のリスタート時点では14番手。そこからの驚異的な走りをみせた。5つもポジションアップを果たした彼の走りも、ファンの目を惹きつけるものだった。

佐藤琢磨は予選ではアタックラップが他車の出した赤旗により計測されず、14番グリッドからのスタートを切った。ハードタイヤで走り出すと1回目のピットストップを早めに行い、残り周回はソフトタイヤを連続投入する作戦を採用し、徐々にポジションを上げて行った。3回目のピットストップではエアジャッキの作動が悪く、時間をロスして順位を落としたが、その後に出されたフルコースコーションが有利に働き、ポジションのばん回に成功。ゴールまで10周のリスタート後にもオーバーテイクを成功させ、7位でゴールした。マシントラブルによるリタイアを喫した開幕戦の直後だけに、確実に走り切っての7位フィニッシュを佐藤とチームは喜んでいた。

次戦はアラバマ州バーミンガムでのHondaグランプリ・オブ・アラバマ。サーキット・オブ・ジ・アメリカスと同じ常設ロードコースですが、コースの特徴は大きく異なる。緑の中を縫う、アップアンドダウンに富むサーキットの中で白熱したバトルが繰り広げられることとなるだろう。

コルトン・ハータ(優勝)
「私たちのチームの作戦がすばらしかったと思います。今日のレースでは、まさか自分たちが勝てるとは思ってもいませんでした。表彰台に上ること、3位でのゴールを目標にしていたんです。実際に、私たちにはそれを実現できるだけのスピードがあると、レースを戦っていて感じました。そして、私たちにとって完ぺきなタイミングでフルコースコーションが出されました。驚きました。最後のリスタートからのバトルで体力を使いきりました。リスタート後の私たちにはスピードがありました。今日はレースの序盤から、私たちは走り始めが早く、周回を重ねてからペースダウンする戦いになっていました。だからリスタートからゴールまでが短いのは私たち向きで、速さを見せることができたのだと思います。最高の1日になりました」

佐藤琢磨(7位)
「昨日のプラクティスと予選でマシンをよくできたので、そこから細かい部分にさらに変更を加えて決勝に臨みました。空力をトリムしたセッティングが正解ではなく、今回の自分たちはロードコースでマシンの力を最大限引き出すことができていたとは言えません。チームメートのグレアム・レイホールは4位ですし、私たちはジャッキのトラブルがありましたが、フルコースコーションを味方につけて7位でゴールすることができました。チーム全体にとって、サーキット・オブ・ジ・アメリカスでのレースはよいものになったと感じています。今回のデータと経験は次のシリーズ第3戦が行われるバーバー・モータースポーツ・パークでも活かすことが可能なはずですから、よりよい戦いぶりを見せられるようにしたいと思います」

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カテゴリー: F1 / インディカー