ホンダF1エンジン改善は数カ月遅れ 信頼性問題で性能向上は後回し

The Raceによると、ホンダの開発は現在も初期トラブル対応が中心であり、本格的な性能向上は夏以降になる可能性が高いとされている。
アストンマーティンとホンダのワークス体制は、2026年シーズン序盤の3戦で1台が1度完走しただけと厳しい立ち上がりとなっている。ホンダのホームレースとなった日本GPでも、アストンマーティンは予選で全10チーム中最下位に沈み、パワーユニットとシャシーの両面で課題を抱えている現状が改めて浮き彫りになった。
エンジンとシャシーの両面で苦戦
ホンダのパワーユニットは出力不足に加え、信頼性の確保にも苦しんでいる。さらに、アストンマーティン側もシャシーに問題を抱えており、新たな提携は現時点で期待や本来のポテンシャルを大きく下回っている。
ホンダの不足分がどれほど大きいかは正確には分かっていない。ただ、内燃エンジンの出力が不足しているだけでなく、バッテリーのエネルギー運用効率も低く、1周の中でどれだけMGU-Kを使い、どれだけ回生できるかにも制約があるとみられている。
鈴鹿の予選では、アストンマーティンはラップ前半の長いストレートでライバル勢より20〜30km/h遅かった。さらに、3〜6コーナーではMGU-Kが使われていなかった可能性があり、極めて低調だったセクター1の一因になった可能性もある。
一方で、ラップ全体を通して多くのコーナーで最低速度が低かったことは、AMR26そのものの限界も示している。アストンマーティン自身も鈴鹿でその点を隠しておらず、車体側の改善余地は明確に存在している。
車体改善よりエンジン改善のほうが時間がかかる
マシン側の改善も大仕事ではあるが、軽量化プログラムやシーズン中の広範な開発が計画されている。これに対し、ホンダがエンジン性能だけでどこまで改善できるかは見通しづらく、その工程はより長く厳しいものになる可能性が高い。
ホンダが2026年シーズン序盤の危機の中で最優先しているのは、まず信頼性を正常化することだ。性能改善に向けた作業も並行して進められているが、たとえ研究開発がかなり進んでいたとしても、アップグレード版のエンジンを実際に用意するまでには数カ月を要する見込みだ。
その前提として、まずFIAがホンダの遅れの度合いを確定し、どの種のアップグレードが認められるかを判断する必要がある。
ADUOが初の性能改善時期を左右
2026年の新レギュレーションでは、開発・アップグレード機会を管理するADUO制度が導入されている。これは各メーカーのパフォーマンスを監視し、劣勢にあるメーカーに対して、どれだけ遅れているかに応じた開発機会を与える仕組みだ。
ホンダは最大限の救済対象となる可能性が高く、その場合は今季2回の性能アップグレードが認められる。また、それを実施するためにコストキャップ上の支出枠やダイノ使用制限も緩和される。
ただし、最初のADUO期間がいつ設定されるかは、今週行われる関係者会議で決まる見通しだ。バーレーンGPとサウジアラビアGPの中止により、24戦前提で定められていた当初のタイムラインに影響が出ているためだ。
それでも、最初の判定は5月まで行われない見通しとなっている。しかも、そこから新しいエンジン仕様を設計し、試験し、妥当性を確認し、生産するにはさらに数カ月を要する。
ホンダが暫定的なアップグレードを投入する計画でもない限り、夏休み前に大きな性能改善が実現する可能性は低い。仮に何かを投入できたとしても、その効果は限定的になるとみられている。
当面はエネルギーマネジメント改善が中心
より早い段階で見込める進展は、エネルギーマネジメントの最適化と信頼性向上に関する部分に限られる可能性が高い。
ホンダのF1トラックサイド・リードエンジニアである折原真太郎は次のように説明した。
「バッテリーの信頼性改善に取り組んでいますが、一方で、さくらの施設でもエンジン性能の改善に懸命に取り組んでいます」
「さらに、エネルギーマネジメントの最適化にも取り組んでいます。いまはそれを並行して進めています」
「そして、メカニカルな意味でエンジン性能を開発するのは短期的な仕事ではないので、バックグラウンドでエンジン性能改善に向けて懸命に取り組み続けています」
「ただ、鈴鹿ではレース距離を通じて多くのデータを集めることができました。それによって、ドライバビリティやエネルギーマネジメントを改善するためのデータが得られました」
「それは、マイアミまでの今後4週間に向けて良いデータになります」

アロンソが経験した“マクラーレン・ホンダ時代”を下回る現状
フェルナンド・アロンソが経験してきた過去の苦境と比較しても、2026年の状況はより厳しいものとなっている。
The Raceのデータによれば、マクラーレン・ホンダ時代の開幕3戦と比べても、現在のアストンマーティン・ホンダは複数の指標で下回っている。
まず予選での平均タイム差(Average Q deficit)は、2015年が2.94%、2016年が2.42%、2017年が2.75%だったのに対し、2026年は4.05%と大きく悪化している。
平均グリッド位置も、2015年の16.67、2016年の12.00、2017年の13.33に対して、2026年は18.67とさらに後退している。
さらに完走率(Laps completed)も、2015年の77.65%、2016年の72.94%、2017年の80.59%に対し、2026年は62.87%にとどまっている。
これらの数値が示しているのは、単なるパフォーマンス不足ではなく、信頼性と運用の両面で深刻な問題を抱えているという現実だ。
かつて“GP2エンジン”と揶揄された時代と比べても、2026年はより複合的で、かつ構造的な難しさを抱えた状況にある。
マイアミでの信頼性対策が最初の節目か
フェルナンド・アロンソは、アストンマーティンの競争力が夏休み前に大きく変わることはないと見ており、このパッケージが最後尾集団から抜け出すまでには数カ月かかる可能性がある。
信頼性が著しく低いことは、シャシーとエンジンの両方の性能、そして開発可能性に直接影響している。そのため、まずこの明白な弱点への対応を優先せざるを得なかった。
その結果、本来なら性能アップグレードに回せたはずの時間と資金も信頼性対策に割かれている。ここまでの対策は応急処置にとどまっているが、4月はレース間隔が空くため、ホンダが次戦マイアミに向けて、まず信頼性目的の仕様変更を持ち込む現実的な可能性があるようだ。
性能アップグレードはADUOの枠外では認められないが、信頼性改善を目的とした変更はFIAの許可を得れば別枠で実施できる。
ただし、バーレーンテスト後の短期間では、信頼性確保のための検証に長い準備期間を要する本格的な変更を間に合わせることはできなかった。マイアミ投入も簡単ではないが、変更の規模次第であり、ホンダ自身もそこを目標のひとつとして示唆している。
保守的な運用が続く中で性能解放も課題
こうした変更が実現すれば、結果的にわずかな性能向上にもつながる可能性がある。現状のホンダは、明らかに保守的な状態で運用しており、回転数も約1000rpm低く抑えているとされるからだ。
折原真太郎は次のようにも語った。
「我々はまだ、走行を完了するために少しマージンを取っていますが、そこまで大きくはありません」
「我々が集中しなければならないのは、エネルギーマネジメントを改善することです」
「我々のエンジンの運転条件は限界に近いので、それほど大きなマージンは取れません」
「我々はデータ設定の改善、そしてダイノ上でエンジン性能そのものを改善することに集中しています」
「そこが我々の主な焦点です」
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