ホンダF1:2020年 第10戦 F1ロシアGP プレビュー
F1ロシアGPの開催されるソチ・オートドロームは、ヘルマン・ティルケによる設計のもと、2014年の冬季五輪でメイン会場となったエリアを利用し、市街地と常設サーキットを組み合わせたコース。黒海沿岸に位置し、背後にはコーカサス山脈がそびえるロシア有数のリゾート地としても人気を誇る。

市街地コースらしく、セクター2では中速の90度コーナーが連続し、最終セクターは低速コーナーで構成されている。

一方、最終コーナーからターン1まではカレンダー中でも最長の全開区間の1つで、エキサイティングなバトルも期待される。さらに、高速でロングコーナーのターン3では、スロットル全開となり、加速し続けながらクリアしなければならない。

オーバーテイクが難しいサーキットであるため、予選が重要となる。ここ数戦ではホンダF1のパワーユニット勢の中でも明暗が分かれる展開となっているが、今週末は全車のポイント獲得を目指して取り組んでいる。

田辺豊治(ホンダF1 テクニカルディレクター)
「7月の開幕以降、異例となる3回におよぶ3連戦を終え、ここから12月の最終戦に向けて後半戦を戦っていきます。ムジェロでのレースを終えてからは、フェルスタッペン選手のPUに発生したトラブルの原因究明と対策を重点的に推進してきました。いろいろなことが複雑に絡んでトラブルが発生したことが分かりました。この先、再発しないように1つ1つに対策を打ってレースに臨みます。ロシアGPの舞台となるソチ・オートドロームは、ここまで3戦続いたスパ、モンツァ、ムジェロのような伝統的な高速サーキットとは大きく異なるタイプのトラックです。コースの一部に公道を使用してレイアウトされており、2本の長いストレートと90度コーナーが多く配されているのが特徴です。パワーユニット(PU)のパフォーマンスを最大限に引き出し、PU起因でリタイアすること無きよう十分な準備をして臨みたいと思います。アストンマーティン・レッドブル・レーシング、スクーデリア・アルファタウリの両チームメンバーと4人のドライバーと一緒に最善を尽くします。クビアト選手にとっては母国グランプリになりますので、いいレースにしてもらいたいとも思っています」

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
「シーズン後半戦に入り、今季初めて連戦ではないロシアGPです。チームのみんなにとってはオフが取れていいことだと思いますが、ムジェロでは1ラップもできずに終わっただけに、僕はレースに戻るのを楽しみにしています。表彰台登壇以上の結果が出せるチャンスだと思っていたので、あのような形でレースウイークを終えるのはいいことではありませんが、過ぎたことは仕方がないです。もちろん、チームとは起こった問題について話し合いましたし、僕らは全員が同じ方向を向いて1つ1つのレースで可能な限り上を目指して戦っています。ムジェロでは、マシンがいい方向に進化した部分もあると思いますし、アレックス(アルボン)の初表彰台が見られたこともよかったです。優勝、表彰台を目指して戦い続けます。ソチは簡単にはいかないはずで、長いストレートもあって僕らはこれまであまり相性がよくないですし、後方との差が縮まるはずです。コースは独特で、ほとんどが90度コーナーというのもあまり見ない形です。セットアップを正しくつかむことが必要で、特にストレート手前の低速コーナーでは脱出速度を高めないといけません。また、オーバーテイクのしやすいコースでもないのですが、今週末はあまりオーバーテイクをせずに済むようにして、いい結果を出せればと思います」

アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)
「3連戦が続いたのは、かなり過酷でした(笑)。オフの期間はあっという間に過ぎてしまいましたが、みんなも同じ感覚だったと思います。前回の3連戦は特に長く感じたので、家で過ごす時間を取れてよかったです。とはいえ、1レースでも3連戦でも、常に気合を入れて準備しているという点ではあまり違いはありませんが、今回のように通常のレースウイークになるのはいいことです。ムジェロでのF1初表彰台を振り返りましたが、心からうれしくて、サポートしてくれたチームには本当に感謝しています。彼らは成果に値するだけの仕事をしてくれましたし、僕自身もそれにふさわしい走りができたと思います。いい1日になりましたし、表彰台の下でみんなが喜んでいるのを見るのはすばらしい気分で、その仕事に報いることができてよかったです。また、表彰台にタイ国旗が飾れたこと、そして僕が初めてそれを果たせたことには、とても特別な思いがあります。タイで僕を応援してくれている皆さんのためにも、国旗をたなびかせられたことを誇りに思います。本当にすばらしい1日だったので、これを続けていきたいです。少し冷静になって、さらなるトロフィーを獲得していきたいですね!ソチは、僕らのチームにとっては、最高のサーキットとは言えませんが、今季ここまでのレースのように、コースに出るまで何が起きるか分かりません。どうなるか見ていきたいですが、希望を持ってソチへ向かおうと思います。かなり独特なコースで、ドライビング面だけを見ればほかのコースのほうが好きです。似たようなコーナーが多いので、1つでうまくいけばコースの大半で強さを発揮できますが、最終セクターはかなりテクニカルなのにグリップが低いので、特にプッシュしているラップではホイールスピンに気を付ける必要があります。ソチはほかのマシンを追いかけ回せるので、レースをするにはいいコースだと思います。ファンの皆さんにいい戦いを見せられるようにしたいです。ムジェロでは、メルセデスとの予選の差は縮まったように見えました。さまざまな面で近づいてきていると、希望が持てる結果です。リザルト上でも、ムジェロは僕らにとってかなりいいサーキットになりましたが、実際は1戦ごとにマシンが着実に進歩しています。おそらくモンツァは例外ですが、今後はダウンフォースの増えるサーキットになるので、僕らの競争力はさらに増すと思います。メルセデスがベンチマークになっていますが、そこに追いつくことが目標です。僕がロシア文化に詳しいと言われているみたいです(笑) ロシア語は少し話せますが、あまり得意ではありません。単語を少し知っているくらいなので、クイズは出さないでくださいね! カート時代に6人のチームメートがロシア人で、いまでも友達付き合いをしている仲間がいます。彼らからいくつか変わった単語を教わっただけです」

ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
「モンツァでの勝利の後、短い期間に全く違うことが起こるということが分かったのがムジェロのレースでした。プラクティスセッションは今シーズンで1番よかったですし、金曜も土曜も速さがあり土曜の午前のプラクティスでも5番手タイムでした。ただ、その後の予選で問題を抱え、ポジションを上げられると思って迎えたレースも、最初のコーナーで終わってしまいました。レースを続けられれば何かを起こすチャンスがあると思っていただけに残念ですが、それもまたレースです。今はソチでのレースに向けた準備をしていますが、ここまでのシーズンがかなり過密だったので、レースがない週末を1つ挟めたことはよかったと思います。エンジニアやメカニックにとっても休息を取ることができる、大切な時間になりました。少し充電をして、ソチでのレースにベストな状態で臨むことができると思います。このサーキットはここ数戦とは全く異なる特性を持っていて、モンツァやムジェロと比べると低速のトラックになります。4速か5速で走行する90度コーナーが続いた後の最終セクターはさらに低速になっていて、全体的にストリートサーキットに似ています。おもしろいレイアウトですが、ここでどれだけの競争力があるかを今の時点で判断することは難しいです。今回のレースではグランドスタンドへの観客の入場が許されているため、いつもの雰囲気に少しだけ戻ることをうれしく思っています。マシンにどれだけの速さがあるかは走ってみなければ分かりませんが、正しい方向には向かっていると感じています。マシンからパフォーマンスを引き出すために、ここまでいろいろなことを学んできましたし、コンスタントに改善し、安定していいパフォーマンスを見せられています。スパとモンツァではいいパフォーマンスで、ムジェロでも予選の前までは悪くなかったので、ここからもこの上向きの流れを続けていきたいです。中団では0.3秒の差が大きな違いになるので、前にいるマシンといい勝負をするためにはすべてを正しく行う必要があります。モンツァからすでに数週間が経過してしまったのですが、3連戦の間は本当に時間がなかったので、少しだけこのレースがない間に勝利の余韻を味わいました。みんなの努力が結果につながったすばらしい瞬間でしたし、レースチームだけでなく、ファクトリーにいるメンバーにも新たな力を与えてくれたと思います。今回もこれまで見せてきたいいパフォーマンスを維持できるようにトライをしていきます」

ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)
「ムジェロのあとに少し休息を取れたことはよかったです。簡単なレースではありませんでしたが、多くのことや赤旗中断もあった中でトラブルなくレースをまとめられました。あのような状況を切り抜けられれば好結果が得られることが多いので、とにかく集中し続け、クリーンにレースを進めることを心がけました。僕らはチームでかなりうまくやれたと思いますし、その結果多くのポイントを獲得することができました。グラベルのあるムジェロのコースは楽しくて、本来レースがあるべき姿だったと思います。わずかなミスでグラベルにつかまってしまう状況が、高速コーナーでの走りを一層エキサイティングなものにしていました。こういったコースなら、トラックリミットについて議論する必要もありません。ここ数戦、マシンは進化を続け、競争力を増しているように感じています。中団の戦いは非常に僅差ですが、レースで波乱が起きなければ、僕らの実力的にはマクラーレン、レーシングポイント、ルノーの後ろだと思います。ただし、その差は非常に小さいもので、近い将来にはそこを詰めることを目指していますし、僕らは正しい方向へ進んでいると信じています。いよいよ、ホームレースです。母国の人々に会えて、多くの声援を送ってもらえるのはとてもうれしいです。ソチでのレースではいつも特別な思いで臨むので、もちろん今週末もワクワクした気分で迎えます。ムジェロではファンをサーキットへ招くことができたので、ソチではさらに多くの人が来てくれればと思いますし、そうなればとてもクールですね。全員の安全を守ることが重要なのは当然ですが、それを確実にするために毎レースでチェックや検査が行われています。だから、観客の皆さんには心行くまでレースを楽しんでほしいです。また、ターン3のグランドスタンドは、僕の名前がつけられているので、たくさんのファンに詰めかけてもらいたいです。このコーナーはとても長くて、長い時間ステアリングを切り続けなければなりませんが、予選でドライなら全開で抜けられます。中速コーナーが中心のサーキットですが、最終セクターには低速区間もあり、ダウンフォースのバランスを探らなければなりません。正しいバランスが見つかればハッピーに過ごせます。タイヤのデグラデーションが小さいので1ストップのレースかと思われるかもしれませんが、かなり柔らかいコンパウンドで走るので、注意が必要です。また忙しい金曜になりますが、そこですべてを理解できるように取り組んでいきます」

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / ホンダF1 / F1ロシアGP