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2018年6月19日にホンダF1がレッドブルへのPU供給を発表してから1年が経ちました。これまでの歩みを、ホンダF1のマネージングディレクターを務める山本雅史が振り返った。

2018年6月19日、ホンダF1の歴史に新たな1ページが追加された。トロロッソを新たなパートナーとして迎えた新シーズンが順調に進み、2019年からはアストンマーティン・レッドブル・レーシングへもパワーユニット(PU)を供給することを正式に発表したのが、この6月19日だった。

合意に至るまでの経緯を語るには、トロロッソとの関係がスタートした2017年9月まで遡らなければならない。ほどなくして、新設されたテクニカルディレクターに田辺豊治が就任し、チームの再構築を行ったのも、山本雅史 ホンダF1マネージングディレクターが将来的な2チーム供給の可能性を見据えてのことだった。

「新体制のトップとして田辺さんを迎えて新たなスタートを切ったとき、我々の目標はまず一歩前進することでした。マクラーレン時代の経験もあり、トロロッソとはとにかくいいコミュニケーションを取ることを目指したんです。そのときには、将来的なレッドブルとの契約の可能性も見据えていました」と山本雅史は振り返る。

「ヘルムート・マルコ博士とは、サーキット外でよく話すようになっていたんです。トロロッソとの合意が発表されたあとからですが、空港で話したり、夕食をともにしたりして、お互いについてさまざまな内容を話していました」

トロロッソへの供給が発表されたのは17年のシーズン終盤だったので、開幕までのタイトなスケジュールの中で、開発になるべく多くの時間を割くことが重要だった。山本雅史はその先に訪れる、ホンダ PUの性能評価のタイミングを認識していた。

「2017年のシンガポールGPというタイミングで決まったために開発の開始は遅いタイミングとなったので、今年とは違い、昨年のトロロッソはホンダエンジンに合わせたシャシーを開発することができませんでした」

「こうした事情もあって、ホンダとレッドブルの間では、2018年のカナダGPでPUの性能評価を行おうということになっていました。ということで、最初から締切が決まっていたんです」

18年のシーズン序盤、ピエール・ガスリーが第2戦バーレーンGPで4位、第6戦モナコGPで7位となるなど好結果を残し、レッドブルのホンダファミリー入りが実現することになった。

「今シーズン開始時は、トロロッソと迎える2シーズン目が本当に楽しみでしたし、レッドブルと組むことになって彼らのシャシーと我々のPUがどんな成果を残せるのかも楽しみでした。2019年のレッドブルとトロロッソの2チーム体制に向けた開発は、昨年の正式発表のあと、すぐに開始しました」

「トロロッソのみに供給していた際にはチームと一緒に開発を進めていましたが、レッドブルが加わることになったことで、やり方を変えました。レッドブル、トロロッソはそれぞれ独立したチームですが、彼らにはレッドブルテクノロジーという技術部門を司る会社があるので、彼らと開発に関する話を進めるかたちになったんです」

「ホンダとしてはレッドブルとトロロッソのどちらか向けにPUを開発しているわけではないので、一つの仕様のPUを作り、それをレッドブルテクノロジーがチーム間のバランスを取るようになっています」

トロロッソとの1年目は、ハンガリーGPでもトップ6入りするなどの結果を残しつつ、ホンダにとって15年のF1復帰以来初めてとなる2チーム体制に向けて多くの学習とチャレンジを行う期間でもあった。

「田辺さんは4台のマシンを問題なく安定して走らせるための要ですから、とても重要な役割を担っており、ここまで非常にうまくやってくれています」

「レッドブルとの連携が決まってから、田辺さんの下にそれぞれのチームを担当するチーフエンジニアを置こうと考えました。トロロッソに本橋さん、レッドブルはデビッド・ジョージさんが務めてくれています。この体制はとてもうまくいっていると思っていて、満足しています」

体制強化を行ったことで、プレシーズンから期待は高まったが、それはレッドブルとホンダに向けての期待だけではなかった。

「正直に言って、本当に楽しみで仕方なかったです。レッドブルは豊富なリソースを持ったとてもレベルの高いチームですので、非常にわくわくしていましたし、トロロッソとは2年目でホンダ PU向けに開発したマシンで初めて戦うことになるわけですから、どんなシーズンになるのかも楽しみにしていました」

「今シーズンについては、多くのメディアに対してなるべく早く表彰台に立ちたいですし、モナコまでには勝ちたいと話していました」

「開幕戦のオーストラリアでは、2008年以来11年ぶりの表彰台となり、本当にうれしかったですね。ホンダのメンバーは、ここからさらに前に進めるという自信を深めたと思います」

その後、スペインGPで再び表彰台、モナコではタイムペナルティーを科されたものの終始2番手を走行するなど、残す目標は頂点のみ。しかし、山本雅史は短期間でそこに到達するのは大きなチャレンジであることも理解している。

「もちろん、我々は勝つためにレースをしています。ただ、正直なところ、メルセデスはすべての領域で進化しています。我々も向上していますが、彼らも同じく向上してるので、勝利を手にするのは本当にたいへんだと思っています」

「でも、ポジティブな面に目を向ければ、レッドブルとの1年目のシーズンでとても安定した成績を残せているともいえます。もちろん、マックス(フェルスタッペン)のドライビングがすごいこともありますが、初年度でコンスタントに結果を残せているわけです。これはいいことだと捉えていますし、このまま継続していけば、今季どこかで勝てるチャンスはあるのではと思っています」

レッドブルへの供給を発表してから1年の節目を迎えた今週末も、新たなスペックのPUを投入するなど、成功に向けた、たゆまぬ努力が続いている。

「トータルではここまで順調だと思っています。特にコミュニケーションの面ではうまくやれていますし、PUの開発についてはレッドブルとホンダで決めたプランに沿って進められています。レッドブルからパワーはどれだけでも欲しいといつも言われていますけどね(笑)」

残りのシーズンで勝利が訪れるか確実ではないが、すべてが適切に機能しており、1年前に予想していた通りの進歩を果たしている。これからどんな成果が見られるのか、期待は高まっている。

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カテゴリー: F1 / ホンダF1 / レッドブル・レーシング