トロロッソ・ホンダ F1特集 | 苦戦の要因は“ピーキーなマシン特性”
ホンダF1の副テクニカルディレクターを務める本橋正充が、トロロッソ・ホンダのF1シンガポールGPの週末を振り返り、苦戦を強いられた要因のひとつとしてコンディションの変化に対する“ピーキーなマシン”の対応を挙げた。
15戦目を迎えたシリーズは、ヨーロッパを離れアジア、シンガポールにその舞台を移した。シンガポールGPは市街地コース、ナイトレース、そして特有の暑さと、これまでと趣が大きく異なる。特に、市街地コースならでのタイトなコースと、シリーズ最多となる23のコーナーが大きな特徴だ。
「シンガポールのコース自体はストリートサーキットなので、スパやモンツァのようにパワーユニットの負荷が高いというわけではありません」と本橋正充は Honda Racing F1 の公式サイトでコメント。
「ドライバーや車体的にはセッティングの難しいところはありますが、パワーユニット的にはそれほど難しくはありません。今回のパワーユニットはこれまでと同じもので、通常通りドライバビリティーやエネルギーマネジメントの調整を行っています」
「ドライバビリティーは、今まで通りホンダとして重視してきていた部分なので、コーナーの数も多いですし、そこは今まで以上に気を使っています。一例ですが、踏み始めのトルクをスムーズにつなげてあげないと、車体のコントロールが難しくなってくるので、こういうコースですからそれが命取りになることもあります。場合によってはクラッシュまでつながる可能性がある部分なので、そこはきちんとドライバーの要求通り、トルクを出してあげるということに気を使っています」
「エネルギーマネジメント的には、長いストレートはなく短いのが3本ですから、エネルギーの配分も難しくはないです。特徴的と言えば、グリップがもともと低いのでドライバビリティーは重要なのですが、レースのウイークエンドを通して、路面の改善とともにグリップレベル向上の伸びしろがものすごくあって、金曜日はアクセルペダルを踏めていなかったところが、土日にかけて踏めていけるようになるとか、その変化には気を使っています。コーナーがほぼ直角に近いので、必ず1回スロットルをオフするんですよ。そういう観点では、ずっとパーシャル(一定の速度を保つ程度のスロットル開度)で走られるよりは、きちんと加速区間、減速区間に分けられるので、ドライバビリティーもやり易い部分があります」
「ストリートコース全般に言えますが、はじめは清掃などしてもダスティな路面なんですが、走るたびにラバーが路面に乗ることによって、タイヤのグリップ力が大きく向上します。それは予選のセッション中でも変わってくるので、マシンを出すタイミングなども重要になってきます。とはいえパーシャルだったところが全開で行けるというほどではなく、1回スロットルオフにしてからの踏み込みのタイミングが若干早くなるという程度なので、それほど難しいわけではありません」
「あと、やはりこの暑さはパワーユニットに影響があります。吸気温が高いので、インタークーラーで冷やしたあとの温度はコントロールできるのですが、もともと吸ってくる空気の酸素量や湿度の影響があるので、どうしてもターボの仕事量が増えます。それを考慮したエネルギーマネジメントや、暑いとどうしてもICEのパワー自体もノッキングなどを気にしなければならないので、暑さにどう対応してパワーを出しきるかということを、週末を通してやっています」
金曜日のプラクティス、そして予選と、トロロッソ・ホンダはなかなか速さを得られず、苦戦が続いた。ピエール・ガスリーがQ1を突破したものの15番手、ブレンドン・ハートレーが17番手という予選は、これまでシンガポールを得意としていたトロロッソにとっては予想外の結果だった。
この結果について本橋正充は「プラクティス1から比べると、だいぶマシンが仕上がってきてはいるのですが、予選になって急に安定しなくなったりと一貫性がなく、やはりマシンのピーキーさと路面変化というところで、まだマッチしていないのかなという感じです」と述べた。
「Q2でタイムが伸びなかったのは、路面変化に追従しきれなかったのと、センシビリティーが高いピーキーな車なので、風の影響で結構バランスが変わってきてしまったようです」
そして決勝に向けて本橋正充は「うちのマシンはいろいろなサーキット全般に言えることですが、タイヤのマネージメント、ドライバーのテクニックを含めて結構タイヤを持たせることができるので、そういう意味ではまだあきらめてはいません。いろいろな戦略が立てられると思っています。今もチームで戦略を考えていますが、状況に応じていろいろなオプションは持てるかなと思います。なかなか抜けないサーキットではありますが、そういう観点からもポイントは狙えると思っています」と意気込みを見せていた。
決勝レース、トロロッソ・ホンダの2台は、ハイパーソフトタイヤでのスタートを選択した。レース序盤にポジションを上げ、なるべくタイヤを持たせるというこの作戦は、Q3に進んだ上位以外はほとんどがウルトラソフトタイヤでスタートする中、ある意味、賭けだった。しかし、スタート直後のアクシデントとセーフティカーの導入、そして予想以上にハイパーソフトタイヤの消耗が早かったことで、作戦は成功しなかった。
ピエール・ガスリーが13位、ブレンドン・ハートレーが17位という結果は、2台完走を果たしたとは言え、トロロッソ・ホンダにとって残念な結果にほかならない。
トロロッソのチーム代表フランツ・トストが「今後のレースのためにどう改善していくのか分析する必要がある」と言う通り、原因の究明を進め、速さを取り戻すことが急務となっている。
カテゴリー: F1 / ホンダF1 / トロロッソ
15戦目を迎えたシリーズは、ヨーロッパを離れアジア、シンガポールにその舞台を移した。シンガポールGPは市街地コース、ナイトレース、そして特有の暑さと、これまでと趣が大きく異なる。特に、市街地コースならでのタイトなコースと、シリーズ最多となる23のコーナーが大きな特徴だ。
「シンガポールのコース自体はストリートサーキットなので、スパやモンツァのようにパワーユニットの負荷が高いというわけではありません」と本橋正充は Honda Racing F1 の公式サイトでコメント。
「ドライバーや車体的にはセッティングの難しいところはありますが、パワーユニット的にはそれほど難しくはありません。今回のパワーユニットはこれまでと同じもので、通常通りドライバビリティーやエネルギーマネジメントの調整を行っています」
「ドライバビリティーは、今まで通りホンダとして重視してきていた部分なので、コーナーの数も多いですし、そこは今まで以上に気を使っています。一例ですが、踏み始めのトルクをスムーズにつなげてあげないと、車体のコントロールが難しくなってくるので、こういうコースですからそれが命取りになることもあります。場合によってはクラッシュまでつながる可能性がある部分なので、そこはきちんとドライバーの要求通り、トルクを出してあげるということに気を使っています」
「エネルギーマネジメント的には、長いストレートはなく短いのが3本ですから、エネルギーの配分も難しくはないです。特徴的と言えば、グリップがもともと低いのでドライバビリティーは重要なのですが、レースのウイークエンドを通して、路面の改善とともにグリップレベル向上の伸びしろがものすごくあって、金曜日はアクセルペダルを踏めていなかったところが、土日にかけて踏めていけるようになるとか、その変化には気を使っています。コーナーがほぼ直角に近いので、必ず1回スロットルをオフするんですよ。そういう観点では、ずっとパーシャル(一定の速度を保つ程度のスロットル開度)で走られるよりは、きちんと加速区間、減速区間に分けられるので、ドライバビリティーもやり易い部分があります」
「ストリートコース全般に言えますが、はじめは清掃などしてもダスティな路面なんですが、走るたびにラバーが路面に乗ることによって、タイヤのグリップ力が大きく向上します。それは予選のセッション中でも変わってくるので、マシンを出すタイミングなども重要になってきます。とはいえパーシャルだったところが全開で行けるというほどではなく、1回スロットルオフにしてからの踏み込みのタイミングが若干早くなるという程度なので、それほど難しいわけではありません」
「あと、やはりこの暑さはパワーユニットに影響があります。吸気温が高いので、インタークーラーで冷やしたあとの温度はコントロールできるのですが、もともと吸ってくる空気の酸素量や湿度の影響があるので、どうしてもターボの仕事量が増えます。それを考慮したエネルギーマネジメントや、暑いとどうしてもICEのパワー自体もノッキングなどを気にしなければならないので、暑さにどう対応してパワーを出しきるかということを、週末を通してやっています」
金曜日のプラクティス、そして予選と、トロロッソ・ホンダはなかなか速さを得られず、苦戦が続いた。ピエール・ガスリーがQ1を突破したものの15番手、ブレンドン・ハートレーが17番手という予選は、これまでシンガポールを得意としていたトロロッソにとっては予想外の結果だった。
この結果について本橋正充は「プラクティス1から比べると、だいぶマシンが仕上がってきてはいるのですが、予選になって急に安定しなくなったりと一貫性がなく、やはりマシンのピーキーさと路面変化というところで、まだマッチしていないのかなという感じです」と述べた。
「Q2でタイムが伸びなかったのは、路面変化に追従しきれなかったのと、センシビリティーが高いピーキーな車なので、風の影響で結構バランスが変わってきてしまったようです」
そして決勝に向けて本橋正充は「うちのマシンはいろいろなサーキット全般に言えることですが、タイヤのマネージメント、ドライバーのテクニックを含めて結構タイヤを持たせることができるので、そういう意味ではまだあきらめてはいません。いろいろな戦略が立てられると思っています。今もチームで戦略を考えていますが、状況に応じていろいろなオプションは持てるかなと思います。なかなか抜けないサーキットではありますが、そういう観点からもポイントは狙えると思っています」と意気込みを見せていた。
決勝レース、トロロッソ・ホンダの2台は、ハイパーソフトタイヤでのスタートを選択した。レース序盤にポジションを上げ、なるべくタイヤを持たせるというこの作戦は、Q3に進んだ上位以外はほとんどがウルトラソフトタイヤでスタートする中、ある意味、賭けだった。しかし、スタート直後のアクシデントとセーフティカーの導入、そして予想以上にハイパーソフトタイヤの消耗が早かったことで、作戦は成功しなかった。
ピエール・ガスリーが13位、ブレンドン・ハートレーが17位という結果は、2台完走を果たしたとは言え、トロロッソ・ホンダにとって残念な結果にほかならない。
トロロッソのチーム代表フランツ・トストが「今後のレースのためにどう改善していくのか分析する必要がある」と言う通り、原因の究明を進め、速さを取り戻すことが急務となっている。
カテゴリー: F1 / ホンダF1 / トロロッソ