マクラーレンとレッドブルのF1休戦状態崩壊 ハミルトン「非情になれ」

オースティンでの「テープ騒動」後、新チーム代表ローラン・メキースは「愚かな遊びは終わりだ」と語っていた。
「一方では、そうした戦術もF1の歴史の一部だと言える」とメキースは『The Athletic』に語った。「だが同時に、それが行き過ぎたことも認めている。次はそこまでいかないようにする」
しかしメキシコでは、再び“挑発”が報じられた。『Sky Italia』によると、「マクラーレンのピットストップエリアにドクロの絵が描かれていた」という。
「あるレッドブルのメカニックが、各グランプリごとに自チームのピットボックスにその国の象徴を描く習慣がある」と同局は伝えた。「もし今回はマクラーレン側に描いたのだとしたら──いたずらかもしれないが、波紋を呼ぶだろう」
レッドブルはピットレーンで唯一のアップグレードを投入し、心理的優位をさらに楽しんでいる様子だ。
ハミルトンはマクラーレンに対し「怯むな」と警告する。
「本当に非情でなければならない」と彼は語った。「マックスはそういうタイプだ。マクラーレンが同じようにやらなければ、彼がチャンピオンを奪っていく」
「彼らは全力でプッシュしなければならない。あのマシンに乗るマックスのような存在を抑えるためにはね」
マクラーレン内部では緊張が高まっている。ポイントリーダーのオスカー・ピアストリはメキシコでのプラクティスを「まあまあ」と評し、一方でランド・ノリスは落ち着いた様子を見せた。
『Sky Italia』のイヴァン・カペッリは「ノリスはよりリラックスしているが、ピアストリは自分のスピードを出し切れず、決定的なコンマ数秒を失っている」と分析する。
チーム代表アンドレア・ステラは若手ドライバーを擁護した。
「世界チャンピオンだって学習や反省を要する局面があった。バルセロナやハンガリーを思い出してほしい」とステラは語る。「オスカーは非常に速いペースで成長しており、シーズン終盤には間違いなく強力になると期待している」
元F1ドライバーのティモ・グロックは「マクラーレンの2人の間で心理的なバランスが変化している」と見る。
「ランドはF1で7年積み上げた経験を持っている。ザントフォールト以降、彼は“失うものは何もない、勝つしかない”というマインドになった。それが今のアドバンテージだ」とグロックは『Sky Deutschland』で述べた。「彼はそれを精神的に生かしている」
ラルフ・シューマッハも同意する。
「ザントフォールトは転機だった」と彼は言う。「あの週末以降、彼はリラックスすればピアストリより速く走れることに気づいた。そこから自分なりのルーティンを築いたんだ」
ノリス自身も週末前には穏やかな口調で語っていた。
「ほとんどの時間を楽しめている」と彼は言う。「確かにセッションごとにプレッシャーは増しているけど、それでも楽しめているし、これまで以上にリラックスしていると思う。注目も期待も大きいけど、気分はいい。それが好調の理由だね」
シューマッハはこう締めくくった。
「マクラーレンはドライバーたちを自由に走らせるのが得策だ。ルールをどうこう考えるより、彼らが再びリズムを取り戻すことが大事だ」
分析:緊張の舞台裏と「精神戦」再燃の構図
メキース体制下のレッドブルは、メディア戦略も含めた心理的駆け引きにおいて優位を保っている。テープ騒動から続く“象徴的な挑発”は、マクラーレン側の冷静さを試す試練とも言える。
ハミルトンの「非情になれ」という言葉は、フェルスタッペンの勢いを止めるには戦術的にも精神的にも攻め姿勢が必要だという警告だ。彼の指摘は決して誇張ではない。レッドブルのアップグレード投入は、メカニカルな改善とともに“心理的圧力”として機能している。
マクラーレン陣営では、ノリスが精神面で成熟を見せる一方、ピアストリが依然として経験の壁に直面している。だがステラ代表の言葉通り、彼の学習曲線は急であり、チーム全体の士気は依然として高い。
最終局面に向けて、勝敗を分けるのはマシン性能だけではない。「誰が精神的にブレないか」という見えない戦いが、今まさにメキシコで再燃している。
カテゴリー: F1 / ルイス・ハミルトン / レッドブル・レーシング / マクラーレンF1チーム
