ハースF1 参戦200戦を達成 小松礼雄「2016年の初日が昨日のことのよう」

「もう10年経ったなんて信じられません」と語るのは、チームのバルコニーでパドックを見下ろしながらのインタビューに応じた代表の小松礼雄だ。「レース数なんて数えてませんが、200戦というのはすごい旅でした。2016年の初日を昨日のように覚えているので、これは本当に誇るべきことです。私たちにとって大きな節目です」
成功を収めるのが難しいF1の世界において、ハースはある種の例外だ。彼らが参戦する直前には、マルシャ、ロータス、HRTといったチームが短命に終わっていた。しかしハースは違った。
NASCARチームのボスであるジーン・ハースによって設立され、ジャガーの元マネージングディレクター、ギュンター・シュタイナーの指揮のもと、チームはロマン・グロージャンと共にデビュー戦でポイントを獲得。以来、競争激しいF1ミッドフィールドで存在感を発揮してきた。

「ジーンが本当に誇りに思ってくれているといいですね」と小松は語る。「彼は本物のレーサーです。チームが競争力を持つことだけを気にかけていて、10年前、今のようなF1とはまったく違う時代にF1参戦を決意したんです」
「彼は自身の資金、自身の会社を投入してこのチームを作り上げました。そして今でも売却に全く興味を持っていません。彼は100%このチームを次の段階に引き上げることに集中しています。そんなオーナーが背中を押してくれるのは本当にありがたいことです」
「ほとんどすべてを止めなければならなかった…」
F1参戦以来、ハースは規模・予算ともにグリッド最小のチームであり続けている。限られたリソースで成果を上げる一方、2021年の無得点シーズンやパンデミックによる危機など、困難な時期も経験してきた。
「2016年のデビュー戦でポイントを獲得できたことが最初のハイライトですね」と小松は振り返る。「本当にギリギリの状態でオーストラリアに到着しました。マシンの組み上げは大変で、プレシーズンテストもきつかった。そしてオーストラリアに到着したときが、初めて2台のマシンを同時に組み上げる瞬間でした。ものすごいプレッシャーの中で」
「そしてあの素晴らしいポイントを獲得できたのは最高でした。次のレースでは3ストップ戦略でロマンが5位に入りました。オーストリアでのP4、P5、インテルラゴスでのケビン(マグヌッセン)のポールポジションなど、たくさんの瞬間を振り返ると、本当にチーム全員を誇りに思います」

「2019年は本当に厳しい年でした。2016年に良いスタートを切って、2017年、2018年と進歩していたのに、2019年は序盤こそ悪くなかったのに開発が上手くいかず、最後まで解決できなかった」
「チームが後退しているように感じていて、問題をしっかり解決しようとしていないように思えました。その矢先にコロナが来て、状況は最悪に。チームが問題を抱えながらも対処できないまま、ほとんどすべての活動を止めなければならず、完全に足踏み状態に」
「2021年のあとに離れていった仲間が、最近戻ってきて『あの頃からは全然違うね』って言ってくれたんです。あの時期を乗り越えられて、本当に良かったです。ジーンが私たちと一緒にいてくれたことが何よりの支えでした。今のチームの改善は、透明性、オープンさ、コミュニケーション、そして“責任のなすりつけ文化”がないことがすべてです」
「ミッドフィールドの上位に定着したい」
ハースはF1参戦に際し、他チームと異なるモデルを採用した。フェラーリとの強固な提携により、パワーユニットを含む複数のコンポーネントを合法的に共有。ダラーラとも提携し、シャシー製造を委託。さらに昨年にはトヨタとの協力関係も築いた。
「今は成長に向けた良い土台があると思っています」と小松は強調する。
彼がチーム代表に就任してから18カ月が経過した。就任当初、チームは前年12ポイントしか獲得できずコンストラクターズ最下位だった。
オフシーズンの混乱から2024年型マシンの準備に早期着手したことで、チームは態勢を立て直し、2018年以来最多となるポイントを獲得。アルピーヌとの6位争いには惜しくも敗れたものの、7位という好成績を収めた。
今年も好調を維持し、ここまで4戦でポイントを獲得。レーシングブルズにわずか数ポイント差で迫っており、参戦10年目の今、チームは初めて新しいモーターホームを導入し、確実に安定したポジションにいる。では、この先の10年でアメリカチームが目指すものとは何か。

「まずはミッドフィールドの上位に定着したいです」と小松は語る。「そこに安定して食い込めるようになること。それができて初めて、次の段階――トップ3、トップ4にどうやって近づくか――を考えられるようになります」
「今はもう少し短期的な目標に集中すべきだと思います。もちろんビジョンを持つことは大切です。でも、現状維持はしたくありません。野心は大きいですし、いつか表彰台を獲得したいと思っています」
「でももし私がチームに『表彰台を目指そう』と言っても、戦略がなければただの言葉です。意味を持たないんです。長期的な野望を持つことは重要ですが、それと同時に短期・中期的にどうチームを改善していくか、その明確な計画を持つことが必要なんです」
カテゴリー: F1 / ハースF1チーム