フォード「F1参戦継続の条件は電動化」2026年規則への懸念にも言及
フォード・パフォーマンスのグローバルディレクターであるマーク・ラシュブルックは、フォードがF1に関与し続けるためには、将来のF1エンジンに一定レベルの電動化が盛り込まれている必要があると語っている。また彼は、2026年の新レギュレーションに対するパドック内の懸念にも言及している。

2025年シーズンはまだ3分の1を終えたばかりだが、舞台裏ではすでに来年に向けた準備が本格化している。

2026年にはF1のエンジンとシャシー規則が同時に刷新され、すべてのチームとメーカーにとって大きな転換点となるが、とりわけレッドブルにとっては一層の変化を伴う年となる。

クリスチャン・ホーナー率いるチームはホンダ製パワーユニットに依存することができなくなり、レッドブル・パワートレインズとフォードによる独自の体制で挑むことになるためだ。

ラシュブルックは以前、「すべての目標を同時に達成するのは不可能」としながらも、2026年エンジン開発における重要なマイルストーンの多くは順調にクリアできていると語っていた。

2026年レギュレーションに対する懸念は妥当か?
現在パドックで議論されている主要な懸念点は2つある。ひとつは、レギュレーション刷新によってチーム間の性能格差が拡大し、再び長期的な一強状態が生まれるのではないかという点。もうひとつは、アクティブ・エアロや電動出力の増加によってレースの面白さが損なわれるのではないかという点だ。

前者については、近月の議論――とりわけバーレーンでのエンジンサミットを含む――で、遅れを取るメーカーに対して開発上の優遇措置を講じることが協議されてきた。その目的は、2014年以降のメルセデスのような長期支配体制を再び生まないためである。

ラシュブルックはこう語る。

「新しいルール、特にパワーユニットとシャシーの両方が一新される場合、ある種のリスクが存在するのは間違いない。それは『恐れ』というより、スポーツとして認識しておくべきリスクだ。誰がどのレベルでスタートするかによって、バランスが崩れる可能性がある。我々が注視すべきなのは、レギュレーション変更後にスポーツとしてどう対応するかだ」

現在の議論では「開発トークン」制度のような旧来の仕組みではなく、エンジン開発におけるダイノ使用時間の追加や、予算上限の緩和といった具体的な手段が検討されている。しかし、それらの措置が競争の均衡にどの程度早く反映されるかは未知数だ。

「それはやってみないと分からない。ただ、そうした内容が今まさに話し合われていることには満足している。議論の進み具合にも手応えを感じている」

2026年ルールで面白いレースは可能か?
もう一つの懸念は、新ルールによってF1のレースが観客にとって魅力的なものとして維持されるかどうかという点だ。ホーナーは今年4月のバーレーンGPで、電力の使用制限がレースによっては調整されるべきではないかとの考えを示し、過度なリフト・アンド・コースト(惰性走行)を回避すべきだと警鐘を鳴らした。

これについてラシュブルックも同意し、次のように語る。

「今はすべてのメーカーがシミュレーションを行っている段階だが、我々が向き合わなければならない問いは、『そのレースはファンにとってどう映るのか?どんなショーになるのか?』という点だ」

「スポーツとして成功するためには、すべての関係者が協力し、魅力的なレースを提供し続ける必要がある。もちろん、チームとしては勝利が最優先だが、同時に良いレースを届けなければならない」

2026年レギュレーションについて、パドック内で懸念が広がっている現状をどう見ているかと問われると、ラシュブルックは次のように答えた。

「それを“恐れている”とは思っていない。むしろ、我々が見守りながら、必要に応じて適切に対応すべき課題として捉えている」

中国GP週末にFIAが一時的に2026年レギュレーションの撤回可能性に言及したことには、関係者の間で驚きが広がった。

「確かに、あのタイミングでそういった案が持ち出されたのはかなり遅かった。ただ、その後すぐにすべての関係者――FIA、F1、チーム、メーカー――が集まり、2026年の重要性を再確認できたのは良かったと思っている」

フォード F1 レッドブル

未来のF1エンジンに求められるものとは?
将来のF1エンジンについては、2031年以降に向けて「持続可能燃料を使用したV10やV8」の導入も議論されている。しかし、バーレーンでの会合後にFIAが示した方針では、いかなる将来のエンジンにも電動化の要素は必須とされている。これはアウディやホンダにとっても重要な要件であり、フォードにとっても例外ではない。

ラシュブルックは次のように断言する。

「フォード・モーター社として、F1に関わり続けるには、何らかの形で電動化が取り入れられている必要があると考えている」

「2026年のレギュレーションに惹かれた理由もそこにある。内燃機関(ICE)と電動化のバランスこそが重要だ。比率が50対50である必要はないが、我々が知見を提供し、それを市販車の技術に還元できる仕組みであることが理想だ」

「V10やV8にKERSを組み合わせる案もあるが、単純に『V10ならOK』といった議論には賛同できない。細部まで掘り下げて初めて実現可能かどうかが見えてくる」

ターボチャージャーを使うかどうか、電動出力の配分、パッケージング――こうした技術的要素も含め、現時点では結論を出すには時期尚早だという。

「確かに、今はまだ長期的な視点での議論だ。すでに合意できている要素もあれば、見解が分かれる点もある」

フォードのF1参戦は“短期的な遊び”ではない
現在フォードとレッドブルの提携は、2026年に始まる次期レギュレーション周期の期間中をカバーしている。それ以降については、F1の技術的方向性や他メーカーの参戦状況次第だという。

「これはフォードが関与しているすべてのモータースポーツに共通する前提だ」

「スポーツとしての健全性、他メーカーとの関係性、技術レギュレーション、そして技術移転の可能性――いずれも我々にとって重要な要素だ」

とはいえ、ミルトン・キーンズにおける大規模な施設投資を見れば、フォードのF1参戦が短期的な取り組みでないことは明白だ。

「それは我々の明確な意図だ。F1の未来にとって正しい方向性を見出すために、すべての関係者と連携する覚悟がある」

「もちろん、それが完全に我々にとって理想的な形になるとは限らない。だが、それで構わない。他のすべてのメーカーが去ってしまうようなルールでは、スポーツとして成立しない」

「我々はその点を理解しているし、他のメーカーも同様だ。だからこそ、スポーツの健全性のために、トラック外では“パートナー”として協力し合い、トラック上では激しく戦うことが必要なのだ」

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / フォード F1 / レッドブル・レーシング